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【日本代表欧州4連戦を追っかける/DIARY⑮】ジョージア戦の23人発表。SHは3戦連続で齋藤直人。
3戦連続で9番を背負い、チームをコントロールする齋藤直人。練習中も周囲を引っ張る。(撮影/松本かおり)
2025.11.21
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【日本代表欧州4連戦を追っかける/DIARY⑮】ジョージア戦の23人発表。SHは3戦連続で齋藤直人。

田村一博

 トビリシの街の中でラグビーの匂いを感じることはほぼない。しかし調べてみると、ジョージアでラグビーは人気スポーツのひとつだ。
 ホテルのテレビでもラグビーチャンネルが見られる。いろんな試合をジョージア語で放送している。

 トビリシ市民への以前のアンケート結果を見ると、球技ではサッカーの次にラグビーは人気があり、そんなに大きな差はない。次に来るのはバスケットボールのようだ。
 世界的に強い選手がいる、レスリング(チダオバ=ジョージアに伝わるレスリング)や重量挙げ、柔道も人気がある。

 11月19日も日本代表はトレーニング。郊外にあるジョージアラグビーの活動拠点へ向かった。
 前日はバスで行った。降車場所からスタジアムまでの治安が悪そうだったので、今回は電車+徒歩で向かった。

【写真左上と、その右】深ーいトビリシの地下鉄と、ホールのようなプラットホーム。【写真右上】地下道の入り口では古本が売られている。【写真左下】人であふれるバス停。【写真下中】お気に入りになったオジャクリ。【写真右下】トビリシ市内には大型犬の野良犬がたくさんうろうろ。が、おとなしい。


 市街地の電車の駅は地下にあり、プラットホームはとても深いところにある。一度行ったことがあるモスクワもそうだった。東京で言うと大江戸線の駅よりはるかに深い。そして、エスカレーターの動きが速い。

 あまりに深いので、エスカレータ―の昇り側で歩く人はいない。よって、右に寄るとか左に寄るとか、そういうものもない(下りは歩く人もいた。その場合、左側を降りていた)。
 運賃はどこまで乗っても1.5ラリ(約90円/クレジットカードのタッチ決済可)だ。

 バスだとGoogleマップを頼りに、降車地が近づいてきたらボタンを押して降りるが、電車は地下深くを走っているのでスマホの電波が届かない。なのでマップは働かず、降りる駅までの数を覚えたり、英語での車内アナウンスをなんとか聞き取るしかない。

 しかし、走行中は車体が上下に揺れ、窓が開いているところもあるので車内はガタンゴトンと大音量。会話もアナウンスもかき消されるので大変だ。口喧嘩を始めた酔っ払いも、怒りの声を相手にぶつけるのが大変そうだった。

パシフィックネーションズカップの初戦、カナダ戦から8戦連続で7番を背負う下川甲嗣。(撮影/松本かおり)
CTB池田悠希(左)と、LO、バックローでプレーするジャック・コーネルセン。(撮影/松本かおり)


 この日も日本代表は、夕方に2時間ほど練習。長かった遠征のラストゲーム、ジョージア代表戦前におこなう最後の本格的な練習だった。オフの日を経て、翌日にキャプテンズラン。11月22日のテストマッチに挑む。

 練習を見ていると、ジョージア戦に出場しそうなメンバーが見えてくる。その中のひとり、CTB池田悠希に話を聞く。出場が叶ったなら「いちばんは自分の強みであるボールキャリーでチームに勢いを与えたい。インパクトを与えるプレーをする」と話した。

 昨年も日本代表活動に参加。秋の欧州ツアーのメンバーにも選ばれたが、出場機会に恵まれなかった。初キャップは、今年9月20日におこなわれたパシフィックネーションズカップ決勝のフィジー戦まで待たなければいけなかった。

 前半に一度HIAの代替選手として10分間ピッチに立った後、後半8分から入替でついに出場機会を得た。
 迷いなくタテに切れ込むランニングで、効果的に前へ。印象に残るパフォーマンスを見せた。

 その試合のことを、「試合を外から見ていて、フィジーのディフェンスには走り込むプレーが有効だなと感じていました。自分の強みを発揮できると思い、ゲームに入りました。思い描いていたプレーができて良かった」と回想する。

 長く日本代表の中に身を置いて、試合に出られない間も成長した自分がいると感じている。
「チームが一貫してテーマとして掲げているエフォート(プレーの連続性)を強く意識するようになりました。それを代表活動中だけでなく、リーグワンでも意識して、しんどい時にもしっかり走ることを繰り返していることが成長につながっていると思います」

