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【Just TALK】「今年から2027年を狙っていきたい」。中森真翔[筑波大2年/LO・FL・NO8]
体を大きくしつつ、スピードも武器にする。(撮影/松本かおり)

【Just TALK】「今年から2027年を狙っていきたい」。中森真翔[筑波大2年/LO・FL・NO8]

向 風見也

 身長191センチ、体重96キロの体格でスピードが豊か。動きもしなやかだ。筑波大2年の中森真翔(まなと)が持ち味を発揮した。

 9月14日、茨城はケーズデンキスタジアム水戸。加盟する関東大学対抗戦Aの初戦に臨んだ。前年度の順位で3つ上回る8チーム中3位の明大を28-24で下した。

 7番で先発の中森は、左端の空洞を大きく破る走りで前半26、34分の連続スコアをおぜん立て。後半35分には敵陣ゴール前左中間でパスをもらい、目の前の穴を突いてトライを決めた。

 空中戦のラインアウトも支え、肉弾戦でのブローも激しかった。プレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた直後、喜びを語った。

明大戦の後半35分、トライを挙げて仲間に祝福される。(撮影/松本かおり)


——好ランの連発。見事でした。

「どのシーンでもバックスが作ってくれたスペースの前で、ボールを渡してくれた。思い切り、気持ちよく走れました。普段から、ゲインした後の(ボールの)運び方もチームで練習しています。

1対1で戦わず、複数対1で戦う。(その意識づけの成果を)出せたと思います」

——確かに中森選手が快走した場面では、攻撃側の筑波大が数的優位を作っていました。

「夏はどちらかと言うと、1対1で戦っていました。明大相手に1対1で勝つのは難しい。味方のサポートも使いつつ、複数対1 で…。前が空いていたら、自分が行く…。このようにオプションを増やせたことが、夏よりもゲインが増えた要因だと思います」

——特に前半26分の1本目では、スピードに乗りながら左から右へのステップを切ってタックラーをかわし、中央へサポートに来ていたスクラムハーフの高橋佑太朗主将のフィニッシュをアシストしました。

「あそこは、夏合宿の時の自分だったら、『抜けて、外へ切って、少しゲインして…』という感じだった。そこをトライまで繋げられたのが、練習による進化だと感じました」

——肉弾戦へ身体を差し込む場面が見られました。

「納得いくプレーはありましたが、明治の縦へのモメンタムに受けてしまうところもあった。よくなってはいますが、改善の余地はあります」

——直近の目標は。

「去年は怪我もあったうえに大学選手権に出られなかった。今年は自分が選手権行きを持ってくる、くらいにチームを引っ張っていきたいです」

 桐蔭学園高3年時は2列目のロックとして高校日本一に輝いた。いまは春先に参加したジャパンタレントスコッド(JTS)、23歳以下(U23)日本代表で挑戦したオープンサイドフランカーを全うする。

 JTSとU23日本代表は、正代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチが手がけるプロジェクトだ。前者では国際舞台に立つための啓蒙がなされ、後者ではオーストラリア遠征が組まれた。中森はJTSで身体を大きくする重要性を知った。

 家族に助けられながらの食の改善を微笑みながら話した。

——今年の代表関連活動について。

「あの経験は大きかった。JTSで初めてフランカーをして、何より海外の相手とできたことで世界を意識して練習に取り組めるようになりました。よりタックルの強度を高めないといけないな…と」

2005年12月24日生まれ、19歳。191センチ、96キロ。横浜ラグビースクール(小3〜/小中)→桐蔭学園→筑波大学体育専門学群2年。高校日本代表、U23日本代表、JAPAN XV。(撮影/松本かおり)


——身体作り、コンタクトへの意識が変わったようですね。

「(寮のない)筑波大学という環境、ひとり暮らしをするなかで、どうフィジカルを育てていくか。JTSで教わりました。

 自分の悪い癖に、『膝をたたまないで(タックルに)入って、相手を(押し)返せない』というものがありました。今年はファースト(1人目)でも、セカンド(2人目)でも、低くいこうとしています。

 食事については、筑波はほかの大学さん(の選手)と違って、より自立しなきゃいけない。朝食を皆で集まって食べる取り組みはあるのですが、それ以外でも捕食を挟むとか、プロテインの数を増やすといったことを、JTSへ行ってから心がけるようになりました」

——食費がかさむとなれば、アルバイトをしていない以上は仕送りでのやりくりが大変になります。

「もともとご飯に回していましたが、さらに(金額が)かかるようになりました。親にお願いして…」

——増額してもらえたのですか。

「はい! JTSでは、補食の回数が多かったんです。寝る前にもたんぱく質を入れていた。だから家に帰ってからも(就寝前は)『パワグラ』というたんぱく質を固形化したものを。常にお腹が空いていない状態にしています。

 体重もこまめに測るようになりました。去年は夏に落ちてしまっていたのですが、いまは少しずつ上がっています。そのなかでどうスピードを維持するかも考えています。社会人になってからも、スピードを武器にしたい」

——ジョーンズさんは、中森さんを「オリヴィエ・マーニュ(元フランス代表の俊足フランカー)になれる」と発言しています。

「(その記事を)見ました。言われてから、自分も意識するようになりました。

(マーニュについては)調べました! フォワードとは思えぬ機動力でした。

 JTSではピーターステフ・デュトイ(現役南アフリカ代表の長身フランカーでトヨタヴェルブリッツに在籍)を意識。動画を探し、接点に絡んで、起き上がって、また次の接点へ…というところを、自分のプレーにも採り入れようとしました。

 運動量プラス縦の強さもつけていかないと。将来、本当に日本代表に入りたいと思っています。エディーさんは『(大学生の代表入りは)バックスよりフォワードのほうが難しい』と仰っていて…。ただ、自分はできるなら今年から2027年(ワールドカップオーストラリア大会)を狙っていきたい。見てくださっているかはわからないですが、こういう試合でアピールできたら。今年の対抗戦、自分らしいプレーがしたいです」

国際レベルで通用するワークレートの高さを目指す。(撮影/松本かおり)


 筑波大のOBで現コーチの鈴木啓太氏は、中森についてこう述べる。

「もともといいプレーヤーだったんですけど、(昨季は)ワンプレーで終わってしまうところが気になっていました。『あれだけの運動量、突破力があるのなら、もっとワークしないと。働かないと』と常に伝えてきました。それを、本人ができるようになってきた。ディフェンスなどのこまごまとしたところで活躍できると、もっともっとよくなる」

 同コーチはポジションはセンター。学生時代は福岡堅樹さん(日本代表としてワールドカップに2度出場)らと同時期にプレーした。2018年からの計4シーズンはヴェルブリッツにいて、デュトイとも同僚だった。

 世界に触れた経験を踏まえ、教え子に発破をかける。

「彼(中森)は将来、日本を背負って立つような子です。リーチ マイケル(東芝ブレイブルーパスや日本代表で主将を務めるフランカー)、デュトイは、ワークレートが全然、(他の選手と)違う。本人ともそういう話はします」

 JTSやU23日本代表へ参加したことへは「自信を持って帰ってきた」と捉えながら、「それがどっちにふれるか。(ネガティブな影響が出ないよう)プレッシャーをかけています」と見守る。




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