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11月、気温30度を超えるバーレーンの空の下で、汗をにじませながらボールを握る。
乾いた風が吹き抜けるこの中東の地で、ラグビーをしている自分が時々信じられない(中東挑戦記#1はこちら)。
それでも笛の音が鳴ると、気温も国境も関係なく、ただラグビーをプレーすることに集中している。
ここはウエストアジア・プレミアシップリーグ。UAE、カタール、バーレーンの3か国から7つのクラブが集まり、9月から翌4月までホーム&アウェーで戦う、中東最高峰のリーグだ。
僕が今季から所属するバーレーン・ラグビークラブは、現在5戦5勝でリーグ単独首位。それぞれの国を代表するクラブがひしめく中で、今季はチーム全体が“リーグ優勝”を目指して戦っている。

僕は現在、クラブが提供してくれたマンションで2人のルームメイトと暮らしている。
彼らはスコットランドとオーストラリアからきた。国籍も文化もバラバラだが、食卓を囲めば笑い声が絶えない。
朝食や夜の練習後、誰かが食事を作り始めると自然とリビングに集まる。話題はもっぱらラグビーのことだ。次の試合のことだったり、今話題のテストマッチ。言葉や文化は違っても、「ラグビーがあるから一緒にいられる」という実感がある。
このチームでの日常そのものが、僕にとっては大切な『学びの時間』だ。
バーレーンでの生活は、ラグビーだけではない。
僕はクラブ職員として、週に10時間ほど子どもたちへのスポーツ指導にも携わっている。7歳から12歳までの子どもたちと一緒に、ラグビーやサッカーを楽しむ時間は、僕にとってもう一つの『フィールド』である。
グラウンドでボールを追いかける子どもたちの笑顔を見ていると、「ラグビーは結果だけのスポーツじゃない」とあらためて思う。
勝つことよりも、仲間と協力してチャレンジする姿勢こそが大切だと、教えるたびに自分が学んでいる。
そして、子どもたちに「Coach Kenta!」と呼ばれながら一緒に汗を流しているが、英語でのコーチングは難しさを感じている。日々自分にとってチャレンジの時間だ。

先週末(11月1日)、久しぶりにホームスタジアムで行われたAbu Dhabi Harlequins戦。このチームはUAEでも屈指の強豪で、毎年ニュージランドやイギリスからから数名の選手を補強する。対戦してみて、フィジカルもスキルも高い印象を受けた。
僕はこの試合で10番を背負ってピッチに立った。
キックオフは午後14時。11月だが気温は32度だった。スタンドには現地の家族連れや外国人サポーターが集まっていた。
試合開始の笛が鳴ると、スタジアム全体が一気に熱を帯びる。
試合は激しい攻防の連続。後半残り2分、22-20と2点リードの中、敵陣22メートル付近でディフェンスする時間帯があった。
チーム全員で守り切り、最後は相手のミスボールをウイングが拾い右隅にトライ。29-20でなんとか勝利することができた。

この勝利でチームは開幕から5連勝を飾った。
試合後、グランドにはこのバーレーンの地で出会った多くの日本人の方々が応援に駆けつけてくださった。スコットランドに続き、ここでも多くの人と出会い支えてもらっている。感謝しかない。
異国の地で暮らし、働き、プレーすることは簡単じゃない。
でも、この環境だからこそ学べることがある。仲間の文化を尊重すること。失敗を恐れずに様々なことにチャレンジすること。
そして、行き着く先はいつも、』やるか、めっちゃやるか』という言葉だ。
どんな場所でも自分の信念を貫いて、挑戦を続けたい。
※バーレーンでの現地情報はYouTubeチャンネル『忽那健太』でアップしています。