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オークランド(ニュージーランド)のイーデンパークにて、スーパーラグビー・パシフィックのブルーズ×モアナ・パシフィカが開催された(3月15日)。
前週に宿敵クルセイダーズに見事な勝利を収めたブルーズは、その勢いのまま43-7でモアナ・パシフィカを一蹴。チームが正しい方向へ進んでいることを証明した。


試合は序盤からホームのブルーズがポゼッションの優位性を活かして主導権を握る。前半4分、SHのサム・ノックが近距離から飛び込み先制トライを挙げた。
その後、ノックはHIA(ヘッドインジャリーアセスメント)により無念の交代となったが、代わって入ったタウファ・フナキが見事にその穴を埋める。フナキがディフェンスラインの裏へ転がした絶妙なキックをAJ・ラムがチェイスし、見事な追加点を奪った。
対するモアナ・パシフィカも、持ち前の力強いフィジカルでブルーズの中央のディフェンスに立ち向かった。
しかし前半17分、昨季まで日野レッドドルフィンズに所属したオーガスティン・プル(9番)がノックに対する不用意なハイタックルで退場(イエローカード提示後の検証により20分レッドカードへ)となる。数的不利に陥るアクシデントが発生した。
それでもモアナ・パシフィカは崩れず、ひとり少ない状況下でHOのミレニアム・サネリヴィが力強いトライを奪い、反撃に出る。
この時間帯、ラインアウトでのオフサイドやスクラムでのオブストラクションのペナルティにより2つのトライが取り消される不運もあったが、その圧力は十分に脅威だった。
ブルーズはPRオファ・トゥウンガファシがすぐにトライを奪い返したものの、SOボーデン・バレットが3本のコンバージョンキックをすべて外したこともあり、前半は15-7というブルーズの8点リードで折り返した。

ハーフタイム、ブルーズのヴァーン・コッターHCから「基礎に立ち返れ」、「ダイレクトに攻めろ」という明確な指示が飛ぶ。そのメッセージを受けたブルーズは、後半に入ると完全に試合を支配した。
開始早々、バレットが絶妙な50:22キックを決めて敵陣深くに入る。相手を釘付けにすると、続くラインアウトからフェーズを重ねて難なくインゴールを割った。
後半はブルーズがフェーズを重ねて危なげなく試合をコントロールし、無失点のまま得点を積み重ねていく。
モアナ・パシフィカは、終盤にも FBウィリアム・ハヴィリがアントン・セグナーへのハイタックルでイエローカードを受けるなどズルズルとスコアを離されていった。
今季からモアナ・パシフィカに加わっている原田(HO)は、この試合では背番号16。後半25分から登場した。
ファーストプレーはスクラムでペナルティを獲得、その後のラインアウトではクリーンキャッチはならなかったが、マイボールキープとなるボールをスローした。
ラックへの献身的なオーバーや、ターンオーバーからブルーズが独走トライを決める時も、中央付近からトライラインまで追いかけるなど、献身的な動きが目立った。
試合後ブルーズのキャプテン、FLダルトン・パパリィイは、「スコアボードは、この試合がいかに激しいフィジカルバトルだったかを反映していない。モアナは力強いアスリートの集まりで、常に激しい大変な試合のようになる。前半はまさにそうだった。後半はコーチ陣からダイレクトにいけ、という明確なメッセージがあった。それを遂行できた」と振り返った。

