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【Just TALK】「きょうの走りをいい走りと言ってもらえるのであれば、僕もまだまだ成長しないといけない」。矢崎由高[早大3年]
積極的に動いてボールをもらい、再三ラインブレイクをした。(撮影/松本かおり)

【Just TALK】「きょうの走りをいい走りと言ってもらえるのであれば、僕もまだまだ成長しないといけない」。矢崎由高[早大3年]

向 風見也

 ラグビー日本代表9キャップ(代表戦出場数)の矢崎由高は、12月7日、東京・国立競技場で早大のフルバックとして、伝統の早明戦こと関東大学対抗戦Aの明大戦へ先発した。

 前半18分のトライシーンなどで好走を披露しながら、チームの度重なるミスが響いて19-25で惜敗。対抗戦の順位を8チーム中3位で終え、相手の優勝を見届けた。

——よい走りもありましたが、わずかに及びませんでした。

「あまりなかったと思うんですけど。きょうの走りをいい走りと言ってもらえるのであれば、僕もまだまだ成長しないといけないかなとは思います」

——10-10と同点だった後半2分、ご自身のトライが取り消されました。手前にいた味方が妨害したと見なされたためです。どう切り替えましたか。

「うーん…。どう切り替えたと聞かれましたが、切り替えるも何も、反則なので…という一言しかない。反則をした人たちが悪かったっていうことですね」

【写真左上】校歌斉唱。【写真左下】先制トライに続き、後半もインゴールにボールを持ち込むも(写真)オブストラクションと判定された。【写真右】プレーにも取材対応にも堂々とした態度で臨む。(撮影/松本かおり)


——早大としては、度重なるチャンスを逃したのが悔やまれます。

「接点で前に出られず、自分たちのテンポが作れなかったのが大きな要因です。単に、明治の圧力が勝っていた。自分たちがまだまだできる点です」

———攻撃ラインがオーバーラップを作り、勢いよく攻められそうな場面が多かったのですが…。

「エッジ(端側)のウィング、フルバックのところでのボールロストが多かった。そこでバックスとしてはもう1段階ギアを上げて、獲り切るなり、マイボールでもう1度いい展開に持っていくと意識しないといけないかなと」

——16-25と9点差を追う後半32分頃、中盤左から蹴ったハイパントを自ら追い、結果的に敵陣深い位置で攻撃権を得ました。35分にはペナルティゴールで19-25と差を詰め、逆転に迫りました。

「(高い弾道のキックは)自分でも準備していたプレー。というか、いまのラグビーのカラー的に、ハイパントが凄く大きな武器になる。ルール的にもエスコートのところ(蹴られた球を捕る味方を保護する動きが反則になる傾向)がある。空中は(球を追う側にとって)守られているところになるので、あそこのエリアで勝負するのは(自然)。明大もたくさん(同種のキックを)蹴ってきました。これから大学ラグビー全般で増えていくのかなと」

——ノーサイド後のグラウンド上では、関谷惇大レフリーと話し込む場面もありました。

「たわいない会話です。関谷さんは顔見知りというか、面識のある方なので」

空中戦でも体を張った。(撮影/松本かおり)


 身長180センチ、体重86キロの21歳は、11月中旬までの約1か月間、ジャパンの国内外キャンペーンに帯同した。オーストラリア代表、南アフリカ代表、アイルランド代表、ウェールズ代表に4連敗も、強みのランを披露するなど手応えを掴んだ。

 対抗戦のシーズン中だったが、大田尾竜彦監督は悩んだ末にゴーサインを出した。

 今回の早明戦が終わると、矢崎自らがその件に触れた。

 敗軍の殊勲者としてスピーチを求められ、こう述べた。

「僕を日本代表に送り出してくれたことを、正しかったと証明するために、優勝したいと思います」

 そして着替えを済ませ、取材エリアに出た時にも話した。

———発言の意図は。

「そのままじゃないですか」

——いつも思っていることですか。

「そんな、四六時中ラグビーのことを考えていないので…」

——その時に思ったことを言葉にした。

「そうですね。もちろん優勝が目標なので、俺たちはそれに向かってやるだけ。それ以上でもそれ以下でもないかなと」

 大田尾監督は頷く。

「代表の桜のジャージーを着ることで1人の選手としての責任感が増した。(件のスピーチは)その責任感をいまいるところで還元するという言葉だったのかな、と。代表での約1か月を通し心身ともに成長して帰ってきたので、いまの時点では行かせてよかったと思っています」

 通算17度目の日本一をかけた大学選手権へは、12月14日の3回戦から参戦する。東京・秩父宮ラグビー場で、関東大学リーグ戦1部・3位の関東学院大と激突する。

早明戦ではモスト・インプレッシブ・プレーヤーに選ばれ、ファンの前でマイクを握った。(撮影/松本かおり)


 矢崎はこうだ。

「もちろん(早明戦を落として)悔しい気持ちは大きくあります。でも、シーズンが終わったわけでもないですし、(大学)選手権は苦しい山ですけど、優勝への道がなくなったってわけじゃないので。きょうの反省はきょういっぱいして、次に繋げないと…という思いでいました」

——その通り、選手権では昨季より「苦しい山」に入ります。3回戦から登場のため対抗戦の上位2チームなどよりも1試合多く組まれています。

「勝つだけ。目の前の1戦、1戦を大事にしていくだけじゃないですかね」

——来年は代表戦も増えるなど、矢崎選手の周りの状況が変わるかもしれません。そんななか、今年の早明戦へのモチベーションは。

「本当に重要な、目の前の勝たなければいけない一戦という心意気で臨んでいます。それは早明戦、早慶戦、帝京大戦に限らず、シーズンを通してそうです。(公式で3万9084人が集まったこの日のように)40000人弱のお客さんが集まる試合はそうそうないですけど、だからといってそれに思い入れ過ぎず、いつも通りやろうと思っていました」







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