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【ラグビーと暮らす/Vol.8】海外で戦うための英語力──ラグビーとコンサルで鍛えた実戦的トレーニング法。
ケニアにて。2023年のラグビーワールドカップフランス大会を皆で観戦した後に撮った一枚。左側にいるのが南アフリカ出身の友人。世界各地の人々とああでもないこうでもないと話しながら、ラグビーを見られるのも英語が使えることのメリットの一つ (筆者は右側。写真は筆者提供。以下同)

【ラグビーと暮らす/Vol.8】海外で戦うための英語力──ラグビーとコンサルで鍛えた実戦的トレーニング法。

大嶽和樹/Kazuki Otake

 海外のラグビーに興味を持ち、いつか海外でプレーしたいと考える人にとって、大きな壁として立ちはだかるものの一つが英語だと思う。最近はリーグワンや大学でも海外出身選手が増えているため、国内の選手でも英語力を伸ばしたいと思っている選手も多いかもしれない。

 私自身、20数年間日本で育ち、日本語ネイティブとして生きてきた。20歳を過ぎてから、アメリカに留学し、その後、ケニア、東南アジア、カナダで働き、ラグビーをプレーしてきた。

 20歳を過ぎてから英語を使うようになったからこそ、ただ現地にいるだけで英語が身についたわけではない。人並み、いや人並み以上に苦労し、なんとか英語が使えるようになっていった。

 その過程では、闇雲にオンライン英会話をこなしたり、とにかく自分のレベルに不釣り合いなスピードの速い英語音源を無駄に真似したりするなど、効果が薄いとされる様々な学習をおこなってきた。

 いま、もしくはこれから英語を学習するような人たちは、同じような轍を踏まないでほしい。

 この記事では、英語力って何なのか、私自身の英語力がどのように変遷し、それはどのように勉強をしたのか、そして今後、英語力を伸ばしたいプレイヤーがどのように英語力を伸ばしていくのがいいのか、持論をお伝えしたい。

◆ そもそも「英語力」とは何か?


 英語力は、読む・聞く・話す・書く、の4技能で測られる。これを評価する指標として、TOEFLやILETSなど様々な評価指標があるが、「Cambridge English」において定義されている6段階評価が、最も権威のある指標として使われるのが一般的だ。

Cambridge Englishが定義している6段階評価に対し、私自身が海外の企業やラグビーチームなどでプレーしてきた実感を元にレベルわけしたもの


 日本で教育を受けた場合、英単語や読み書きに重きが置かれるため、基本的にはA2やB1あたりに位置することが多い。単語や非常に簡単な文章レベルの聞き取りや発話(言語を音声として発すること)となるレベルだ。

 これが日本企業の海外駐在等、業務に英語が含まれつつ、意思決定や意見交換についてはある程度日本語でおこなわれる場合や、1年程度の留学は、B2あたりになる。比較的抽象的な話題の議論や即興での意見交換ができるも、聞き取れる&話せる英語のスピードや表現力の幅は広くはない。

 海外企業の海外オフィスで勤務するレベルになるとC1あたりとなり、抽象的な概念や専門的な議題も自在に議論ができるようになる。ネイティブばかりの中でも遜色なく戦えるレベルになるとC2になってくる。

 ちなみに日本ではお馴染みのTOEICは、日本以外の国ではほぼ使われていない。これは、「話す・書く」というアウトプット技能が評価対象外であるため、英語力を測るのに一般的な4技能を網羅していないからだ。
 「聞く」に関してもスピーキングの音声が相当ゆっくりなので実用レベルではない。

◆私の英語力の変遷:挫折と「正しいフォーム」への転換


 私は現在C1の中期といったところ。

 第2言語を英語とする人々の中で、高度な内容も含めて議論すること、仕事をすることへの抵抗はかなり減った。一方で、第1言語英語の人々の中では、そのスピード感や語彙で差異を感じる場面が多く、また文法なども不正確・不自然な部分が一定存在するような状態だ。

