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【現地リポート/SUPER RUGBY PACIFIC】モアナ・パシフィカ痛恨の5連敗も、指揮官は「周りにエナジーを波及させてくれる」と原田衛を高評価
試合後のモアナ・パシフィカの会見。左がキャプテンのFLミラクル・ファイランギ、右がHCのタナ・ウマンガ。(写真は筆者提供、以下同)

【現地リポート/SUPER RUGBY PACIFIC】モアナ・パシフィカ痛恨の5連敗も、指揮官は「周りにエナジーを波及させてくれる」と原田衛を高評価

大嶽和樹/Kazuki Otake

 2026年スーパーラグビー・パシフィック第6節。
 ニュージーランド、オークランド北部のノースハーバー・スタジアム(アルバニー)でおこなわれたモアナ・パシフィカ×クルセイダーズは、50-21というスコアでクルセイダーズが今季初の連勝(バック・トゥ・バック・ウィン)とする結果となった。

 試合が動いたのは開始わずか4分。クルセイダーズのCTBブレイドン・エノーが3人のディフェンダーを引きずりながらインゴールに飛び込み先制する。直後にはWTBセヴ・リースが大会歴代最多記録を更新する68個目のトライを挙げ、早々に12-0とリードを奪った。
 対するモアナ・パシフィカは、開始直後のコンタクトにより、インサイドCTBで先発した、2015年ラグビーワールドカップトライ王のジュリアン・サヴェアが肩を負傷、病院に直行するアクシデントに見舞われた。

キックオフ前、選手の入場シーン


 しかし、ここからホームチームが意地を見せる。
 ラロミロ・ラロミロのブレイクからジョエル・ラムが古巣相手にトライを奪うと、続いてテビタ・オファが外側のスペースを鮮やかに走り切って連続トライ。パトリック・ペレグリーニの正確なコンバージョンも決まり、14-12と一時逆転に成功した。

 一進一退の攻防が続く中、前半終了間際に試合の潮目が変わる。
 この日、背番号10として初先発のデビューを果たしたクーパー・グラントが、ピンポイントのクロスキックを放つ。これをWTBチェイ・フィハキが見事にキャッチしてグラウンディングし、17-14とクルセイダーズがわずかにリードして前半を折り返した。

コーチングボックスブースにいたモアナのスタッフとスタジアムDJ。とても陽気


 そして後半、クルセイダーズは完全にギアを上げる。
 レスター・ファインガアヌクの独走トライを皮切りに、スクラムなどのセットピースでも劣勢に立たされたモアナ・パシフィカは防戦一方となった。
 自陣でのディフェンスが機能しなくなり、なんとここから約1時間にわたってスコアボードを動かせない沈黙の時間が続く。自陣22メートル内で32フェーズにも及ぶ連続攻撃を耐えきれずトライを奪われる場面もあり、後半に戦術を修正して一気にギアを上げた王者との、適応力の差が浮き彫りになった。
 試合終盤、NPCでも人気を集めるシオアシ・ニニニニがインターセプトから意地のコンソレーショントライを奪い、ホームの観客を沸かせたものの、反撃もそこまでだった。

 この試合、16番でメンバー入りしていモアナ・パシフィカの原田衛は、ファインガアヌクの独走トライを相手に許した直後(後半15分)から、試合に出場した(3試合目)。 
 いつものように、グラウンド上を走り回り、タックルを浴びせ、倒れてはすぐ起き上がる献身的なプレー。またHOとしても、スクラムやラインアウトの核として、何度もスローやスクラムを成功させていた。
 途中スクラムの反則やノックオンはあったものの、これまでにはなかった(前節に続く)2戦連続のメンバー入りであり、また過去出場した2試合よりも長いプレータイムを獲得していた。
 チームでの信頼も徐々に積み上がってきているように見えた。

トライされた直後(後半15分)に、原田がグラウンド入り
後半途中、モアナの攻撃シーン。手前に見える黒11番がセヴ・リース、15番がウィル・ジョーダン。ともにオールブラックス