一方モアナ・パシフィカのヘッドコーチ、タナ・ウマンガは、以下のようなコメントと問題提起を残した。
「後半の立ち上がりについては、ハーフタイムに『良いスタートを切ろう』と意思統一していたにもかかわらず、キックオフ直後にペナルティを犯してしまった。あれで完全に勢いを削がれ、ポジティブな流れを引き戻すことができなくなった。規律の欠如が勝敗に直結したと言わざるを得ない」
さらに、「皮肉なことに、レッドカードで14人になってからの(時間帯の)方が、我々が本来持っているプレッシャーをかける力や、激しいエナジーを示すことができた」と続けた。
「なぜ最初からあのテンションでプレーできなかったのかは、今後の大きな課題だ」
前半終了間際に2つのトライが取り消された判定についても話した。
「レフリーの判断を受け入れるしかない。一つはラインアウトで10メートル以内に入り込んでいたオフサイド、もう一つは相手(パパリィイ)をホールドしていたという判定だった」
悔しさを滲ませるコメントだった。
その上で、レフリングやラグビーの潮流にも苦言を呈した。
「今のラグビー界は、トライを取り消すための理由を必死に探しているのではないだろうか。スクラムやラインアウトの中で生じる細かな反則は試合中、常に起きている。しかし、それが厳格に見直されるのはトライが生まれた瞬間だけだ」
「我々が提供したいラグビーとは何か。北半球のシックスネーションズを見れば、どのチームもトライを奪い合い、ファンはそれに熱狂している。ファンはトライを見たがっているのだ」と続けた。

「いまのスポーツビジネスの市場は非常にタフだ。NRL(13人制のプロリーグ)のウォリアーズが、毎週末スタジアムを満員にし、ファンを熱狂させている事実を見れば明らかだろう。ニュージーランドにおいて、我々ラグビー(15人制)関係者は決してあぐらをかいていてはいけない。自分たちが提供するプロダクトが、本当に人々が望むものになっているかを見つめ直す必要がある。トライを取り消すルールを探すのではなく、ディフェンス側がよりハードワークして止める。そういう形であるべきだ」
同ヘッドコーチは、オールブラックスの新指揮官となったデイブ・レニー体制下での、コーチングスタッフ入りが噂されている。試合後の会見でも報道陣からそれについての質問が出た。
「オールブラックス側から連絡はあった」と認めながらも、「今後、話をしていくだろう」と答えるにとどめた。
現地の報道では、「アプローチを受けています。ここ数日、レニーとは何度か話をしており、現在そのプロセスを進めているところです。今後どうなるか見守りたいと思います」や、「常に自分自身に目標を設定し、最高のものの一部になりたい、最高の環境に関わりたいと思うものです。私の中で、オールブラックスは常に最高の存在です」というものもある。
「(オールブラックスは)私の心の一部を占めています。もしその機会を得られたら、オールブラックスのジャージーを可能な限り高みへと押し上げるためにベストを尽くします。私たちはオールブラックスが常にトップであることを望んでいるからです」など、コーチングスタッフ入りへの前向きなコメントも見られる。
今後に注目が集まっている。

原田は試合後に、「点差が開きつつある中で、少しでも点差を縮められればと思って試合に入りました。しかし点差はどんどん開いていき、難しい試合になってしまった。スクラムやラインアウトでプレッシャーをかけられればと思っていたが、モメンタムを失ってしまった」と話した。
また、「(前半にプルをレッドカードで失い)こういった1人少ない状況でどうやって戦っていくかを突き詰められず、一人ひとりが個人で何とかしようとしてしまった。それが結果として悪い方に向いてしまった」と、悔しさを滲ませていた。
一方で個人のパフォーマンスについては、「(ゲームフィットネスが思うように戻らない中で)今日は前回のハリケーンズ戦よりもしっかり走ることができ、動けていたと思う。もう少し向上させられれば」と、難しさを認めつつも一定の成果を語った。
今後については、「どれだけチームに貢献できるかだと思うので、出る、出ないに関わらず、チームに良い影響を与えられるように練習から頑張っていきたい」とチームマンらしいコメントを残した。
原田は今週末のホームでのクルセイダーズ戦でも16番でメンバー入りを果たした。出場すれば初のホームでの試合となる。
【プロフィール】
おおたけ・かずき 1996年愛知県名古屋市生まれ。愛知県立明和高校、早稲田GWRC、University of Washington Husky Rugby Club、Seattle Rugby Club(共にアメリカ)、Kenya Homeboyz、Kenya Wolves(共にケニア)、St. Albert(カナダ)等を経て、ニュージーランド・オークランド1部のラグビーリーグチームでプレー中。13人制ラグビー日本代表副将(現在キャップ6)。早稲田大学、University of Washingtonを経て、外資系戦略コンサルティングファームの東京オフィス、ケニアオフィスなどに勤務したのち、独立。