 特に会議など、その場で話される話題がある程度決まっている場面では大きな困難は感じないが、スラングが多く、瞬発力が求められ、話題も多岐に渡るような飲み会などの場では、その傾向が顕著になる。

まずはこの後のセクションで、どのような学習を経て、どのように英語力が変遷してきたかを解説したい。

2025年8月ごろ、カナダのチームでプレーしていた際の試合後のロッカールームにて。ロッカールームのような、極めてカジュアルでスラングも多いような場面では、相手がネイティブが多い場合、ついていけないことも多い。


◆留学〜ラグビー現場での挫折。


 私は日本で生まれ、日本語で育ち、英語を実用的に使うことなく20数年間育ってきた。
 2018年、22歳の時に海外留学したのが実質的に初めて英語を使い始めた時だ。留学前は、典型的な受験英語レベルで、「話す、書く」はもってのほかだった。

 留学したことのある人なら多くの人がわかると思うが、初めはレストランで注文するにも、そのための文章が頭の中で作れないし、いうべき単語もわからない状態だった。
 2-3か月もすれば、レストランやカフェなどでの注文やバスに乗るなど、日常生活を送るのには困らなくなってきたが、1年の留学期間中にネイティブばかりの学部授業やグループワークで困難なくついていけるようにはならなかった。ネイティブの生徒から虫ケラのような目で見られた経験は今でも忘れられない。

 ラグビーにおいても同様で、当初練習でコーチの指示が聞き取れないなど苦労したが、「Pop to left/right」(右/左に浮かして)、「On me (Now)」(今パス放って)、「Spread」(広がれ)、「Tighter」(近くに寄れ)など、単語フレーズレベルの英語で、数週間でなんとかプレーすることができるようになっていった。
 一方で、1年の留学で不自由なく英語を使えるようには当然ならず、ミーティングは理解できないことが大半だったし、試合中に仲間に指示をするようなことはほとんどできなかった。

 この時の英語力はTOEFL 90点、TOEIC 900点くらいのレベルだったと思う。

2018〜2019年に留学していたアメリカ・ワシントン大学のキャンパス。校舎・ジム・グラウンドが何面もあり、キャンパスの敷地は広大。趣深く立派なキャンパス。話題についていけず、議論・世間話などの場で空気のような存在になってしまうことも多々あった。留学した人なら誰でも、きっとこういった苦い思い出も抱えているだろう。


◆転換点:ビジネスの壁と英語コーチング


 その後、外資の戦略コンサルファームへの入社が決まり、ビジネスで実用的に使わなければならなくなった。
 入社までの1年半、ディスカッションに特化した試験を受けたが、かなり低い点数が出た。元々ニューヨークのような場所で活躍したいと思って会社に入ったのに、そんなことを言えるような点数ではなく、その結果を見て深く打ちひしがれた感覚やその時の景色を深く覚えている。

 ここで独学の限界を感じ、英語コーチングサービスを受けることに決めた。これが自分の学習を大きく変えていくことになる。

ニューヨークのタイムズスクエアにて、2019年夏頃。ニューヨークは世界の中心とも言われるが、実際、日本では見ることのなかった信じられないスケールで生きる大人たちがたくさんいた。その時の驚きや、視座が引き上がる感覚が自分の原体験であり、いまグローバル人材としての力の向上を目指す原動力になっている。


◆なぜ英語コーチングが必要なのか? 科学的アプローチの導入


 英語コーチングサービスは、第2言語習得論(SLA)という言語学的なアプローチを用いて、自分にとって受けるべき正しいトレーニングを正しい強度で行うプログラムを組み、伴走してもらうサービスだ。
 例えるなら、筋トレのためのS&Cコーチをつけて、重りの重さやスピードなどの強度コントロールをしてもらい、その上で、数週間の学習計画を描いてもらうようなイメージだ。
 トライズなどの会社がサービスを提供しており、その中でも私は最も老舗とも言えるプログリットを受講していた。

