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ワーナー・ディアンズ[日本代表]◎リーチさん、100キャップを。それを僕が超える。
日本代表初キャップは2021年11月13日にコインブラでおこなわれたポルトガル戦。世界一のロックを目指している。(撮影/松本かおり)

ワーナー・ディアンズ[日本代表]◎リーチさん、100キャップを。それを僕が超える。

田村一博

 ウェールズを撃破した試合(7月5日/24-19)で80分プレーした。ラインアウトで力を見せたその日のパフォーマンスは、2026年シーズンからスーパーラグビーでプレーする23歳の価値をさらに高めるものになった。

 1週間後の第2テストマッチでは22-31と敗れたものの、その日も80分ピッチに立ち続けた。
 ウェールズ代表とのサマーシリーズは1勝1敗。次は8月、9月のパシフィックネーションズカップを戦い、秋の欧州遠征と続く。

 ウェールズ戦勝利について、「(ラインアウトは)前半にプレッシャーをかけ、相手のオプションを減らしたことが後半に生きた」と振り返る。時間の経過とともに相手を後退させたディフェンスについては、「後半は(自分たちも)疲れましたが、前半から意識して前に出続けたことが良かった」とした。

ウェールズ代表との2戦は、両試合ともフル出場。第1テストに勝利し、「終わった直後はいつもとあまり変わらない感覚でしたが、ティア1(ハイパフォーマンスユニオン)に勝った嬉しさがじわじわきました」。(撮影/松本かおり)


 疲労の中で最後まで守り続けられたことについては、「チームが一体になった」と体感を言葉にした。
「前半は(7-19と)点数で負けていましたが、(取られ方は)アンラッキーなものが多かったので、(もっと)いけるという気持ちが強く、メンタル的にも頑張れました」

 11テストマッチで4勝7敗だった2024年のことを、「みんな超速ラグビーに慣れていなくて、アタックを頑張りすぎてミスするとか、ボールを持ち過ぎることも。いいキックも蹴れなかった。そんな状況でした」と振り返る。

「でも今年は、バランスが取れています。超速ラグビーを理解した上で、きつくてタフな、いい練習ができているから自信がついた。若い選手、新しい選手もいますが、去年を経験している選手がいるから伝えやすい。ウェールズに勝って、自分たちがやっていることは間違っていないと感じたのも大きいですね。どんな相手でもジャパンスタイルのラグビーを100パーセントやれば勝てる、と思えています」

「テストマッチはテストマッチ。相手が(自分たちより)上とか下とか考えず、すべて勝つつもりでやっている」と言う。
 そしてインターナショナルの舞台と、そこで勝つための準備が自分を高めていると自覚する。

 流経大柏高校からブレイブルーパスに直接加わり、4シーズンが過ぎた。順調に成長の階段を昇ることができているのは、所属チームでの日々の練習でスキルを伸ばし、基礎を固め、その身につけたものを日本代表での活動を通してインターナショナルレベルで通用するものに高められているからと感じている。

「テストマッチがある環境がいちばん成長できる」と言う。
 日本代表の練習やテストマッチでは、国内シーンを戦う時より、タフなメンタルや高いワークレート、正確なプレーが求められる。
 そんな中で揉まれ、恵まれた体の使い方も分かってきた。

2002年4月11日生まれ、 NZ・ウェリントン出身。201センチ、117キロ。ネイピア・パイレーツジュニア(NZ/4歳)→あびこラグビースクール(中)→流通経済大学付属柏高校→東芝ブレイブルーパス東京(’21〜 ’25)。日本代表キャップ23。(撮影/松本かおり)


 2022年、来日したフランス代表とテストマッチ2連戦を戦って感じたことがあった。
 前年(2021年)の秋、ポルトガル代表戦に途中出場して初キャップを獲得。フランス代表戦には、ウルグアイ代表戦を経て臨んだ。

 23-42と敗れた初戦には途中出場。第2テストマッチには先発し、15-20と競った。
 世界のトップ国と戦って、「スキルは通用してフィジカリティも大きな差はない。あとはメンタリティ」と感じた。
 強度の高い日本代表の練習とテストマッチは、そのすべてを高めてくれる。

 2月に開幕するスーパーラグビーに参加するチームは、前年の秋からトレーニングキャンプをおこなうことが多い。
 しかしディアンズは、「ジャパン(の活動)を全部やってから行こうと思います」という。