昨年の活動で一度同じ部屋になってから、矢崎由高は仲良し。「僕が大学生の頃のことを考えると、30歳に、あれだけグイグイいけないですよ。まさにZ世代!」。矢崎が帰国後も、ちょくちょく連絡を取っている。(撮影/松本かおり)


 強さには自信があるけれど、インターナショナルレベルでは、いいボディーポジションでプレーすることが大事と気づいている。
「パワーがある相手だと、パッシブな(受け身の状態の)キャリーになると、抱え込まれたり、返されたり、タッチに出されたりすることがある。なので、自分のハイトでキャリーできない時や、いい状況でキャリーできない時にははやく判断し、低くならないといけない。そうしないとターンオーバーされる」と対応力も高める。

 30歳。しかし、キャップを重ねるキャリアは始まったばかり、代表活動参加も去年から。「若手と同じようにチャレンジャーの気持ちでいます」と前向き。CTB陣のレベルの高い争いを、「12も13もできることと、強さを武器に勝負したい」と話す。

 このツアーが始まった前半はコンディションが万全でなく、別メニューでの練習が続いていた。
「そこから復帰できて、いまみんなと一緒にラグビーをやれていることが楽しくて。いろんな思いがあるので、それを試合で出せたら」

 待つことの方が多い分、チャンスが巡ってきたときに湧く「やってやろう」の気持ちは大きい。
 そのエナジーで、仲間たちと一緒に勝利の時を迎えたい。

質問に答える時も淡々と。どんな時も一貫性があるジャック・コーネルセン。(撮影/松本かおり)


 10月25日のオーストラリア代表戦から、この秋の試合にすべて出場し、途中出場のアイルランド戦以外はすべて80分プレーしているジャック・コーネルセンは、練習でも安定感のある動きを見せ、トレーニングも「ツアーは長かったけどコンディションはいい」と、淡々と自分の状況を口にした。

 勝利から遠ざかっているチームについて、その流れを断ち切るには「一人ひとりの選手が、80分、自分のスタイルで、きちんとパフォーマンスを出し続けることができれば大丈夫」とした。
 あなたのように、一貫性のあるプレーをし続けることは難しいんですよ。
「僕は準備を万全にしているだけ」と、ブレないパフォーマンスの秘密をさらりと言った。

 現体制の日本代表には、今季になって参加した。「速いラグビーには最初は慣れなかったけど、いまは楽しんでやれているし、勉強になっています」と話す。
 若い選手たちも多いいま、「(自分自身も)先輩になって役目も変わってきましたが、まずは自分のラグビーをすることが一番大事と思ってプレーしています」。

 2027年のワールドカップは、母国・オーストラリアでの開催。その話を振ると、「2年後を目標にするには遠すぎます。1試合1試合やっていくだけ。その結果参加できるのであれば、ぜひ。幸せなことです」。

 ジョージア戦へ向け、「相手は確かにフィジカルは強い。しかし、そこは、ツアーを通して日本代表がフォーカスを当ててきたところ。蓄積してきたものを出し切れるようにしたい」とシンプルに答えた。

 11月20日にはジョージア戦のメンバーが発表され、現地の夜には、エディー・ジョーンズ ヘッドコーチとワーナー・ディアンズ主将が出席しての記者会見が開かれた。

現地時間の11月20日の夜にトビリシ市内のホテルでおこなわれたメンバー発表記者会見。レストランの奥のスペースでおこなわれ、遠くからは誰かの誕生日を祝う歌声も聞こえてきた。(撮影/松本かおり)


 ジョーンズHCはジョージア戦について「大事な一戦」とし、ツアーを「トップ国と試合を重ねられた非常にいいものになった」と話した。
「ジョージアは日本より(ワールドランキングが)少し上のチーム。その相手に対して、前回の試合後、チームから離脱する選手が何人か出ましたが、この1週間、いい準備ができました。フィジカルで速い展開の試合になるでしょう。我々は最初から攻めていきたい。タフで、フォワード主体に攻めてくる相手。それに対しての覚悟も準備もできています」

 HCも認めるように、試合を重ねるごとにチームから離脱する選手が出ている。結果、メンバーにはキャップ数も経験も少ない選手たちが何人もいる。
「(控えにいた)次の選手が準備をし、仕事をする、という考え方でチームを運営しています。彼らにはテストマッチで戦えるところを証明してほしい。高いエナジーと迷いのないプレーを期待しています」

 3戦連続で9番を背負う齋藤直人に関しては、「(トゥールーズから合流して)すぐにチームにとけ込んで、キャプテンのワーナーと一緒にリーダーとしてやってくれています。オフフィールドでも落ち着いてリードしてくれていて、細かいプレーもうまくできる」。
 これまで同様、「クイックボールを生かしてプレーしてほしい」と期待を寄せた。