 このアプローチでは英語の会話や処理を、リスニング(音声知覚、意味理解)とスピーキング(概念化、文章化、音声化)、「知識データベース」を核とした階層的なステップに分けて考える。

①音声知覚(相手の音を認識する)→②意味理解(その意味を理解する)→③概念化(何を言おうかまとめる)→④文章化(それを英語の文にする)→⑤音声化(口から発音する)


 これらを単語、文法、例文といった知識のデータベースに照らし合わせ、英語を聞く(リスニング)→話す(スピーキング)がおこなわれる。
 このリスニングレベルを測る指標としてWPM(1分間に聞き取れる単語数)、スピーキングレベルを測る指標としてSPM (1分間に話せる単語数) という概念がある。これは、どの程度の早い速度の英語を聞き取れるか、話せるかという指標であり、流暢になればなるほどその単語数は多くなっていく。

 英語学習のよくある失敗例として、英語をほぼ使ったことがないのに、いきなり英語のドラマを見てリスニングを鍛えようとする人がいる。現象としては、スクワット50kg上げられない人が、いきなり150kgをあげようとしているようなものだ。

 もし英語の母音・子音が聞き取れないのならば音声知覚に重点をおいて始めるべきだし、単純に理解のスピードが追いつかないのならば、シャドーイングなどで、WPMを130語・140語と徐々に上げていくべきだ。そしてもっと深ぼれば、実は単語力の問題や例文理解の問題が出てくるかもしれない。

また冒頭で述べたように、オンライン英会話をやみくもにおこなうことは効果が薄いとされる理由も、ここに起因する。オンライン英会話は言ってみれば練習試合のようなもので、それだけでは、レベルアップの幅は限定的になってしまう。
 ラグビーでも、練習試合で出てきた課題をパスやコンタクト練習で潰していくように、オンライン英会話で出てきた課題を音声知覚や意味理解などに分解して、課題をクリアしていく必要がある。

 コーチングは、こういった課題の特定と強度コントロールを可能にする。かれこれコーチングは半年ほど受けた。それからは、正しいフォームを学び、おこなうべきトレーニングとその強度をしっかり学べたことで、それ以後は自分が量をこなし続けることに執着することができた。

高校時代に遠征した時に1週間ほどホームステイしたオーストラリアのホストファミリー。大学卒業時、卒業旅行でオーストラリアに行った際に再会した。この頃は、もちろん拙いが、仕事や大学生活などの話題でも、意思疎通ができるようになっていた。


◆グローバルな現場での実戦と「戦う英語」の完成度


激務の中での継続とケニア・東南アジアでの成長と挫折

 入社時に、海外研修参加のための点数を何とか満たしたものの、日々業務をこなしていく中で、実用的に英語を使っていくのには大きな壁があると知った。当時ChatGPTもなかったので、英語での記事や文献の検索、知見者へのインタビュー等では、ビジネス用語・専門用語が理解できず、ついていけない場面も多かった。

 学習時間の確保を目的に、この頃は朝5時半に起き、朝1〜2時間、英会話やシャドーイング、通勤時の単語学習等をしていた。また、金・土の夜はYouTubeなどの動画コンテンツを見ることもあったが、英語のコンテンツか日本語の場合はラグビーのみとしていた。「Daijiro」や「Atsueigo」等、英語系YouTuberのコンテンツや「America’s God Talent」など、そもそも英語で話されているコンテンツなどだ。

 他にも例えば、歩きながらの独り言はすべて英語にするなどやってみた。もし英語を話せる人が周りにいたら、その人とのチャット、LINEなどはすべて英語にしてみる。生活の中に様々な制約をかけることを、日本にいた2年半ほどはほぼ毎日続けていた。

 その甲斐あって、3年目にケニアオフィスに移籍することができた。この頃はC1初期くらいだったと思う。

 ケニアオフィスに移籍してからは、また次のレベルでの苦難がやってきた。
 特にMBA卒の同僚も多く、C1中期-ネイティブの同僚の英語、さらにはアフリカ各国の訛りなど、日々の議論や資料作成の中での英語の使用にひと苦労だった。この頃は、引き続き5時半起き。役員の方からパワーポイントのスライド作成で「1000本ノック」と称されて鍛えられ、仕事で使う英語は徐々に形になっていった。

