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【Just TALK】「帝京大戦に出たい。自分のディフェンスで勝ちたい」。大川虎拓郎[明大3年]
おおかわ・こたろう。小1のときにブランビーヤングラガーズ(福岡)でラグビーを始める。JAPAN XV、U20代表、高校代表。(撮影/松本かおり)

【Just TALK】「帝京大戦に出たい。自分のディフェンスで勝ちたい」。大川虎拓郎[明大3年]

向 風見也

 明大ラグビー部3年の大川虎拓郎は、苦労してきた。

 10月26日、栃木・足利ガスグラウンド。加盟する関東大学対抗戦Aの第4戦で今季2度目の先発フル出場を果たした。フランカーとして突進、スティールで存在感を示し、立大を76-7で下して3勝目を挙げた。

「調子がいいのをコーチ陣が認めてくれているのかな…と、自分が思っているだけですけど、それが結果に現れているのですごく嬉しいです。結構、走れてもいましたし、コンタクトのところでも前に出られた。(対戦校の)レベルが上がってもそれを出していけるようにやっていこうと思います」

 身長186センチ、体重104キロのフォワード第3列は、2022年度に東福岡高の主将として6大会ぶり7度目の全国大会優勝を達成。高校日本代表でも船頭役を担った。

 明大では1年目の春から1軍入りも、秋以降の出番はなかった。さらに2年目の対抗戦でも、スターターとリザーブで計2回ずつのプレーに終わった。

——その間は何がありましたか。

「怪我とか、いろいろなことが重なって。今年もまだ全然ラグビーができてないです。そのなかでもできることを見つけ、試合に出られるように。学年が上がっていくにつれて視野も広がってきているのかなと感じます」

今季は10月11日の日体大戦と10月26日の立教大戦に先発、フル出場。(撮影/松本かおり)


——直近での競技復帰はいつでしたか。

「大学ジュニア選手権(Aチーム公式戦への出場機会が限られている選手たちの大会)の帝京大戦の前の週からです(9月下旬から10月初頭)。チームに合流して随分と経っています」

 ここでの「いろいろ」のひとつは、卒業までのプロセスである。

 近年の大学は、スポーツ推薦を利用した体育会系部員の講義への出席を以前以上に強く求める。

 明大で指導歴のある関係者もこう述べたことがある。

「昔はラグビー部に理解のある卒業生の先生が多かったが、いまはいろんなところから教授が来るため状況は違う」

 昨年は20歳以下(U20)日本代表の活動に、明大から多くの現3年生(当時2年生)が招集された。

 U20日本代表は国際大会に参加した。選ばれた面々の中には、寮からの登校が困難になった選手もいただろう。

 経済学部の竹之下仁吾は順調に単位を取得し、今夏は正代表の活動にも参加した。その他のメンバーはどうだったのか。

 法学部の大川は正直に述べる。

「(2年目の前期は)全然、授業が取れていなくて。明治はそこもしっかりしないといけなかったのですが、そこを、ちょっと、怠ってしまって…。それを2年生の後期、3年生の前期で取り返しました」

 感じたのは、自己管理の重要性だった。

「そこの部分(学業)を全てしっかりしないと、試合はできない。東福岡の頃からそうでした。しっかり思い出しながらやっています」

——ご自身に反省点があったにせよ、ラグビー以外のことでラグビーにブレーキがかかった現実をどうとらえましたか。

「(今夏までの約1年間は)1~5限が入っていて、朝早くから夜遅くまで授業…という日もありました。水、木、金はずっとそうでした。そこは、試合に向けて(練習の)強度が上がっていくタイミングでもありました。それも(早朝からトレーニングがあるため)早起き…。ずっと続けていた自主ウェイト、身体のケア、睡眠時間が削られた時もあり、しんどかったです」

——国内トップ級の学生がひしめく明大での定位置争いにおいて、それはタフな条件ですね。その道のりを乗り越えたいま、何を思いますか。

 自らの競技生活に紐づけて答えた。

高校時代に味わった頂点の感激を紫紺のジャージーでも味わいたい。(撮影/松本かおり)


「地道なことを続けていくしかないのかな、とは思いました。一気に成長することはなかなかない。できることをしっかり考えながら、そのなかでも苦手なところをちょっとずつよくしていかないと」

 雌伏の期間があったなかでも、卒業後の進路を定めつつある。リーグワンの強豪クラブからラブコールをもらっている。

 日本代表ではエディー・ジョーンズ ヘッドコーチが、若手育成の方針を掲げる。そのため昨今、ナショナルチームに選ばれる学生が増えた。10月25日には東京・国立競技場で、早大3年の矢崎由高がジャパンのフルバックとしてオーストラリア代表に挑んだ。

 矢崎と同学年の大川は、とりわけ身近な竹之下らに刺激を受ける。

「利川(桐生=4年生のフランカーで昨年代表入り)さん、仁吾は、努力しています。こっちが寝ていたり、リラックスしたりしている時にも、グラウンドやウェイト場にいる姿が見えます。仁吾はずっとキックを蹴っている。利川さんはストレッチなどの練習前の準備(の質)が違う。自分もやらないといけないな…という気持ちになります」

 最後に現在の目標として口にしたのは、直近のターゲットだ。

「帝京大戦に出ることです。やっぱりフィジカルが1番強いチームは帝京大さん。そこに自分の持ち味であるディフェンスで勝ちたい」

 大学選手権4連覇中の帝京大とは11月16日、東京・秩父宮ラグビー場でぶつかる。大川は対抗戦のこのカードを経験していない。レギュラーとしてディフェンディングチャンピオンを倒したい。





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