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【欧州チャンピオンズカップ/フランス勢ウォッチ】スタニフォースはRWC2027で日本代表の前に!?
カストルのタックルマンで、よく前に出るトム・スタニフォース。フランス代表でも活躍するか。(Getty Images)

【欧州チャンピオンズカップ/フランス勢ウォッチ】スタニフォースはRWC2027で日本代表の前に!?

福本美由紀

 1月16日から18日にかけての3日間、チャンピオンズカップの第4節、プールステージ最終戦が開催された。フランス勢にとっては、トップ14での勢いをそのまま発揮できたチームと、欧州の分厚い壁に阻まれたチームとで明暗が分かれる格好となった。

 フランスから参戦した全8チームのうち、決勝トーナメントの最初のステップとなる「ラウンド・オブ・16」(4月4日〜6日)への進出を決めたのは4チーム。昨年の6チームから2つ減少し、フランス勢の苦戦も垣間見える大会となった。

 一方で、このプールステージの結果からは、2週間後に開幕を控える欧州6か国対抗戦「シックスネーションズ」に向け、各国の仕上がりや勢いを感じることもできる。

 今年のプールステージで際立ったのは、イングランド勢の躍進だ。ノーサンプトン、ハーレクインズ、ブリストル、セール、サラセンズ、レスター、エクセターの計7チームが決勝トーナメント進出を決め、昨年の5チームから2つの枠を積み増した。イングランドのクラブレベルにおける復調ぶりが見て取れる。

大会のプレーヤー・オブ・ザ・マンスに選ばれたのはグラスゴー・ウォリアーズのWTBカイル・ステイン。『Investec Champions Cup』の公式Xより


 スコットランド勢も昨年より1チーム増え、グラスゴーとエディンバラの2チームが勝ち残った。
 特にグラスゴーは、スコットランド代表メンバーが多数顔を揃える布陣で挑み、全4試合でボーナスポイント付きの勝利を挙げるという完璧な内容を見せた。総合1位こそ得失点差でボルドーに譲ったものの、完成度の高さはシックスネーションズでのスコットランド代表の活躍を予感させる。

 その他の国に目を向けると、アイルランド勢は昨年の3チームからレンスター1チームのみとなった。アイルランド代表が居並ぶレンスターは4戦全勝も、試合を見ていて、数年前の怖さは感じられない。代表チームのグリーンのジャージーに袖を通すと変わるのだろうか。

 イタリアのベネトンは、今大会は下位大会のチャレンジカップに参戦している。ウェールズのスカーレッツは「ラウンド・オブ・16」への進出こそ叶わなかったものの、昨年は全チームがチャレンジカップだったウェールズ勢の中で、唯一チャンピオンズカップの舞台に立った。
 シックスネーションズには参加しないが南アフリカ勢は、昨年の0から、今年はストーマーズとブルズの2チームが進出を決めている。

ラウンド・オブ・16のトーナメント表。『Investec Champions Cup』の公式Xより


 フランス勢の中で圧倒的な強さを見せたのがボルドーだ。
 同じく無敗を維持していたイングランドのブリストルを敵地で27-15と破り、全試合でボーナスポイントを獲得。勝ち点20の総合1位で予選を通過した。これによりボルドーは、今後の試合を準決勝までホームで開催できる。大きなアドバンテージを手にした。

 この試合ではWTBルイ・ビアル=ビアレがハットトリックを達成する決定力を見せた。シックスネーションズでの活躍にも期待が膨らむ。

 欧州2連覇を狙うボルドーは、相変わらず華麗なBK陣を擁し、カウンターで瞬く間にトライを奪う強力な決定力を誇る。さらに、FL/LOカメロン・ウォキ、FLジャン=リュック・デュプレア、LOボリス・パリュが加入したことにより、FWに重厚感が増している。ラウンド・オブ・16では総合で16位のレスター(イングランド)と対戦する。

 過去6度の優勝を誇るトゥールーズも、最終戦でその底力を証明した。セールに敗れれば敗退の可能性もあり、背水の陣で臨んだ一戦。FBトマ・ラモスが試合前に、「ここはスタッド・トゥールーザンです。我々が参戦している2つの大会(トップ14とチャンピオンズカップ)の両方で常に優勝争いに絡む力を示さなければならない義務がある。いまのメンバー、そして我々が掲げている目標を考えれば、もしこの試合に勝てないようなことがあれば……とんでもない大失態になります」と危機感を口にしていた。

 その義務を果たさんと、チームは一丸となって攻勢をかけた。
 結果は77-7という圧勝で、ラモス自身も1トライ11コンバージョンと大車輪の活躍を見せた。試合後、POMに選ばれたラモスは「今日はチーム全員でパスを繋いでプレーできたことが良かった」とインタビューに応えた。