ケニアで、キリンがいる公園にいった時の写真。この時が初めてのアフリカで、空の青さ、人の人懐こさなどにワクワクしたことを覚えている。南アフリカ代表で、埼玉パナソニックワイルドナイツ所属のLood de Jager(ルード・デヤハー)はランプレーしている時、英語実況で「He is like a giraffe」(彼は麒麟のようだ)と言われることがある。このキリンの可愛さと、デヤハーのプレーの荒々しさはなかなか結びつかない。


 徐々に仕事上での見かけ上の障害は減ったものの、チームやクライアントとの会食など、砕けた会話における会話のスピードや仕事で使わない語彙に出会う機会は多く、その度チクチク痛みを覚える状態は続いていった。

 一方で、一定の仕事の中で英語を使えるようになったことで、ケニア滞在後半は学習をサボり、成長曲線は低くなってしまっていた。
 東南アジアで過ごすようになってからも、第2言語英語の人がほとんどの場所であったため、仕事以外の場面における会話での困りごとに出会うこともなく、また英語学習自体もサボり、逃げていた。

 その後退職し、ラグビーを生活の中心に据えること、第1言語英語の国でグローバル人材としての力を上げることを目的にカナダで暮らした。

 カナダでは、チームミーティングで意見すること、ディフェンスの分析を担当して皆の前で改善点を提案することなど、フォーマルな場では、第1言語を英語とする国々の人の中でも、英語を使えるようになってきた。

 ただ、飲みの場におけるスラングやローカルな知識が必要とされるようなカジュアルな会話にはいまだに困ることが多い。
またエッセイ等、英語で長いレポートをChatGPTなど使わず、自分だけで書くのには難しさがある。
 おそらく、C1の中期といったところだろうか。毎日の学習をサボらず淡々と続けなければならない。

チームミーティングにて。ウェールズやスコットランドなどは、一般的に英語圏の中でも特にアクセントが強いと言われる。ウェールズ出身のチームメイトとの議論はいつも少し怖気ついていた。一方で、皆が納得するようなひと言を言うことができたり、笑いを取れたりする場面も増え、それらが少しずつ自分の自信として積み重なっている。


◆現場で「戦う力」を身につける戦略的学習法


 前提として、私はコーチングサービスなど、独学ではない方法をお勧めしたい。
 またネイティブではなく、英語を第2言語として身につけて人からのアドバイスを受けることをおすすめしたい。

 言語学的にも10代後半を過ぎると、ただ英語環境で過ごすだけでは英語は身につかないと言われている。英語の音を聞き取る耳の力、英語の文章を組み立てる力など、それぞれを自然に身につける年齢を過ぎるそうだ。

 一方で、英語コーチングサービスは、決して安くない費用がかかってしまい、簡単に手を出せるものではない。安価なコーチングサービスもあるが、安かろう悪かろうの傾向がある。
 そこでいくつか、実現可能性が比較的高いコツをお伝えしたい

1.ラグビーですぐに使える「フレーズ」を覚える

*ディフェンスの指示:
「Spread out」(広がれ)
「Tighter」(近くに寄れ)
「Take him up/down」 (持ち上げろ/倒せ)
「I got him」(彼見た!)
※このhimの部分をRed shoes(赤いスパイクのやつ)とか色々相手のプレーヤーの特徴に合わせて変えることができる

*アタックの指示:
 「Pop to left/right」(右/左に浮かして)
 「On me (Now)」(今パス放って)
 「Spread wide/out」(外に回せ)

*コミュニケーション: “My bad” (ごめん、ミスった)
 ただしこれは国によってはSorryというところもあるし、そもそもミスしても何も言わないところもある

