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【Just TALK】「ラグビー人生においてスペシャルな瞬間」。サム・グリーン[日本代表]
マオリ・オールブラックス戦では80分プレーし、2G2PGも決めた。(撮影/松本かおり)
2025.06.29
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【Just TALK】「ラグビー人生においてスペシャルな瞬間」。サム・グリーン[日本代表]

向 風見也

 日本代表を軸に編まれたJAPAN XVは、6月28日、東京・秩父宮ラグビー場でマオリ・オールブラックスに20-53で敗れた。前半は攻守逆転からの素早い展開などで17-15と対抗も、徐々に防御を崩された。

 今年初選出で司令塔のスタンドオフに入ったサム・グリーンが、報道陣に囲まれた。首尾よく攻撃を動かしたこと、自陣でのポゼッションが失トライを招いたことを振り返った。

——試合で大切にしたことは。

「テクニカルな部分では、自分はできるだけスクエアに立つようにしました。向こうのラインに仕掛けることを意識しました。外の仲間が1対1の状況を作れるように、です。

 前半に関しては、私たちのエッジ(タッチライン際)でのアタックが効いていました。システムも機能し、それぞれが走り込みながらボールをもらえました。その機会をもっと増やし、80分間できるようにすれば、もっといいラグビーになっていきます」

——前半35分、後半3分の失点は、自陣22メートルエリアで展開を誤ったのがきっかけでした。前者の場面ではノックオン、後者は被ターンオーバーがありました。深い位置でのボール保持はゲームプランの一環でおこなわれたのでしょうか。

「確かに、一旦、外にボールをシフトして蹴ることがプランの一部にありました。それはマオリ・オールブラックスのフルバックが深い位置に立っていたからです。その選手(の立ち位置)を上げさせてから、キックしようとしました。ただ、それは自分たちの(蹴る前のパスの)エラーでうまくいかないこともありました。すぐに蹴ればいいもののワイドチャンネルにランニングしてしまい、ミスを犯した側面もありました」

——このチームは『超速ラグビー』というコンセプトで動きます。スタンドオフが求められる要素は。

「どのチームにおいても、10番(主戦のスタンドオフ)のジャージィを着ることには大きな責任が伴います。特にジャパンでは、アタックのバランスが重要になります。どのタイミングでボールを(相手守備の)裏に転がすか、またどのタイミングで自分が仕掛けて外に展開するか…。その、バランスです」

 総じて圧力下で多彩なスキルを駆使も、終盤はチームとして防戦一方だった。この日指揮を執らなかった日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズに、グリーンはこう評された。

「前半はよかった。ただ、ボールを持たなかった後半はもう少しいいマネジメントができた。そこはもっと取り組まないといけない」

1994年8月16日生まれ。178センチ、85キロ。ブリスベングラマー高→ブリスベンシティー→クイーンズランドカントリー→豊田自動織機シャトルズ→静岡ブルーレヴズ。(撮影/松本かおり)


 身長178センチ、体重85キロの30歳。2016年に母国オーストラリアから来日した。

 2019年にヤマハ発動機ジュビロ(現静岡ブルーレヴズ)に加わった前後から、日本代表入りを熱望されるようになった。

 しかし、長らく代表資格を得られずにいた。ウイルス禍に伴う一時帰国などが災いした。

 潮目が変わったのは昨年である。国際統括団体のワールドラグビーが、出生国でなく、かつルーツを持たない国で代表選出に挑むための条件を「連続居住5年以上」から「連続協会登録5年以上」に緩和した。

 おかげでグリーンは昨年12月からの国内リーグワンで、多くの日本人選手と同じように「カテゴリA」に区分された。

 6月上旬には長野・菅平での代表候補合宿へ招集され、そのまま正代表へ初選出された。

 6月16日からの日本代表宮崎合宿では、横浜キヤノンイーグルスからJAPAN XVに追加招集されたスクラムハーフ、土永旭と同部屋となった。

 マオリ・オールブラックス戦でスターターのスクラムハーフを務めた福田健太とは、練習以外の場でもよく会話した。

 かねて述べていた。

「(日本代表になったことには)わくわくしています。まずはここでの時間を楽しむ。そしてプレーする機会があれば、100パーセントの自分を出したい」

 そしてこの夜、初めて桜のエンブレムつきのジャージィを着たうえで語った。

「ラグビー人生においてスペシャルな瞬間。周りの選手たちとこの試合ができ、光栄な気持ちです」

 日本代表は7月5、12日、対ウェールズ代表2連戦に臨む(会場はそれぞれ福岡・ミクニワールドスタジアム北九州、兵庫・ノエビアスタジアム神戸)。


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