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海のすぐ横。小倉駅から歩いても近い素敵なスタジアムに、今年も多くの女子ラグビー選手が集った。
3月20日、21日、北洋建設 presents “Nanairo CUP 北九州” 『KYUSHU WOMEN’S SEVENS 2026』がミクニワールドスタジアム北九州で開催された。
九州女子7人制ラグビー大会は今回が5回目。海外チームの参戦は今年で3回目。セブンズシーズンの幕開けとなる大会には、年々実力を高める地元のナナイロプリズム福岡(前回優勝/以下、ナナイロ)を筆頭に、ながとブルーエンジェルス(前々回優勝/以下、NBA)やYOKOHAMA TKM(2025年度15人制全国女子選手権優勝)など全国から強豪チームも参加した。
今回はサクラセブンズ予備軍の女子SDS/シニアアカデミー(以下、SDS)、初出場の早大女子部やアジアンバーバリアンズ(8か国の選手で構成)など、全12チームが出場した。
4組に分かれてプール戦を戦った初日は、それぞれの組の実力を秘めたチームがそれぞれ2勝を挙げた。その結果、NBA、自衛隊体育学校PTS、ナナイロ、SDSが2日目の1-4位決定戦へ進んだ。

ノックアウト形式の順位決定戦、最上位グループの頂点に立ったのはSDSだ。決勝では地元ファンの『ナナイロ連覇』の期待が膨らむ中で試合序盤を制し、19-17の接戦を勝ち切った。
地元の推しチームが今年も笑うことへの期待も大きく、結果については残念に思ったファンも多かっただろうが、試合途中からのナナイロの追い上げもあり、スタンドは最後まで盛り上がった。
SDSの勝因は先にパンチを出せたことだ。先制点はキックオフから38秒後だった。
キックレシーブから自陣でボールを動かした後、松村美咲主将がラインブレイク。長い距離を走り切り、コンバージョンキックも自分で決める。7-0とリードした。
SDSは3分過ぎに追加点を挙げた。スローフォワードによって敵陣でスクラムを得て、積極的に攻める。ナナイロの反則を誘い、最後はサバナ・ボッドマンがインゴールに入った。
14-0で迎えた5分過ぎにもボッドマンは右隅にトライ。SDSは19-0と差を広げた。

静まり返るスタジアム。しかしナナイロは勝利を諦めていなかった。
前半終了間際、中盤で全員が走り、ボールを繋いだ。ブザーが鳴る中で中村知春が左サイドを突破し、走り切る。差を少し詰めてハーフタイムに入った。
後半が始まる時、SDSの得点は19でナナイロは5。14点差は、2分ちょっと経って7となった。
ナナイロは中盤で得たスクラムを押し、できたギャップをピッチに出たばかりのSH平田恋菜が走る。トライラインを越えて点差は7となった。
そして、その2分後にはスクラムターンオーバーからSH平田が再び走って5点を加点。ただ、残り3分弱で2点差をひっくり返すことはできなかった。
結果的に19-17でSDSが優勝した。


キャプテンについて「中学時代の東京都選抜で命じられて以来かな」と話す松村は「準備期間は短かったけど、その中で、一人ひとりがしっかり強みを出す、強気に勝負する、そして、それを全員でサポートすることを大事にしようと言ってプレーしました」と話した。
徹底してきた意識を試合で体現し、勝利に結びつけられたことを喜んだ。
松村主将自身、セブンズは2024年の太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ以来のプレー。また、SDSなどセブンズ日本代表につながる活動は「高校3年生時が最後のはず(この4月から早大4年生)。そこから15人制に切り替えたので」と話した(高3時の4月にワールドシリーズに出場している)。
2025年のワールドカップ出場を目指し、近年は15人制にフォーカスしてプレーしてきた。
しかしいま、2028年のロサンゼルス五輪を目指して自身の活動をセブンズに移行していくつもりのようだ。
「もともとセブンズが好きで、やりたい、という気持ちもあります。(15人制の)ワールドカップも終わりました。環境をセブンズに変えることで、自分の強みをもっと伸ばしたり、いま弱い部分をなくす。選手として成長できるんじゃないかなと考え、チャレンジしたいと思っています」
「もっとタフになりたい」と話した。
「走り続けることや、プレーしたあとに次のアクションを起こしたり、もうひとつワークする。もっとスピードも上げたいです。フットワークも高めたい。セブンズにチャレンジしたら、そこをもっと磨けるかな、と思っています」

大会の準備期間、大会中と、今回のチームを中心的に指導したのは小出深冬コーチだった。
2025年の活動を最後に現役引退し、指導の場に足を踏み入れた同コーチにとって、自分が練習や対外試合で指揮を執ったのは今回が初めて。その状況でチームが最後まで勝ち切ったことに笑顔を見せた。
「指導する難しさをあらためて感じた期間でしたが、いろいろ考えたからこそ残った結果だと思うと良かった。充実を感じます。選手たちの成長があっての優勝、そういうものを見ることができて、以前とは違う喜びの感覚がありますね」
選手とともに自分も成長していきたいし、松村主将のキャプテンシーも見ることができていい時間を過ごせた、と相好を崩した。
僅かに連覇に届かなかったナナイロも、新しいキャプテンが率いたチームだった。
今季チームの先頭に立つのは大橋聖香。この春から久留米大の4年生になる21歳は、地元での優勝を逃して悔しい思いをしながらも、最後まで粘ったチームの中で動き回り、試合後は穏やかな表情をしていた。
大橋は、キャプテンは中学時代に石川撫子(クラブ)に任されて以来だ。中村知春や吉野舞祐ら、チームを牽引してきた先輩たちの、自分の見てきた背中や姿勢を参考に、自分なりのキャプテンシーを出していこうと考えている。

大きくリードを許した後、必死で追いかけるも届かなかった決勝を振り返り、「今後自分たちが目指さなきゃいけない、やらなきゃいけないってところがすごく明確に出た試合でした」と総括した。
「自分たちのラグビーを最初からする、ということを太陽生命(ウィメンズセブンズシリーズ)に向けて、もっとギアを上げてやっていかないといけないと思います」
「チームとして繋がりを大事にしよう、我慢強く走り切ろうと言ってきました。そういうところは最後の方で見えたかもしれませんが、一人ひとりがはじめから強い気持ちを出していかないと」
特に立ち上がりの時間帯、相手の方が気持ちが強かったと悔やんだ。
ただ、準決勝でNBAに快勝した集中力は賞賛に値する。決勝も、やられっぱなしにはならなかった。
「2本、3本(と決勝で先にトライを)取られた時、チームは(雰囲気が)ダウンしているとすごく分かりました。でも私が、熱い気持ちを伝えようと思って、まだまだ行ける、って言ったら、知春さんやみんなからも、ナナイロこっからだよ、っていう前向きな声が出ていた。その気持ちが終盤につながったと思います」
チームのそんな熱さは、観戦者にきっと伝わった。試合終了時には、両チームに大きな声援が送られた。
2日目は好ゲームが相次いだ。その大会を締めくくるに相応しい、エキサイティングな14分。そして、年々規模は大きく、レベルは高くなっていく大会を楽しみにしているファンは確実に増えている。