 これらのフレーズは国や地域によっても異なることを注記しておきたい。

 さらにいえば、これらのフレーズをいくら覚えたところで、仲間からの指示を聞けるようになるわけでも、ミーティングで発言をできるようになるわけでもない。あくまで小手先のテクニックでしかない。

2.英語の音を覚える

 これは上記①の音声知覚を鍛えるためのトレーニングである。
 前提、「あいうえお」など、日本語の母音子音と英語の母音子音は音が異なる。
 例えば「ジャパン/Japan」という単語ひとつとっても、ひとつ目のaと二つ目のaは、どちらも日本語で言えば「ア」だが、英語の発音では、それぞれ[əˈ]と「æ」になり、違う音になる。
 有名なもので言えば「Right」と「Light」。どちらも、カタカナで理解すれば「ライト」だが、意味は全く異なる。

 だから、日本語の母音子音で音を理解するのには限界があり、英語の音を覚える必要があるのだ。
 理論上、発音できる音は知覚できる。「発音図鑑」などという、英語の音(母音・子音)と、それを発音するための舌の動きまで見せてくれるようなアプリがある。1000円程度で買い切りなので、一度買ってみて欲しい。

シアトルでプレーしていた際のラインアウトの写真。この頃はまだ、英語を英語の音としてではなく、カタカナで理解していた。ラインアウトディフェンスで相手側の人数を聞くとき、「Full(全員)」と言われたのに「Four(4人)」だと勘違いし、バックスラインに入ってしまってチームメイトに怒られたことを覚えている。どちらもカタカナ英語の脳で処理すると、LとRの音の違いや「Ou」と「U」の音の違いがわからず、「フォー」のような音で処理してしまう。


3.シャドーイング ― 音声知覚を音声化・意味理解へつなげる訓練

 これは、1分程度の英語で流される音声を真似するトレーニングだ。上記①で鍛えた音声知覚を、実際に「使える音」に変換するために行う。
 英語の音を聞き分けられるようになっても、それを正しいリズムとイントネーションで自分の口から再現できなければ、リスニングもスピーキングも頭打ちになる。
 英語の理解には「音声を意味として認識する」プロセス(音声知覚)と、「それを自ら再現する」プロセス(音声化)があり、両者は表裏一体である。

 聞く・理解する・発するを同時に行う点で極めて効果的だ。特に「シャドテン(シャドーイング添削サービス)」のようなサービスは、毎日1分程度の音源を聞き、その音源をシャドーして録音を提出、フィードバックをもらうことができる。

 英語の母音・子音構造が日本語と根本的に異なる以上、自分の感覚だけで「正しい発音」を再現するのはほぼ不可能だ。AIやプロ講師が自分の音のズレを客観的に示してくれることが、上達を一気に加速させる。

 これを繰り返すことで、英語を聞いた瞬間に意味が浮かぶ“自動処理”の回路が形成され、リスニングの質そのものが変わっていく。
 初めは、WPM(1分間に聞き取れる単語数)が100前後から始める人も多い。だが続けていくとネイティブと同等の200程度まで上げることは可能で、ここまでくると理論上全て聞ける状態になる。

 私自身は、大学5年生から始め、社会人4年目の終わりまで5年程続けていた。毎月2万円ほどで多少のコストはかかるが、大き過ぎるコストではないので、おすすめの自己投資である。

4.瞬間英作文 ― 意味理解を文章化へとつなげる訓練

 これは、日本語の文章を即座に英語に変えるトレーニングだ。②で鍛えた音声化の精度を、実際に自分の頭で英文を組み立てる力へと変えるのが目的だ。

 英語を「聞ける」「発音できる」ようになっても、それを自分の思考の中で素早く“文”として再構築できなければ、会話にはつながらない。ここで重要なのは、単語や文法知識ではなく、日本語の意味を瞬時に英語の語順で再構成するスピード感だ。
 たとえば「昨日、友だちに会った」と日本語で浮かんだ瞬間に、I met my friend yesterday. と自然に出てくるようにする。この変換の速さが「英語で考える力(=意味理解を英語構文に変換する力)」の土台になる。

