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【九州学生リーグ】体を張って攻め、守った46分41秒。西南学院大が31年ぶり福大戦勝利
前半終了間際にトライを挙げたFB川上隆輔主将を仲間が祝福する。(撮影/松本かおり)

【九州学生リーグ】体を張って攻め、守った46分41秒。西南学院大が31年ぶり福大戦勝利

田村一博

 空からゴロゴロと聞こえてきて、やがてピカッと光る。そして、ザーッと強い雨も降ってきた。

 選手たちが屋根の下に引き上げ、スタンドのファンもコンコースなどに避難。中断から30分ほどが過ぎて、ピッチに出たレフリーが試合終了を示すアクションをした。

 9月20日の福岡、春日市のオクゼン不動産フットボールスタジアムでおこなわれた九州学生リーグ(大学)の福岡大×西南学院大は、後半6分に雷雨で試合中断。30分過ぎても天候悪化のままで、前半が終了していたため、リーグ規定に則って、その時点で試合終了(試合成立)となった。

 勝者となったのは西南学院大。14-12とリードしていた白と緑の段柄ジャージーが、2025年シーズンの開幕戦で勝利を挙げた。
 同カードで西南学院大が勝ったのは1994年度シーズン以来。31年ぶりの白星だった。

FB川上隆輔主将のトライシーン。(撮影/松本かおり)


 80分戦ったらどんな結末になったかは誰にも分からない。
 6月21日にトレーニングマッチをおこなった時、西南学院大は7-47と大敗しているが、3か月経って対戦したこの日は気持ちの入り方が違った。

 一人ひとりの強い意志とチームの結束力はパフォーマンスからも感じられた。
 接点でハードにプレーし、ディフェンスでも福岡大のボールキャリアーを複数のタックラーが踏み込み、止めていた。

 前半6分過ぎにスクラムから外を攻められ、キックチェイスから先制を許し、22分過ぎにはラインアウトでのターンオーバーから崩されてトライ、ゴールを追加されて0-12と差を広げられた。
 しかし、自分たちが準備してきたことを徹底して繰り返すことをやめなかったから相手を加速させなかった。

 西南学院大は前半の残り時間が少なくなってから得点を重ねた。
 36分過ぎ、50/22メートルキックで敵陣に入り、ラインアウトから攻める。モールを押して、最後はHO川野倫太郎がトライラインの向こうにボールを置いた。

ラインアウト、ボールキャリーと、よく働いた西南学院大NO8軽部周太郎(写真中央)。(撮影/松本かおり)


 インジャリータイムに入ってからはバックスがトライを取り切った。
 インゴールに入ったのはFB川上隆輔。大分舞鶴高校出身の4年生、今季のキャプテンを務めるリーダーがコンビネーションプレーを仕上げた。
 同主将は最初のトライ時に続き、この時もコンバージョンキックを決め、14-12と逆転してハーフタイムに入った。

 前年度の対戦では、前半を西南学院大が26-7とリードするも、最終的には33-33と引き分けに終わっている。
 逆転された福岡大は後半にギアを上げると予想されたが、スコアボードの時計は後半が始まってしばらくして、『6:41』を示したまま止まる。そして、再び時間が進むことはなかった。

 思わぬ状況で勝利を手にした西南学院大の川上隆輔主将は、「複雑な気持ちですが、前半にしっかり(スコア上で)勝てたのはよかった」と話した。
 ハンドリングエラーなども出て満点の出来とは言えなかったが、チームは4強をターゲットに準備を重ねてきた。
「この初戦に向け、夏からの準備期間も含めていろいろ考え、鍛えてきました。信じてやってきたことが、きょうの結果に出た。やってきたことが間違いではなかったです」

【写真左上】攻撃力のある福大を複数タックラーで止めた。【写真右上】先に12点を先行した福大だったが……。【写真左下】試合成立を告げられ、福大の牧野虎羽主将と西南学院大の川上主将が握手。【写真下中央】試合中断から30分が過ぎ、吉野滉平レフリーがグラウンドに出て試合終了を伝えた。【写真右下】予定より早い時間に『NO SIDE』と映し出されたオクゼン不動産フットボールスタジアムの大型ビジョン。(撮影/松本かおり)


 この日のメンバー表に名前が記されていたのは、23人に満たない21人。怪我でグラウンドを離れている1人を加えても22人の小さな所帯でシーズンインした。主将は、「厳しい戦いが続くと思いますが、この先も4強入りに向けてタフに戦います」と言葉に力を込めた。

 チームスローガンの「SWITCH」は、いろんな意味を込めて決めた。
 歴史を変えるような足跡を残す。困難にぶつかろうが、気持ちを切り替えながら前へ進み続ける。戦う気持ちをスイッチオン。
 全部員が意思統一して相手の圧力に屈しない。

「春のトレーニングマッチでは福大にズタボロにやられたのですが、この初戦に勝たないと目標には届かないと思い、きつい練習をやってきました」
 自身が挙げたトライについては、「春シーズンの試合もミスが多くて負ける試合が多かったし、昨日の練習でもミスが多かった。そんな感じだったので、自分が変わらないといけないと思って試合に臨みました。そういう状況の中でのトライでした。いい流れを作って前半を終われてよかった」

 長くチームの指導にあたっている岡田佳ヘッドコーチと、昨年から加わった村上大記コーチの指導のもと、選手たちのモチベーションは高まり、仲間同士の結束も強くなっている。
 チームは2年連続で全国地区対抗大学大会準優勝という成績を残しているが(九州リーグ5位が出場)、久保安秀監督はリーグ4強のターゲットを掲げるいま、「もう名古屋には行かないようにしたい」と言う。

後半6分41秒で時計は止まった。14-12で西南学院大の勝利。(撮影/松本かおり)


 同監督はこの日の選手たちのパフォーマンスを、「この試合に懸けていました。絶対に勝つつもりで準備してきました。接点で迷いなくプレーして相手を止めていた。(部員数や環境など)あらゆる面で劣っている中で、結果を出してくれました」と称えた。

 少ない部員数で戦い切るため、「スターターができるだけ変わらないようにしています」と言う。
「1対1で負けるなら、こちらが、2人、3人で戦う。組織、ユニットの力を高めていきます」
 初戦で自分たちが歩むべき道を確信できた。第2節以降も続く昨季上位校との対戦時も迷いなく戦う。







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