 海外でプレーすることは以前から決めていた。その行き先をスーパーラグビーと決め、各チームと話した結果、ハリケーンズに決まった。
 ブレイブルーパスで「3連覇、4連覇したい気持ちもあった」が、自分の将来を考えて決めた。

「向こうに行って(日本とは)違うプレースタイルを経験して成長したいな、と。目標は日本一ではなく、世界一のロック。そうなるためには行かないといけない。(ブレイブルーパスで優勝を重ねた)このタイミングが一番いい、と決めました」

 ウェリントンの出身。「自分に一番合うというか、生まれたところだし、(多くの仲間や知人との)コネクションもある」と話す表情が穏やかだ。

 少年時代は、「スーパーラグビーのいろんなチームが好きでした」。
「特にこのチーム、というのはなかったけど、ウェリントン生まれだし、(育った)ホークスベイも同じ地域なので、ハリケーンズはずっと応援していました」
 憧れていたのはブロディ・レタリック(NZ代表109キャップ/現・コベルコ神戸スティーラーズ)。
「なので、ハリケーンズと試合をしていない時はチーフスを応援しました。両チームの対戦時は、どっちが勝ってもよかった」 

7月12日の第2テストでは後半19分にトライを挙げた。(撮影/松本かおり)


 海外に出るのは、「キャリアの中で成長するため」と明確だ。
 日本代表活動にフルに参加してから新しいチームに向かうのは、「テストマッチでもっと自分を高められたら、スーパーラグビーに行ってもより高いところからスタートできて、より成長できると考えている」からだ。

 10代前半から千葉、府中で暮らしたあとの、自分の生まれた国でのチャレンジ。「日本に来たから19歳で(初キャップを得るなど)いろんなチャンスをもらえて、多くの経験ができたと思います。なので、こっちに来て良かった」と言う。
「リーグワンもレベルは高いけど、向こう(ニュージーランド)はラグビーのスタイルも違うし、プレースタイルとマインドセットの違いが楽しみです。その中で僕は、できるだけ自分の得意なプレーを生かしながらも、これまでと違うプレーも学べるといいな、と考えています」

 日本代表キャップは、すでに23。年齢的にはまだ若くても、現在の代表の中では経験値が高いグループに入る。ただ、「リーダーにならないといけない、という気持ちではなく、プレーで見せていきたい」。
「まだキャップが少ない人たちが僕ら20キャップぐらいの選手たちを、何をやっているのかな、と見ている感じはあるので、何か言わないといけない時には言うようにしています」

 自分が初めて日本代表に加わったとき(2021年秋)のことを思い出し、「あの頃はいまと逆で、僕がいちばん若かった」と言う。
「(当時は)2019年のワールドカップを経験した選手、ベテランがいました。いまは雰囲気は違うけど、テストマッチで勝てるように、みんな必死に練習しています。そのマインドセットは変わらない」

 今回のハリケーンズ行きについて、リーチ マイケル主将が「(最終的に)オールブラックスに取られないようにしないと」と言っていたことを伝えると表情を崩した。
 まずは1季だけのプレーと約束されているが、(日本代表活動から3年離れるなど)代表資格のルールに則って未来図を描けば、将来的に漆黒のジャージーを着る道を歩むことも可能ではある。

キャップ数も増え、周囲から頼られることも多くなっている。(撮影/松本かおり)


「ずっとジャパンでやりたい」とすぐに答えたディアンズは、「日本がホームという感覚がある」と続けた。
「ただ、いろんな経験は積みたいですね。ヨーロッパにもチャレンジしたい気持ちもあるし」
「でも、代表は日本」と繰り返した。

 赤白のジャージーでオールブラックスに勝つほうがカッコイイ。
「(2022年には31-38と)惜しい試合もあった。去年はボコボコにされたけど(19-64)、いつか勝ちたいですね」と高い目標を掲げる。

 この人、いったいどれだけ日本代表キャップを積み上げるだろう。
「リーチさんには40歳ぐらいまでやってもらい、100キャップを取ってほしいですね(現在89キャップ)。そして、(将来)僕が超える。それがいいかな、と」

 現在の歴代日本代表最多キャッパーは98の大野均さん。ブレイブルーパス組で上位を占めるつもりでいる。





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