 瞬間英作文は、単純なようでいて、脳内でおこなっている処理は非常に高度だ。
 前述の②意味理解(内容の把握)→ ④文章化(語順の設計)→ ⑤音声化(発話)。この3段階を一瞬でこなす練習こそが、リアルな会話力の核心である。

 有名な書籍『どんどん話すための瞬間英作文トレーニング』などを使うと良い。1文5〜10秒程度でどんどん回すことができ、正確さより速さを意識して繰り返すのがポイントだ。

 慣れてくると、英語を話す際に日本語で考えなくても文が自然に出てくるようになる。これはつまり、「意味理解→文章化」のプロセスが英語脳の中で直結し始めている証拠だ。

 英語は知識ではなく反射神経だ。シャドーイングが“音の筋トレ”なら、瞬間英作文は“思考の筋トレ”である。両者を組み合わせることで、聞ける・話せるを超え、「考えながら話せる」レベルへと到達できる。

ニューヨークにいたときに住んでいた、当時で家賃500ドル(当時日本円で5万5000円くらい)の家。東京23区内で家賃2−3万円程度の家に住むようなものと例えれば、どのような住環境だったか想像がつくだろうか。地下に5部屋あり、そのうちの窓のない1部屋に住んでいた。シンクは漏電していたので、手を洗う際は感電と隣合わせだった。流石にこれはやり過ぎかもだが、海外に住むことのメリットの1つは、自分の快適さの基準を下げられること。小さなことでも大きな喜びを感じられる。


5.英単語学習 ― カタカナ記憶を脱し、音と意味を結びつける訓練

 これは、英語の「意味理解」を支える基礎的な語彙力を、“音”として再構築するためのトレーニングだ。

 多くの日本人は、受験英語の影響で単語を視覚的(文字)で覚えている。「important=重要な」「require=必要とする」といった暗記が典型だ。
 しかしこの学び方では、音声としての実感が伴わず、リスニングでもスピーキングでも「知っているのに使えない単語」が量産されてしまう。

 たとえば「require」という単語。多くの人が「リクワイア」とカタカナで記憶しているが、実際の発音は /rɪˈkwaɪər/。

 最初の “ri” は弱く短く、語尾の “ər” は日本語にない曖昧母音だ。このわずかなズレが、「聞き取れない」「通じない」原因になる。

 つまり日本人に必要なのは“単語を覚え直すこと”ではなく、単語を音で再構築することである。

 実践法としては、まず『金のフレーズ』のようなTOEIC600点レベルの単語を耳で覚えることから始めたい。リスニングアプリ(スタディサプリENGLISH、abceedなど)で、例文音声を繰り返し聞き、発音を口で再現する。ここで大事なのは「知っている単語」ではなく、「使える単語」を積み上げる感覚だ。

 そして、基礎語彙が“音として体に馴染んだ”段階で、ATSU英語の『Distinction』シリーズのような、より自然でニュアンスの深い語彙・表現へ進むといい。Distinctionの音源をシャドーイングしながら学ぶと、語彙力と音声感覚の両方が一気に伸びる。

 多くの人が見落とすが、語彙学習は単語帳を増やすことではなく、「音と意味のリンクを増やす」作業だ。

 カタカナ英語の記憶を一度壊し、耳と口で単語を覚え直す。

 自分の英語資格スコアよりも一段低いレベルから始めて、地味なリスニングと発音練習を積み上げるのが、結果的に近道である。

6.どんな時でも続けること。

 英語は、1〜2年で不自由なく使えるようになるようなものではない。
 何年も海外で働いている人でも、「英語と日本語が同じレベルになった」と言うまでに10年かかることもある。

 自分も、きっとまだまだかかると思う。コツコツ積み上げることでしか、成果は出ない。

 もしかしたら、今のあなたの英語力を笑う人もいるかもしれない。
 それは、「そんな英語力で海外なんか行けないよ」のような二の足を踏ませるようなものかもしれないし、自らの英語力と比べてマウントを取るような形かもしれない。
 私も実際、「なんでそんな低い点が取れるのかわからない」、「そんなんでニューヨークに行けるわけがないよね」などと面と向かって言われたこともある。