トゥールーズのFBトマ・ラモスはプールステージの得点王に。『Investec Champions Cup』の公式Xより


 しかし、今シーズン見え隠れしていたプレーの粗さや、突然の失速といった課題が完全に解決したわけではない。「レギュラーシーズンを通して、満足のいく結果とは言えない」と、アントワンヌ・デュポンも認めている。総合で8位のトゥールーズは、9位のブリストル(イングランド)と対戦する。

 前週に引き続き、この試合でもスコットランド代表のブレア・キングホーンがSOを務めた。ロマン・ンタマックが、昨年12月28日におこなわれたトップ14のラ・ロシェル戦から腰の痛みを抱え欠場している。
『ラグビーラマ』によると、腎臓から出血が見られたため、しばらく安静が必要なようだ。シックスネーションズも2月15日の第2節ウェールズ戦までは欠場する見込みだ。

 今節最も話題になったのは、カストルがアイルランドの難攻不落の要塞、トモンド・パークで、強豪マンスターを31-29で破ったことである。前週、ホームでおこなわれたバース戦での厳しい敗戦(20-43)から見事に立ち直った。

「今日は素晴らしい一日になる、という予感があった」とカストルのグザビエ・サドゥルニHCは切り出し、「月曜日はバース戦で受けた屈辱から立ち直れていなかった。火曜日もまだ余裕がない状態だった。でも、木曜日には完全に切り替わっていた。選手たちが本当に集中しているのが感じられた。プレーの質、強度、ビデオ分析への取り組み方においても、彼らには何かが宿っているようだった。眼差しや分析力から、選手たちがその瞬間を自分たちのものにしようとしているのが伝わってきた」と語った。

 試合は追いつ追われつの接戦となったが、カストルの選手たちは終始落ち着いて自分たちのラグビーを貫き、31-29でマンスターを下した。ボーナスポイントも獲得し、プール最下位から3位に浮上した。
 長年カストルには、「チャンピオンズカップを本気で戦わないチーム」というイメージがつきまとっていたが、それはもう過去のこと。サドゥルニHCの指揮下、カストルは2シーズン連続でベスト16進出を果たした。

 トモンド・パークでフランスのクラブが勝利を挙げるのは、2014年のクレルモン、2021年のトゥールーズに続いて3度目という極めて珍しい快挙だった。

 2014年にクレルモンでコーチを務めていたサドゥルニHCは、今回の結果に喜んではいるが満足はしていない。「まだ改善の余地も成長の伸びしろも十分にある」と、さらなるレベルアップを目指す。

 このクラブにはスター選手はいない。でも、強豪とも互角に渡り合う力はある。
 ただ、そのためにはプレーの精度と規律が不可欠で、それが前週のバース戦では欠けていた。マンスター戦では、後半にいくつかの不注意な反則を犯したものの、崩れることなく平静を保ち、集中し続けることができた。何よりも、チームが一つになってプレーしているのが感じられた。

 この日、チップ&チェイスの個人技でトライを決め、また巧みなキックパスでトライの演出もしたFBテオ・シャブニは、FW陣への感謝を何度も口にした。
 勇猛果敢に次々とタックルで刺さり、ラックで相手を苦しめ、スクラムでもペナルティを奪った彼らの獅子奮迅の働きなしにはこの勝利は掴めなかっただろう。

敵地でマンスターに勝ったカストル。(Getty Images)


 一方、厳しい結果を突きつけられたチームもある。
 ラ・ロシェルは予選通過に必要な勝ち点1(7点差以内の敗戦で得られるボーナスポイント)を目前にしながら、終了間際にゴールポスト正面、距離30メートルの地点でハーレクインズにペナルティを与えてしまった。それをSOマーカス・スミスに確実に沈められて17-27と敗退。2019-20シーズン以来の予選敗退となった。

 ハムストリングの負傷で欠場しているSHノラン・ルガレック不在の影響が感じられた。

「負けた原因が9番のパフォーマンスにあるわけではない。平凡な試合をしたのは23人全員だ。ノラン(ルガレック)が非常に優れた選手なのは間違いないが、我々はホームで戦っていたんだ。彼が不在でも、やるべきことをやり遂げる能力がなければならない。今日は一度も自分たちのラグビーができなかった。お遊びのようなパス回しに終始してしまった。それは我々のスタイルではない。レンスター戦(前節/24-25)では面白い攻めができていたのに、今日はコンタクトの前にパスを回して、相手を圧倒しよう、痛めつけてやろうという意志が感じられなかった」
 ロナン・オガーラHCは、試合後にそう言った。決して一人だけの責任ではなかった。

 しかし、よく戦ったレンスター戦でチームの指揮を執っていたのが、今季ラシン92から加入したばかりのルガレックだったのだ。球さばきも速く、自らもボールを持ち出してディフェンスに切り込む。守りでは相手SOに執拗にプレッシャーをかける。
 何よりもラ・ロシェルで最も正確なキッカーだ。この日、ラ・ロシェルは3本中2本を外して4点を失っている。

