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【パシフィックネーションズカップ】空中戦に強いチーム、選手、そして次世代のリーダー。育成と結果を求める
小柄も跳躍力があるWTB石田吉平。空中戦に期待がかかる。(撮影/松本かおり)
2025.08.14
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【パシフィックネーションズカップ】空中戦に強いチーム、選手、そして次世代のリーダー。育成と結果を求める

田村一博

 昨年の大会では決勝でフィジー代表に17-41と敗れ、日本代表は2位に終わった。
 8月30日のカナダとの一戦で始まる、2025年のパシフィックネーションズカップでは、頂点に立つことができるだろうか。

 同大会へ向けての日本代表合宿参加メンバー(37名)は8月12日に発表された。同14日にはそのメンバーと合宿、大会へ向けての展望を話すオンライン会見が開かれ、エディー・ジョーンズ ヘッドコーチが報道陣の質問に答えた。

 冒頭に「2位だった昨年の大会より上位で終えたい」と優勝への意欲を示した指揮官は、怪我や個人的な理由により11人が選外となるも、「強いメンバーが組めた。今回のメンバーに手応えを感じているし、誇らしいプレーをしてくれると思っている」と話した。

「大会を通じて、自分たちのラグビーを発展させたい。超速ラグビーのアイデンティティーは確立できつつある。それをこれからさらに発展させ、勝てるようなラグビーを構築してくことがパシフィックネーションズカップのターゲット」とした。

8月15日から、東京(FW)、宮崎(BK)に分かれて合宿を始める。FWはセットプレー、BKはセットピースからのアタックとキックを使った攻撃と、土台となる部分の強化から始める。(撮影/松本かおり)


 ウェールズ代表と戦った際の代表スコッドから、リーチ マイケル、ヴェテイ・トゥポウ、ハラトア・ヴァイレア、植田和磨の名前が消えたことについては、「選ばれていない選手に対しては発言するつもりはない」とするも、リーチに関しては個人的な理由で不参加も、10月下旬からの活動には参加可能になるように願っていますと話した。

 そのほかの個々については、「(ウェールズ戦終了後の)5週間の間にフィットネスレベルを上げた選手が今回のメンバーに入っています。今回は入らなかったメンバーも、選ばれるためには何をすべきか理解していると思う。引き続き彼らとコミュニケーションを取っていく」と言い、ウェールズ戦でのパフォーマンスと、現在のコンディションレベルの両面を総合的に判断して37人を選んだという。

 8月15日から東京(FW)と宮崎(BK)でスタートする合宿を経て、カナダ戦に向かうメンバーの選出、そして、それ以降のアメリカでの戦い(プールステージのアメリカ戦と準決勝、決勝)へ向けてのツアーメンバー確定(30人)と続く。ジョーンズHCは、そこで起こるポジション争いの激化がチーム力を高めると期待する。

 例えばLOには、新しく伊藤鐘平(東芝ブレイブルーパス東京)、山本秀(リコーブラックラムズ)などが加わった。
 その理由を同HCは、「ワーナーへの負担が大き過ぎる。彼はスーパーラグビー(ハリケーンズ)でもプレーするため、パシフィックネーションズカップ後の代表活動に参加できるかどうか分からない。インターナショナルレベルで一貫して力を出せる可能性がある選手を育成していかないといけない」と話した。

抜群のリーダーシップを持つリーチ マイケルの後継者を作っていかなければ。(撮影/松本かおり)


 新しい力の台頭を望んでいる点に関しては、リーダーとなり得る選手についても同様の思いを持っている。
 昨季、そしてウェールズ戦で主将を務めたリーチについて、「ずば抜けたキャプテンシー」と高く評価し、先を見据えて、「次世代のリーダーの育成、そして、日本人のキャプテンを作らないといけないと思っているし、そのプランはある」。
 カナダとのテストマッチ前には発表する。そして、重責になるとは思うが、託すことによって、その人の力量とキャパシティが引き上げられることを期待する。

 勝てるラグビーの構築については、空中戦がカギと考えている。
 先のブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズのオーストラリアツアーを見ても、キックを使っての攻防の結果が勝敗に大きく影響を及ぼしていたと見るジョーンズHCは、日本とウェールズの対戦時も、2戦目の敗戦は、空中戦で後手を踏んだことが敗因の一つと語った。

 そういった背景の中で、「我々は空中戦に長けていないといけないが、リーグワンでは重要視されていないエリア。なので、(代表活動の中で)選手たちを教育し、競れて、勝てるように育てていかないといけない」と今後の方針を示した。

 ただ、進むべき道は簡単ではない。長い時間をかけてキックの判断も、コンテストの強さも備えている相手と勝負するのだ。同じやり方ではなく、「日本独自のやり方を作っていく」という。
「コーチ陣からもいろんなアイデアが出ていて、超速ラグビーを維持しながら、その中にどうキックを混ぜていくか、いろんな案がある」と続けた。

 ウェールズとの第2戦では、キックへの意識が強くなりすぎてアタック力が低下したと振り返る。だから、他国のように個々が状況判断して周囲が呼応するのではなく、まずは「キックをするためのストラクチャーを作らないといけない」。
 戦術、戦略の中にキックを組み込むプランニングを立て、それを遂行していくことから始めることになりそうだ。

体の強さ、思い切りの良さに期待がかかるWTB木田晴斗。(撮影/松本かおり)


