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【Just TALK】「日本代表の10番はもっとも価値があるもの。果たさなければいけない責任がある」。李承信[日本代表]
先のウェールズ戦で日本代表キャップは19に。出場試合の成績は7勝12敗に。伝統国からの勝利は初めてだった。(撮影/松本かおり)
2025.07.06
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【Just TALK】「日本代表の10番はもっとも価値があるもの。果たさなければいけない責任がある」。李承信[日本代表]

向 風見也

 戦前から自信がありそうだった。

 7月5日、福岡・ミクニワールドスタジアム北九州。李承信は、ラグビー日本代表の先発スタンドオフとして対ウェールズ代表2連戦の初陣を24-19で制した。

 前半こそやや圧倒されて3つの失トライも、セットプレーで優勢だったことを支えに後半のラスト10分の時間帯に逆転勝利をつかんだ。

 前日会見でこう意気込んでいた。

「チームにとっても、日本ラグビーにとっても大事な試合になると、選手たちも理解しています。ただ、プレッシャーばかり感じていてもいいパフォーマンスはできない。ここまでウェールズ代表に勝つためにどうプレーするかにフォーカスしてきた。明日は余計なことは考えず、プランを遂行して、ゲームが終わったら勝っているように戦いたい」

 世界ランクで1つ上回っていた12位の伝統国を下すべく、こう展望した。

「ウェールズ代表がどこでプレッシャーをかけてくるか。

 ひとつは(自軍の攻撃中の)ブレイクダウン。フォワードの9シェイプ、10シェイプに圧力をかけてくると思う。あとは、コンテストキックでモメンタム(勢い)をつかんでくる。それへの対策をしてきました。

 また、相手のスイングする(ボールを持たない選手が攻める方向に回り込む)アタックが脅威になる。(防御で)相手の強みを消していければと思います」

第1テストマッチ前日の記者会見で話した。(撮影/松本かおり)


——昨年はテストマッチ4勝7敗と負け越しており、後半の失速が目立ちました。どう改善しますか。

「去年までは、よりポゼッションにフォーカスを置いていた。意図的にタフな状況でボールを動かし続け、順目にどう攻めるかを意識しました。ただこの夏の天候、相手のフィジカルに対して、一辺倒なアタックをすると疲弊してしまい、相手にアジャストされる。

 いまはよりクリアなプランを持っている。アタックとキックのバランスをスマートに考えながらモメンタムを作りたいです。

 エディー(・ジョーンズヘッドコーチ)さんと自分とのミーティングでも言われましたが…。最初の20分は『超速ラグビー』。スピードとテンポを持ってインパクトを与えたい。そこから後半20分にかけて、どれだけテリトリーゲームでコントロールできるか(が大事)。スマートなキックを使えることで、最後の20分間でよりハードワークできる。ゲーム展開、時間帯も考慮したいです」

——スターターのスタンドオフとして背番号10をつける意味について。

「日本代表の10番は(自分の中で)もっとも価値があるもの。この舞台で10番を背負うことを自分の夢、目標として頑張ってきている。果たさなければいけない責任があります。

 明日、大事にしたいのは、サイクルです。ボールを持てば常にスピードを持ってアタックしていきたいです。

 モメンタムを持ちながら相手にプレッシャーをかけるために、コンテストキック(高い弾道)、コーナーへのキックも大事になる。明日は天候もタフになる。フォワードをどんどん前に出し、相手を背走させ、モメンタムを得た状態でプレーできるようにやっていきたいです」

 試合当日は、最高気温34度のもと首尾よく戦った。
 特に中盤戦以降は、度重なるピンチをしのぎながら効果的なキックを用いた。向こうのエネルギーが落ちた終盤は、連続攻撃が勢いづいた。

 強豪と謳われる、いわゆる「ティア1」の相手に勝ったのは2019年10月13日のワールドカップ日本大会のスコッドランド代表戦(神奈川・横浜国際総合競技場/○28-21)以来だ。
 2022年に初キャップの李にとっては、今回が初体験。自らボールを蹴り出し、歓喜の瞬間を迎えて笑う。

「本当に…リーチ(マイケル主将=ワールドカップ4度出場)さんもいるし、泣きそうになりました」

 試合後の取材エリアでは、ゲームの流れや反省点などを語った。

——前半はビハインドを背負いました。

「自分たちのイージーなミスでスコアを広げられた。立ち直るべく『セイムページ』(を見ることが大事)と」

——別な選手によると、ハーフタイムを経て陣地の取り方などを変えたようですが。

「シンプルに考えると、どれだけフォワードを前に出せるか、です。

 またスローボールになった時の判断(を再考した)。スローボールになるエリアによって——タッチラインが近かったら9番(スクラムハーフ)から蹴る、真ん中だったら自分が蹴る——など。

 それは(合宿地の)宮崎でも常に練習してきたことです。機能していました」

1万3487人のファンが詰めかけた満員のスタジアムで3G1PGと、4回のプレースキックをすべて成功させた。(撮影/松本かおり)


——終盤、相手はどう見えましたか。

「60~65分頃から、足が止まっているとは感じました。前半はブレイクダウン(接点)、コンテストキックでプレッシャーをかけられましたが、自分たちの『前半20分から後半20分までの戦い方』でコントロールするところはコントロールし、ハードワークできた。自分たちの描いていたストーリー(通り)のゲームになりました」

——課題は。1フェーズ目の接点でスティールされることもありました。

「セカンドマン(サポート役)の速さ、入り方(が課題)。相手より速く、低く入らないと。(ウェールズ代表が)そこにプレッシャーをかけてくるだろうと認識していたのですが、そこではいい結果が得られなかった。(接点でボールを保持して)3~4フェーズ重ねられれば、もっとスコアできていた」

 7月12日には兵庫・ノエビアスタジアム神戸で同カードをおこなう。

 コベルコ神戸スティーラーズ所属の24歳は、待望の白星をつかんだ翌週への思いを「どこが課題か、どういうラグビーをすべきか、ウェールズ代表がどう戦うかはクリアになった。それを(踏まえて)いい準備をしたいです」とまとめた。
 問答で話題に挙がった接点、空中戦の質を見直す。


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