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イギリス、韓国での挑戦の先に待っていたのは——中東バーレーンだった。
8月14日、関西国際空港を飛び立ち、私、忽那健太(くつな・けんた/プロフィール)はドーハを経由してバーレーン空港に降り立った。
新たな舞台は、中東プロラグビーリーグ「ウエストアジアプレミアシップ」。
バーレーンラグビークラブから1年間のオファーを受け、9月下旬から翌4月まで中東各国を転戦する。
中東ではカタール、サウジアラビア、UAE、バーレーンが合同でリーグを立ち上げ、将来のワールドカップ誘致を見据え盛り上がっている。
正直、治安も環境も、そしてラグビーのレベルも未知数。
だが僕は迷わず中東での挑戦を選んだ。
数年前、癌を患った。
そのときに自分に誓ったことがある。
——「必ずこの病気を治して、復帰する。そして選手として燃え尽きるまで挑戦する」と。
だからこそ、まだ見ぬ世界に飛び込む勇気が持てた。
2023年からはラグビーの母国イギリスに渡り、日本人未踏のスコットランドで2年間プレーした。
そこで感じたのは、ラグビーのレベルの高さだけではなかった。
選手の誇り、クラブ文化の奥深さ、多様な価値観。
また、富裕層の中でラグビーが愛されていることにも気がついた。

そのような日々を過ごす中で、
「もっと世界の様々なラグビー環境を見てみたい」、
「経済が安定してる国以外の貧困や紛争が近い地域ではどんな風にラグビーが存在しているんだろう」…と思うようになった。
人生は一度きり。
残りのラグビー人生を使って、世界のラグビーを見てみたいという思いに駆られた。
言葉にしづらいが——世界が僕を待っている。そんな気がした。
そんな時、スコットランド時代の監督が、「君にぴったりのクラブがあるよ」とバーレーンクラブを紹介してくれた。
思わぬ角度から生まれた、新しい道。
でも話を聞けば聞くほど、未知の世界に胸が高鳴った。
チームからは「君が必要だ、一緒にプレーしたい」と熱いメッセージをもらった。
必要とされる場所で全力を尽くす。選手としてこれ以上の幸せはない。
クラブは住居と車、そして給料まで用意してくれている。
イギリス時代、週45時間の引っ越し労働で食費すらギリギリだった日々を思えば、これ以上の環境はない(それでも試合後の仲間とのビールだけは欠かさなかったが……!)。
ここ数年の海外挑戦で学んだことがある。
挑戦の先にあるのは「成功」か「失敗」ではない。
「成功」か「成長」だ。
挑戦とは、現状を超えようと踏み出す一歩。
勇気も覚悟も必要で、時には涙すること(挫折)も避けられない。
でも、その涙は、未来を支える力にきっとなると信じている。
だからこそ特に日本の10代、20代前半の選手の皆さんには、今のうちにぜひ沢山のことに挑戦をしてほしい。

僕のスローガンは「やるか、めっちゃやるか」
言いかえれば——
「challenge, or more challenge. 」
挑戦こそが、人生を豊かにしてくれる。
今回もまた唯一の日本人選手として戦う。
知り合いもいない、ゼロからのスタートだ。
でもだからこそワクワクしている。
「中東ラグビーチャレンジ」ここから始まります。
今後も『Just RUGBY』で、挑戦の日々を届けます。