 それだけが敗因ではないが、1点を争う接戦でゴールキックで着実に得点を積み重ねられないのは厳しい。ルガレックは怪我が治ればフランス代表に招集され、3月末まで不在となる。ラ・ロシェルにとって厳しい冬になりそうだ。

 25年ぶりに欧州の舞台へ戻ったポーも、現役スプリングボックスを多数擁するブルズに挑み、モールから3トライを奪って前半を21-12でリードするも、後半に逆転を許し、24-26と惜敗した。

 試合後、セバスチャン・ピケロニHCは、「勝負を分ける重要な局面で精度を欠いてしまった。チームが見せたパフォーマンスのレベルを誇りに思うが、私自身も選手たちも、これ以上のものを求めている。あえて言っておきたいのは、ここ最近少し調子を落としていたフォワードが、今夜はしっかりと戦い抜いたということ。相手をもっと圧倒することだってできたはずだ」。
 選手の、特にFWの取り組みを評価しながらも、「もっとできた」という思いは隠せない。

 躍動するBKの才能がよく称えられるポーで、屈強な南アフリカのチームとFWが渡り合えたのは大きな自信となるだろう。できたこと、できなかったことを含め、この若いチームがさらに成長するために必要な学びとなった。ポーはラ・ロシェルと共にチャレンジカップへ回る。

 クレルモンとバイヨンヌは4連敗を喫し、ボーナスポイントも獲得できず勝ち点0で大会を去っている。

 トゥーロンは初戦のエディンバラ戦でつまずいたものの(20-33)、そのあと立て直し、バース(45-34)、マンスター(27-25)と連勝、最終節のグロスターにも31-14と勝利を挙げ、決勝ステージへの進出を果たした。ラウンド・オブ・16では南アフリカのストーマーズをホームに迎える。

 また、1月14日に、スコットランド代表CTBヒュー・ジョーンズが来季加入することが発表された。強いフィジカルでチームを前進させ、また周囲の選手を生かすことができるCTBをトゥーロンは探していた。さらに代表レベルでも経験が豊富という条件にも当てはまる。
 ブリストル戦でPOMに選ばれた、イタリア代表CTBフアン・イグナシオ・ブレックス同様、その豊富な経験で若い選手を導く存在となることが期待される。

 チャンピオンズカップのプールステージでの激闘を経て、ヨーロッパのラグビーカレンダーは一気にシックスネーションズへと移る。
 各国代表がスコッドを発表する中、フランス代表のファビアン・ガルチエHCも、シックスネーションズの開幕戦、2月5日(日本時間2月6日午前5時)のアイルランド戦の準備に向けた42名の招集メンバーを発表した。
 最大のサプライズは、カストルの躍進を支えるLOトム・スタニフォース(31歳)の初招集である。

シックスネーションズに臨むフランス代表のスコッド。France Rugbyの公式Xより


 オーストラリア出身で2020年にワラターズからカストルに入団した。198cm、124kgの巨体で「がむしゃら」に動き回る。自慢のマレットヘアを振り乱し、容赦なく、次々と強烈なタックルを見舞う。ボールを持てば敵を蹴散らして前進する。「泣く子も黙るスタニフォース」。すぐにカストルの主戦力となった。

 2021-22シーズンから3年連続で、トップ14で最も多くのタックルを決めたベストタックラーとなった。しかし、2024年8月に足首の手術を受け、1年間グラウンドを離れることになった。今季9月に戦列復帰、以前のレベルを取り戻しつつある。
 データ分析サイト「Opta」によれば、今シーズンのトップ14で400分以上プレーした全280人の選手の中で、スタニフォースは80分間あたりの平均キャリー数(16.0回)とタックル数(16.5回)の両方でトップ5に入っている。さらに、キャリーとタックルの合計数が80分平均で30回を超える(32.5回)唯一の選手だ。「選ばれし存在」と「Opta」は称える。

カストルのスタニフォースの秀でたスタッツ。『X』の『Opta Jonny』より


 カストルに所属して5年が経ち、フランス代表選考資格を得た。ガルチエHCとしては右LOのロマン・タオフィフェヌアの後継者を見つけて選手層を厚くしたいのだろう。
 今年はネーションズチャンピオンシップもある。また昨年11月のテストマッチでは、このチームの強みであったディフェンスの脆さが指摘された。すでに同じオーストラリア出身のエマニュエル・メアフー(27歳、203cm、145kg)がいるがパフォーマンスに波がある。試合ごとに存在感を増しているミカエル・ギヤールもいる。しかし、直近4試合ではNO8で起用されている。

 マンスター戦で、カストル公式戦100キャップを達成したスタニフォース、このトライアルの機会を掴んでレ・ブルーのファーストキャップを得ることができるだろうか。




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