 試合後、勝ったクルセイダーズ、ロブ・ペニー ヘッドコーチは試合展開について、「相手を消耗させるという私たちの狙い通りに試合は進んでおり、計画を遂行するまであと少しのところまで来ていた。スペースが空き始めたことで、予定していたプレーを展開できるようになり、後半は選手たちがしっかりと仕事をしてくれた。ベンチから出場したフレッシュな選手たちの活躍も素晴らしかった」と語った。

 特に、この試合で目立った若い選手の活躍について、「10番に入った若いクーパーにとっては非常に難しいタスクだったと思うが、リーダー陣が素晴らしいサポートを提供し、彼のプレッシャーを軽減させた。素晴らしいスタートになったと嬉しく思っている。カーティス(マクドナルド)も完全にコミットして素晴らしい仕事をしてくれた(後半19分にリースと入替で入り、トライも挙げた)。彼らのように、若い選手たちが初めてプレーの機会を得るのを見るのは大きな喜びである。ライアン・クロッティたち育成スタッフの尽力もあり、今年の育成プログラムからは素晴らしい選手が育っている」と語った。

 ゲームキャプテンを務めたウィル・ジョーダンはこの試合について、「ボールが滑りやすく簡単な状況ではなかったが、20〜30フェーズを重ねたトライが象徴しているように、粘り強く戦えたと思う。基本に忠実にタスクをこなせたことが良かった。バックスからの眺めは最高でしたし、フィールド中央でのフレッチャー(・ニューウェル/3番)のブレイクなど、フォワード陣が持ち前の身体能力を活かして前進する姿を見ることができた。後半に彼らを起点に突破を図ったことが勝因だった」と語った。

クルセイダーズの会見。左がキャプテンのFB ウィル・ジョーダン、右がNTTコム(現・浦安D-Rocks)なども指揮したHCのロブ・ペニー


 敗れたモアナパシフィカのタナ・ウマンガ ヘッドコーチは、「敗戦はどれも痛い。特にホームでの試合だったし、前半はかなり拮抗して常に自分たちのゲームができていただけに悔しい。ただ、ハーフタイム以降はズルズルと引き離されてしまった。エラーが多く、ペナルティを与えてしまったことが大きい。ファンがスタジアムに足を運んで選手を鼓舞してくれたのに、求めている結果を出せなかったことが残念」と語る。

 これで5連敗となり、苦しい時間が続く。それでも、「私たちはまだチャンスがあると信じているし、トップチームとも張り合えることは証明してきた。ただ、その時間が十分ではない。試合は80分間。敵陣でのプレー時間やボールの支配時間など、自分たちでコントロールできるはずの要素をまだうまくコントロールし切れていない。次の試合に向けて、24〜48時間でしっかり修正し、金曜日(3月28日のハイランダーズ戦)に備えなければならない」と述べた。

 キャプテンのミラクル・ファイランギも「モメンタムが失われていくのは100パーセント感じていました。ハーフタイムにも話した通り、最初の40分間は良かったが、後半はとにかくエナジーを高める必要があった。ただ、最後まで戦い抜いた選手たちを称えたい。来週に向けて良いパフォーマンスを出せると100パーセント信じています。まずは私たちリーダー陣から、今夜からこの悔しさを糧にして取り組みたい。40分間だけでなく80分間通してハードワークし続ける、それは私たちリーダー陣から始まることです」と前を向いた。

決してたくさんの観客が詰めかけたとは言えないが、サモアやトンガにルーツを持つアイランダー系の人々を中心に、勝っても負けても熱狂的な応援が響く


 またウマンガHCは原田衛について、「マモルはとてもエネルギッシュ。後半のチームには、まさにそれが必要だと感じています。彼は事前に話し合ったプランをすべて体現してくれた。非常に正確なプレーをしてくれるし、周りの選手にも彼のエナジーを波及させてくれる。チームに合流してからの期間を考えても、とても良くやっていると思う」と高い評価を口にした。

 モアナ・パシフィカは5連敗中の非常に難しい時間が続く。次戦まで準備期間はわずかしかないが、原田の注入したエナジーやキャプテンのリーダーシップを起爆剤に、一丸となって連敗脱出を狙う。

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