![チーム愛ゆえの100試合。那須光[横河武蔵野アトラスターズ]](https://www.justrugby.jp/cms/wp-content/uploads/2025/09/973bf8e0a05181bdf9d3166bf7662bfe.jpg)
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100。ただの数字ではない。
血と汗と涙、嬉しさ、悲しさ、愛、絆、安易な言葉では片付けられない経験や感情が那須光をここまで連れてきた。
横河武蔵野アトラスターズのSH那須光は2025年9月16日、ライオン市原グラウンドでおこなわれたトップイーストBグループ第2節、ライオンファングス戦で公式戦100試合目を迎えた。
試合後、チームメイトやグラウンドに駆け付けた家族、旧友、対戦相手、ファンから祝福され、100試合記念Tシャツを着て喜びに浸った。

35歳、14年目のシーズン。
チームのトップイーストリーグ開幕戦と共に節目を迎えた。
年間の試合数は10ほど。リーグワンに比べ試合数が少ないトップイーストリーグで戦い続けてきた。100試合は、那須自身も意識してきた数字だった。
4歳の頃、広島県のフレンズスポーツクラブで楕円球に触れた。五日市ジュニアラグビースクールで本格的にプレーを始める。その後神奈川県に引っ越し、川崎市ラグビースクール、東海大相模中・高→東海大を経て横河武蔵野に入団した。
大学時代の1学年上には東芝ブレイブルーパス東京で活躍する三上正貴、リーチ マイケル、豊島翔平がいる。
豊島とは東海大相模高の時から同チームでハーフ団を組んでいた。
試合前日のジャージプレゼンテーションでは出場メンバーからこんな言葉が飛び交う。
「那須さんのために」
また、サプライズ登場した家族からジャージを受け取った。目頭が熱くなった。
「みんなと100キャップを迎えられて嬉しく思います、1点でもいいので絶対勝ちましょう」
勝ちに対する執念、チーム愛が溢れる。1年目の新人選手が試合を楽しめるよう気を配る発言もあった。

試合当日、アウェイということもあり緊張があった。しかし、各地から応援に来てくれた人たちの顔を見て緊張がほぐれた。
厳しい展開になる。そんな予想が的中したが冷静に球をさばき、指示を出し、気を吐いた。
汗で滑るボールを丁寧に持ち、放ち、蹴り、チャンスをうかがう。
7-14とライオンを追いかける前半39分、FW陣がモールでトライライン直前まで前進した。残り5メートルでできたラックからブラインドサイドにスペースを見つけ、自らインゴールに飛び込み12-14と差を縮める。
100試合出場に加え、トライも挙げた。会場が沸いた。
2点を追いかける後半12分、敵陣10メートル地点での那須のジャッカルから10番の桑田敬士郎がPGを狙うも、ボールは惜しくもゴールポストから逸れてしまう。17分に再度PGを狙い15-14と逆転に成功する。
後半24分、リードを保ったまま21番の宮川と交代した。
「1年目の新人選手が試合を楽しめるように」と話していた那須に代わって登場した1年目の新人、宮川博登は、前日のジャージプレゼンテーションで「100キャップを目指したいです」と意気込んだ。
那須はその姿勢を見ながら、感慨深く微笑んだ。
25-17で勝利して心に浮かんだのは、「今回だけではなく、今までかかわってくれた人に感謝を伝えたい。あらためてラグビーっていいな」との思いだった。
100試合達成してもてもなお闘志を燃やし続ける。「抜け殻じゃない。達成してもモチベーションは落ちない」。

グラウンド内外で積極的に話し、若い選手がのびのびプレーできるような雰囲気作りを心がける。
「大前提として負ける気はないけど後輩たちには成長してほしい。新人の頃、自分がそうしてもらったから、いまそうしている」
ラグビー人生でたくさんの経験をしてきた。だからこそチームに還元したいと語る。
チームをファミリーとも呼ぶ。
愛があるゆえ、古き良き伝統を引き継ぐこともベテラン選手としての生き様。多少の痛みを我慢してでもプレーするのは、負けたくない気持ちからくる。
数字の勉強をしている4歳の娘から先日こんなことを言われた。
「100すごいね、がんばったね」
年々涙もろくなる。嬉しそうに、そう語った。
シーズンはまだまだ続く。目標のBリーグ優勝、Aリーグ昇格のために那須の存在は、チームを良い方向へ導く。