 同HCはウェールズ戦を振り返り、「大事な局面にチームとして対応できなかった。(接戦を勝ち切るには)経験が必要。次の試合で(前戦と)同じように(最終盤)2点差で勝っていて、ラインアウト、もしくはボールを持っている場面になったら、しっかりとしたゲームマネジメントをすることが大事。経験したことを生かし、次はいい対応をしてくれると期待しています」。

 そして、「今週の試合でも大事な局面があるでしょうし、その時、ジョージアは正面からぶち破ってくるでしょう。それにしっかりマッチアップする必要がある」としながらも、「大きなフォワードを避けるために、テンポのいいアタッキングラグビーをやりたい」と言った。

 ディアンズ主将は、「夏のウェールズ戦では簡単なトライを許していましたが、パシフィックネーションズカップでひとつずつ成長し、オーストラリア代表戦をはじめ、トライラインに近いレッドゾーンの戦い方は成長しています。フィジカルの強いジョージアに対しても、自分たちのフィジカルの強さを出して戦わないといけない」と真っ向勝負も辞さない構えを見せた。

「ジョージアがやってくるスクラム、ラインアウトからのモールをフォワードとして修正する練習をしてきました。ウェールズ戦を見た相手はそこで戦ってくると思うので、それを絶対に止めないといけない」。

 キャプテンは、フィニッシャーに名を連ねて初キャップを狙う山本秀について、「すごくタフな選手。ハードにボールキャリーして、タックルもするハードワーカー。どんなプレーでも100パーセント出すので練習で(相手にすると)大変」と、体をぶつけ合ってきた体感を紹介した。

 ジョーンズHCは、「若い日本人のロックを育成したいので、山本や伊藤鐘平をスコッドに入れています。彼らは、高いレベルに適応してくれています。インターナショナルレベルで考えると身長は高くないが、バックローもできる。これ以上外国人選手にばかり頼っていてはいけないと思っています。日本人ロックの成長がチームの発展にとって非常に大事になってくると思います」と話した。

 キックオフは11月22日の現地時間16時。総力戦で勝利をつかみ、いい形でツアーを締め括りたい。

初キャップ獲得なるか。ハードワーカーの山本秀。(撮影/松本かおり)

【2025年11月22日 vsジョージア/日本代表メンバー】
①小林賢太(東京サントリーサンゴリアス/早大/181、113/26/8)
②佐藤健次(埼玉パナソニックワイルドナイツ/早大/177、108/22/8)
③竹内柊平(東京サントリーサンゴリアス/九州共立大/183、115/27/23)
④エピネリ・ウルイヴァイティ(三菱重工相模原ダイナボアーズ/ラトゥ カダヴレヴスクール, FIJ/196、122/29/10)
⑤ワーナー・ディアンズ◎(東芝ブレイブルーパス東京/流経大柏/201、117/23/31)
⑥タイラー・ポール(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/ネルソン・マンデラ大/195、111/30/3)
⑦下川甲嗣(東京サントリーサンゴリアス/早大/188、105/26/22)
⑧ジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ/クインズランド大/195、110/31/28)
⑨齋藤直人(スタッド・トゥールーザン, FRA/早大/165、73/28/27)
⑩李 承信○(コベルコ神戸スティーラーズ/大阪朝高/176、86/24/28)
⑪長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ/早大/179、90/25/25)
⑫チャーリー・ローレンス(三菱重工相模原ダイナボアーズ/ハミルトンボーイズ高/170、89/27/8)
⑬ディラン・ライリー○(埼玉パナソニックワイルドナイツ/ボンド大/187、102/28/37)
⑭植田和磨(コベルコ神戸スティーラーズ/近大/177、87/22/1)
⑮サム・グリーン(静岡ブルーレヴズ/ブリスベングラマー高/178、85/31/5)

⑯平生翔大(東京サントリーサンゴリアス/関西学大/174、103/23/2)
⑰古畑翔(埼玉パナソニックワイルドナイツ/大東大/185、118/29/1)
⑱為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/明大/180、108/24/19)
⑲ハリー・ホッキングス(東京サントリーサンゴリアス/クインズランド大/208、124/27/1)
⑳山本 秀(リコーブラックラムズ東京/近大/190、96/26/-)
㉑福田健太(東京サントリーサンゴリアス/明大/173、83/28/7)
㉒小村真也(トヨタヴェルヴリッツ/帝京大/180、92/23/2)
㉓池田悠希(リコーブラックラムズ東京/東海大/187、100/30/1)

※カッコ内は所属チーム、出身校、身長・体重、年齢、キャップ数の順。◎はゲームキャプテン、○はゲームバイスキャプテン





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