logo
【熱血沸騰! 台灣橄欖球②】ファーストジャージーの重みと、広がる世界。関西大/名古屋大
決勝トーナメントには進めなかった関西大。台湾チームのレベルが高くなってきている。(撮影/松本かおり)
2026.01.14
CHECK IT OUT

【熱血沸騰! 台灣橄欖球②】ファーストジャージーの重みと、広がる世界。関西大/名古屋大

田村一博

 拓殖大(以下、拓大)が3連覇を果たした『YUAN-KUN CUP TAIPEI SEVENS 2025』(2025台北元坤盃國際大專七人制橄欖球邀請賽/12月27日、28日)には、同大学以外にも日本から出場した大学があった。

 台湾内外のアジア各地から16チームが参加した今大会(力のある8チームを公開組、残りの8校は一般組)。拓大と同じ公開組で戦ったのが関西大(以下、関大)だ。
 2025-26シーズンは関西大学Aリーグで5位(3勝4敗)の同チームは、今回が3回連続3回目の大会出場だった。

 初戦の中國文化大学戦に14-14と引き分けた関大は、國立臺灣體育運動大学に31-12と勝ち、臺北市立大学に14-17と敗れる。
 プールステージで思うような成績を残せず、決勝トーナメントには進めなかった。
 今大会でキャプテンを務めた檜下史康(ひのきした・ふみやす)は2日間の大会を振り返り、「自分たちでチャンスを潰したり、苦しい展開にしてしまった」と総括した。

関大は新チームの選手たちが参加。写真左上は今大会で主将を務めた檜下史康。(撮影/松本かおり)


 今大会には3回生6人、2回生と1回生が3人ずつの計12人で参加した。檜下は尾道高校出身の3回生。今季、FW第3列で3試合に出場し、安定したプレーをしたことで重要な任務を託された。
 来シーズン、チームのまとめ役となることを求められているのだろう。

 そんな期待を本人も感じている。檜下はトーナメントに進めなかったことについて、「(新チームになって)ファーストジャージーを最初に着るのは僕たちでした。それに泥をつけてしまったのが悔しい」と話した。
「今回出たミスとか、甘さ、悔しさをバネにして、(自分たちの最終学年は)春、秋に戦っていこうと思います」
 大会へ向けて3週間ほど準備してきたが、「その成果をすべては出し切れなかった」と悔やんだ。

 檜下にとって2年連続で経験した隣国の舞台は、辛いものとなった。しかし、ピッチの上ではほしいものを手に入れられなかったが、今回も貴重な時間を過ごせたと感じた。
 21年の人生の中で海外に出たのは、1年前と今回の台湾への遠征だけ。「異国の文化や食べ物、スタジアムの雰囲気など、これまで知らなかったことを体験できています」

大会初日の試合後に開かれた『選手之夜』での関大。大会主催者の杜元坤氏を中心に。(撮影/松本かおり)


 チームを指導する佐藤貴志監督も、選手たちの人間的な成長こそ、この大会への参加で得られる最大のメリットと考えている。

「毎年ご招待いただいているので、それに恥じないようにしっかり戦えるメンバーを選んだ」と言う同監督は、「(チームが)新しい代になる中で、リーダーシップをとってほしい選手たちです。その期待に応えてくれた選手もいれば、まだまだ変化し切れていない選手もいるように見えました」。
 そして、「ファーストジャージーを着て国際大会を経験することが殻を破るきっかけになったら、と思っています」と話し、非日常の2日間がもたらす成果に期待を込めた。

 この大会を「ラグビーだけではない人間的な成長が、プレーの成長にもつながると思います。とても意義がある」と語る佐藤監督は、「今回で3回目の参加です。台湾のチームのレベルも高くなってきていると感じています。みんなで強化しようとしていることが伝わってくるし、大会のクオリティ、ホスピタリティも年々高まっているように思います」。
 最後に、「会長(大会主催者の杜元坤氏)のおもてなしに感謝です」と締め括った。

チームの強み、走るスタイルを出した名古屋大。写真右は、杜元坤氏に記念品を渡す淺井惇平主将。(撮影/松本かおり)


 名古屋大は、関大が参加した『公開組』の下部にあたる『一般組』に参加した。こちらは2回目の台湾訪問。今回は大会初日に國立成功大学に10-5、韓國首爾大学(ソウル大)に19-14と連勝した後、2日目の國立政治大学戦には5-29と敗れた。決勝トーナメントには進めなかった。

 初日の戦いを終え、「1戦目はなかなか自分たちのボールがつながらずトライが少なかったのですが、2戦目は最後までパスをつなぐことができた」と話したのは淺井惇平(あさい・じゅんぺい)主将。「国際的な試合に呼んでいただけるのは光栄です。日本の(いくつもある大学の中から)代表として呼ばれています。ひたむきな姿勢を見せられたらいいな、と思います」と、チームを代表して感謝の気持ちと覚悟を口にした。

 淺井主将は今回が初めての大会参加だった。プロップだがよく走る。180センチ、102キロ。岡崎高校でラグビーを始め、工学部機械航空宇宙工学科に学ぶ。
 4年生を中心に組んだメンバーに、2年生と1年生を一人ずつ加えたチームは、持ち味である走るスタイルを積極的に見せた。

 名古屋大は東海学生リーグに所属していて2025年度シーズンはBリーグの3位だった。目標としていた1部チームとの入替戦には届かなかった。来季こそ目標を達成したい。大学院に進む主将もこの大会で同期たちとの1年を一旦締め括った後、あらためて前へ踏み出すつもりでいる。

『選手之夜』での名古屋大。今回が2回目の大会参加だった。(撮影/松本かおり)


 淺井主将はこの地に来て、「ラグビーをやっていてよかったな」とあらためて思った。国を超えた人とのつながりが広がっていくことを実感する場。「本当に貴重な経験です」と話す。
 初めて参加した前年に関係性が芽生えた台湾大学は夏に名古屋を訪れてくれた。2026年は自分たちが訪ねる番。「すぐに終わるのではなく、続いていく関係を築いていける」のが嬉しい。

 人生を豊かにしてくれる台北での時間を、参加した者たちは一生忘れないだろう。グラウンド、そして交流の時間に臨む各国の大学生たちは、いろんな表情を見せる。自分たちの当たり前と、同じアジアに暮らす同年代の当たり前は、一緒だったり、違ったり。それを実感するだけでも人は優しくなれる。

 寒波の襲来にスタンドには厚着の人が多かった今大会。でも、ピッチ上の熱気と選手たちの笑顔に惹きつけられて、試合を熱心に見つめている人たちが何人もいた。
 この大会が台北の地に根付くと、隣国の橄欖球(がんらんちゅう)熱も少しずつ大きくなっていきそう。

会場となった臺北田徑場(台北陸上競技場)には、中学生から60歳以上まで、多くのラグビー愛好家が訪れた。(撮影/松本かおり)


ALL ARTICLES
記事一覧はこちら