 あくまでチーム全体で取り組んでいくことになるが、小柄でも高い身体能力と跳躍力を持つ石田吉平(WTB)には、「アレンゼやコルビのようにプレーできる」と、南アフリカ代表選手の名前を出して期待を寄せる。また、今回招集した長田智希については、「度胸がある」と評価する。
 2024-25シーズンは7試合の出場にとどまるも、今回の合宿に参加する木田晴斗についても、「怪我が重なっていたが、現在はフィットしていると聞いたので呼んだ。大きく、強くて、空中で思い切り競れる度胸もある」とした。

 大学生で合宿に参加するのは竹之下仁吾だけとなった理由として、「他にも呼びたい選手はいたが、参加できなかった。明治大学には感謝します。(この機会に)テストマッチレベルの選手になれるように育成を加速させたい」と話した。

 また、この合宿から、南アフリカ代表やヨーロッパの強豪クラブ、アメリカ代表のHCも務めたことがある(神戸製鋼コベルコスティーラーズ/当時のヘッドコーチも)ギャリー・ゴールド氏が正式にアシスタントコーチに就いた。
 相手に強く、はやい圧力をかけ続けるディフェンスの整備も急ぐ。


◆日本代表合宿(宮崎、東京)参加メンバー
【FW】22名
紙森陽太(PR1/クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/近大/172、105/26/2)
木村星南(PR1/東芝ブレイブルーパス東京/東海大/175、105/26/1)
小林賢太(PR1/東京サントリーサンゴリアス/早大/181、113/26/-)
原田 衛(HO/東芝ブレイブルーパス東京 ※2025年6月4日に同クラブより退団発表/慶大/175、101/26/12)
江良 颯(HO/クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/帝京大/172、106/23/1)
佐藤健次(HO/埼玉パナソニックワイルドナイツ/早大/177、108/22/-)
竹内柊平(PR3/東京サントリーサンゴリアス/九州共立大/183、115/27/15)
為房慶次朗(PR3/クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/明大/180、108/23/11)
木原三四郎(PR3/東京サントリーサンゴリアス/専大/181、108/22/-)
ワーナー・ディアンズ(LO/東芝ブレイブルーパス東京、SRハリケーンズ/流経大柏/201、117/23/23)
エピネリ・ウルイヴァイティ(LO/三菱重工相模原ダイナボアーズ/ラトゥカンダヴレヴスクール/196、122/29/8)
ワイサケ・ララトゥブア(LO・FL/コベルコ神戸スティーラーズ/東海大/193、120/27/2)
伊藤鐘平(LO・FL/東芝ブレイブルーパス東京/京産大/190、115/28/-)
山本 秀(LO/リコーブラックラムズ東京/近大/190、96/26/-)
ジャック・コーネルセン(FL・NO8/埼玉パナソニックワイルドナイツ/クインズランド大/195、110/30/22)
下川甲嗣(FL/東京サントリーサンゴリアス/早大/188、105/26/14)
ベン・ガンター(FL/埼玉パナソニックワイルドナイツ/ブリスベンボーイズカレッジ/195、120/27/11)
サウマキ アマナキ(FL/横浜キヤノンイーグルス/トゥポウカレッジ/189、107/28/5)
奥井章仁(FL/トヨタヴェルブリッツ/帝京大/178、105/23/-)
マキシ ファウルア(NO8/クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/天理大/187、112/28/16)
ファカタヴァ アマト(NO8/リコーブラックラムズ東京/大東大/195、118/30/14)
ティエナン・コストリー(NO8/コベルコ神戸スティーラーズ/IPU環太平洋大/192、102/25/6)

【BK】15名
藤原 忍(SH/クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/天理大/171、76/26/12)
福田健太(SH/東京サントリーサンゴリアス/明大/173、83/28/1)
北村瞬太郎(SH/静岡ブルーレヴズ/立命館大/168、77/23/1)
李 承信(SO/コベルコ神戸スティーラーズ/大阪朝高/176、86/24/20)
中楠一期(SO・FB/リコーブラックラムズ東京/慶大/174、84/25/2)
ディラン・ライリー(CTB/埼玉パナソニックワイルドナイツ/ボンド大/187、102/28/30)
シオサイア・フィフィタ(CTB/トヨタヴェルブリッツ/天理大/187、105/26/16)
中野将伍(CTB/東京サントリーサンゴリアス/早大/186、100/28/9)
池田悠希(CTB/リコーブラックラムズ東京/東海大/187、100/30/-)※8/14離脱発表
長田智希(WTB/埼玉パナソニックワイルドナイツ/早大/179、90/25/17)
マロ・ツイタマ(WTB/静岡ブルーレヴズ/スコッツカレッジ/182、91/29/8)
石田吉平(WTB/横浜キヤノンイーグルス/明大/167、75/25/2)
木田晴斗(WTB/クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/立命館大/176、90/26/-)
サム・グリーン(FB・SO/静岡ブルーレヴズ/ブリスベングラマー高/178、85/30/1)
竹之下仁吾(FB/明大3年/報徳学園/180、86/21/-)

※カッコ内はポジション、所属、出身校、身長・体重、年齢、キャップ数の順
※上記に加え、土永 旭(横浜キヤノンイーグルス)がバックアップメンバーとして参加

※CTB池田悠希の離脱に伴い、8/14追加招集発表
チャーリー・ローレンス(CTB/三菱重工相模原ダイナボアーズ/ハミルトンボーイズ高/171、90/27/-)

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