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パーフェクトでなくとも欲しいものは掴んだ。
「プラン通りにアタックできました。すべてが完璧ではありませんでしたが、局面ごとにボールを持ち、スキルを使えた」
東芝ブレイブルーパス東京のリッチー・モウンガは1月24日、東京・秩父宮ラグビー場で国内リーグワン1部の第6節に司令塔のスタンドオフとして先発フル出場。ラストワンプレーで逆転トライを決め、クボタスピアーズ船橋・東京ベイを24-20で下した。
2連覇を果たした前年度の決勝と同じカードで、シーズン5勝目をマークした。来日以来2季連続でMVPも獲得した身長176センチ、体重86キロの31歳は、控室でのメディカルチェックを経て囲み取材に応じた。
——まず、最後のトライについて。
「最初は外にスペースが空いていると思いましたが、(次第に)相手がそこに(防御網を)広げようとしていたので」
20-24で迎えた最終局面だった。
中盤からカウンターを仕掛けて複層的なアタックで敵陣ゴール前へ進み、最後は右大外に回すと見せかけ、直進。自慢のフットワークでトライラインを割った。
決勝点へのラストパスは、スクラムハーフの杉山優平が放った。
劇的な瞬間まで献身したフォワード陣を労いながら、殊勲のモウンガのことも笑って讃えた。
「目立ち過ぎです。しゃあないですけど」

背番号10はそれまでの間も、好判断、妙技を繰り返した。
いくつかの決定機を逃しながら12-3とリードの前半は、タックラーを引き寄せながらのパスでチャンスを量産した。
2度の勝ち越しを許した後半は、要所でのキックで光った。
12-17と追う立場だった30分頃には、ハーフ線付近右中間から右奥へ鋭い弾道を繰り出す。それを自ら追って向こうの処理を狂わせ、33分に17-17と同点にした。
そのエリアを足で狙う場面は、その6分ほど前にもあった。
意図があった。
「クボタさんは、(端側の後衛にあたる)ウイングを早めに上げて、(前衛の背後を守る)スクラムハーフも守備ラインへ入れる。目の前に並ぶ人数が多い分、ほんの少し後ろ側にスペースの見えるタイミングがある。そう把握していました。…バウンドが不運で、そのままタッチラインの外へ出てくれればよかったもののそうならなかった側面もありますが」
——あらためてこのゲームを振り返ってください。
「前半は攻めながらも得点には結びつけられませんでした。ただ、それも『ぎりぎりまで迫っている』という意味で相手にはプレッシャーになった。いいアタックができました。
後半は風下。ある程度ボールを持ってのプレーを覚悟し、自陣からでも攻めるプランを共有していました。キックのタイミングは、自分なりに探していました。明らかに裏側が空いている時はそちらへ転がしましたが。
ただ、ボールを持っていることはプラン通り。きっとそれを理解していたクボタさんは、すごくいいディフェンスをしていました。いい戦いでした。幸運にもキーとなるペナルティがあり、その際はきちんと敵陣に入れました」
——中盤以降にビハインドを背負いました。その時の心境は。
「目の前の瞬間、瞬間を勝ち取っていこう。それだけです。負けているからどうこう…ということ(感情)は、誰の目にも映っていませんでした。皆が『いけるぞ、いけるぞ』という表情をしていたのが、この試合における一番の収穫だったのかもしれません」
——ブレイブルーパスが集中していたわけは。
「1週間を通し、『先発とリザーブの全23名は、与えられた役割に沿って何かしらチームに貢献しよう』と言い続けてきました。それが形になった。プランを定め、それを遂行できた」
母国のニュージーランド代表として53キャップを持つ。今後は現在離れているナショナルチームに戻り、2027年のワールドカップオーストラリア大会で同代表を目指すつもりだ(※一部修正しました)。
国内組から代表を選ぶニュージーランドのレギュレーションに沿って、ブレイブルーパスは今季限りで退団する。

注目のラストシーズン。昨年12月14日の初戦では、自らのミスもあり埼玉パナソニックワイルドナイツに0-46で大敗した(東京・味の素スタジアム)。
もっともそれ以降は第2節から今回まで5戦続けて制し、スピアーズの開幕からの連勝を止めた。
手応えを語る。
「開幕節では大事な学びを与えられました。2連覇したからといって、普通にやっているだけでは勝利は得られない。主体的に、地に足をつけてやっていかなくてはいけません。きょうを含め、いまのフォーカスはきょうの自分よりも明日の自分がよりよくなることにあります。開幕で負けたことよりも、よりよく、よりよくという意識がメインのモチベーションになっています」
——ナンバーエイトのリーチマイケル主将とフランカーのシャノン・フリゼル選手は離脱中です。復帰を望みますか。
「戻ってきてもらうに越したことはありません。ただ、2人の代わりに出ている選手も活躍しています。チーム全体を見たら、彼らの不在で欠けるものがあると同時に、多くの選手がプレータイムを得て、よりよいラグビー選手となってチームに還元しているメリットもあります」
通訳を介して話しながら、手にしたスマートフォンで記者団を撮影するひとこまがあった。「Sorry」と微笑んだ。