 でも、そういう人たちはたいてい努力を続けられない。「必要な時にやる」と言っていた人も、いざその時が来たときにはもう遅い。

 そんな人を、これまで何人も見てきた。
 現在の英語力がどんなに低くてもいい。焦らずコツコツやれば、目指すところに到達でき、いま笑っている人を見返せるだろう。

 英語も、筋トレも、同じだ。1日サボっても変わらないけど、1年続けたら別人になる。それを何年も続けたら、大きな変化になる。

 大事なのは、どんな時も続けること。気が乗らなくても、英単語帳を1ページだけでも開く。ゼロにしない。結局、それが一番の近道だと思う。

 自分は、決して特別な才能があるわけじゃない。ただ、続ける力はあった。
 もちろん、多くの人たちと同じように、やたくない日もある。それでも、少し早く起きてみる。朝5分だけでも机に向かう。飲み会の数や飲む量をコントロールする。でも、ご褒美の日も作る。

 そういう小さな積み重ねを、途切れさせなかった。

 そして、その積み重ねの規律は、英語力だけでなく、自分自身の自信をつくる。

「今日もやりきった」と思える日々が、確実に自分を強くする。

13人制ラグビー日本代表で初キャップを得る前日に、当時の代表メンバーと。オーストラリア出身・在住のメンバーも多く、基本的に会話は英語。当時から仕事も英語を使う機会が多かった。英語を学べば学ぶほど、より英語を使った仕事の機会を獲得できる。それによりさらに英語が伸びる。結果、代表でのプレー機会などを得られることも。その逆もしかり。ラグビーと仕事という2軸が英語でつながっていたことも、英語を頑なまでに学習し続けられた要因だった。

◆ まとめ:あなたの挑戦が、グローバルスタンダードを上げる


 まず、英語を話せるようになりたいと思うなら、絶対に一歩踏み出したほうがいい。その心の声を無視しないほうがいい。

 取れる情報の幅、出会う人の数は劇的に増え、好奇心が満たされ、少し自分を生きやすくしてくれるだろう。国内で英語を勉強するだけでもきっと変わる。

 そしてそれは、私のような学習量でなくてもよく、少しだけ英語力が上がることで、試合中の指示が少しだけしやすくなる、仕事で英語での検索が少しだけ早くなる、といった小さな成果であっても良いはずだ。

 それでもチャンスがあるなら絶対に海外に出たほうが良いし、チャンスを作りに行ったほうがいい。

 私の親しい前職同期の言葉だが、「国内で英語を使うのはプールの中で泳ぐようなもの、海外で英語を使うのは海で泳ぐようなもの」だからだ。
 何より海外のラグビーのカルチャーに触れることはラグビーマンとして幸せだと思う。
 その挑戦こそが日本のラグビーのレベルを上げ、同時にグローバルな舞台で戦う日本文化圏出身者のスタンダードを押し上げることになる。

 このエキサイティングなスポーツをプレーする選手が、世界で戦うための「英語力」の解像度を上げてくれることを心から願っている。



※グローバル人材として同じように進化していきたい人がいれば、Instagramなどからでも、連絡していただけたら嬉しい。私自身も発展途上であり、サボってしまうこともある人間。同志のような方たちに刺激をもらえたら、そんな嬉しいことはない。



【プロフィール】
おおたけ・かずき
1996年愛知県名古屋市生まれ。早稲田GWRC、University of Washington Husky Rugby Club、Seattle Rugby Club、Kenya Homeboyz、Kenya Wolves等を経て、現在カナダ・アルバータ州のラグビーチームでプレー中。13人制ラグビー日本代表(キャップ4)。早稲田大学スポーツ科学部、法学部、University of Washingtonを経て、外資系戦略コンサルティングファームの東京オフィス、ケニアオフィスなどに勤務したのち、独立。

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