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試合会場のアメリカ・カリフォルニア州、サクラメントにあるハート・ヘルス・パークの収容人員は1万1569人と小ぢんまりとしている。
サッカー、サクラメント・リパブリックFCの本拠地でもある同スタジアムで9月6日(日本時間/同7日、10時5分キックオフ)、パシフィックネーションズカップ2025のアメリカ×日本(プールB)がおこなわれる。
9月5日午前、その試合の出場予定選手を日本ラグビー協会が発表し、午後にエディー・ジョーンズ ヘッドコーチ(以下、HC)と、LOワーナー・ディアンズ、HO原田衛の両共同主将がオンライン会見に臨んだ。
8月30日、仙台にて今大会初戦のカナダ戦を戦い、57-15と勝った日本。チームを率いるジョーンズHCは、冒頭に「大会を通して、チームが成長していくチャレンジが楽しみ」と話し、選手たちが異国の地の環境に慣れてきていることを伝えた。
そして、会場はスタンドとピッチが近いことからも「熱狂的なファンに囲まれながらの試合となる」とした。
日本の過去の戦績を振り返ると、アメリカとの相性はよくない。
ワールドカップだけを振り返っても通算1勝2敗。2015年大会は勝ったが、2003年、1987年と負けている。
近年こそ力の差が開き、日本が勝利を重ねているものの、何度も悔しい思いをしてきた相手でもある。

しかしジョーンズHCは、「過去の成績、歴史は気にしていない。現在自分たちが置かれている立場が大事だし、このメンバーは過去に携わっていない」と話した。
あらためて準備の重要性を説き、「タフな時間帯は訪れる。その時こそ冷静さを保ちながら、次に何をするか考えながら戦い続けないといけない。ジャパンらしくプレーすることが大事。トレーニングの中でもその訓練を繰り返しています。タフな時こそ、自分たちで(局面を)打開しながら、自分たちの形に戻すことを意識しないといけません」
アメリカは日本相手に「強気でくる」と予想するも、「フィジカルバトルでしっかり戦いたい」。
「(パワーで)日本をいたぶろうとしてくるでしょうが、そうはさせない」と話した。
昨年のPNCでは、カナダ、アメリカ、サモアには勝ったものの、ファイナルでフィジーに敗れ、優勝を逃した。
その事実を踏まえジョーンズHCは、今年こそ「若いメンバーで優勝して大きなステップとしたい」と期待を口にした。
今回の出場予定メンバーには、FL奥井章仁とWTB木田晴斗の2人がベンチに入った。両選手とも出場となれば、初キャップ獲得となる。
奥井について「力強い」、木田に関しては「バックスリーにパワーを加えてくれる。ランも空中戦も強い」と評価し、「チームにエネルギーを与えてくれる2人。これまでの頑張りを見て、出場に値すると判断して決めた」とセレクション基準を口にした。
代表初先発となる福田に関しては、マオリ・オールブラックス戦を「いいパフォーマンスだった」と評価し、ハムストリングの負傷から戻った今シリーズでスターターの座を託した。
「フィジカル面が強く、存在感もある。アメリカに対して、いいスタートを切れる」
終盤に投入予定の藤原忍の存在も含め、「2人でいい試合運びを見せてくれるはず」とした。
また、昨季から先発起用が続いているディラン・ライリーを「ベストの時は世界でもトップクラスの13番といっても過言ではない。ランも、オフ・ザ・ボール時の動きもいい。ディフェンスでは相手(の動きを)をよく読めて、周りからもリスペクトされている」と高く評価した。
「力強くてタフ」と見るアメリカについては、9番のルーベン・デハースを「キックをうまく使い、チームを前に出す強さがある」と警戒した。
また、7番のクリスチャン・ポイデヴィンの名前も挙げ、「(オーストラリア、シドニーのランドウィッククラブで)お父さんとは昔、一緒にプレーした」と話した。
その父、サイモンさんは元オーストラリア代表で、ワールドカップには1987年と1991年の大会に出場。1991年大会では優勝に貢献したフランカーだ。
息子・クリスチャンも同じようにゴールドのジャージーを目指していたが、アメリカに活躍の場を移して国際舞台が近づいた。母がシカゴ出身で代表資格を得て、今年(2025年)7月のスペイン戦で初キャップを得ている。

前節のカナダ戦でゲームキャプテンを務めたLOワーナー・ディアンズ共同主将は、大役を担った80分を「(カナダ戦の)前半はタフな試合でしたが、後半は自分たちのラグビーができるようになった」とレビューした。
「いいリーダーズグループがあり、アタックリーダー、ディフェンスリーダーと、(まとめ役を)任せていい人たちがいるので、プレッシャーなく、自分のプレーに集中できました」
2試合連続でゲームキャプテンを務めるアメリカ戦も、「パフォーマンスでチームに貢献できるようにしたい」と抱負を口にした。
「アメリカはフォワードがフィジカルにプレーしてくる。9番、10番はキックが得意で、エリアをとってくる。セットピースでしっかり戦い、フィールド(プレー)でもフィジカル面の強さを出したいですね」
もうひとりの共同主将、HO原田衛は、カナダ戦に続いて、この試合にも出場しない。しかし「試合に出なくてもやれることはある」と言い、コンディションを万全にするための準備を進めている。
出場メンバーやリーダー陣、2番のジャージーを着る江良颯らと話す以外にも、日本とは違う環境の中でチームの結束が揺るがないように、ピッチ外での規律維持などに気を配っているようだ。
その姿勢の影響もあり、ディアンズゲーム主将は、「フロントローを衛さんが中心となってリードしてくれているので、よりタイトなパックになっています」と話した。
今年の大会こそ優勝するために、相手に関係なく積み上げ続ける。
【パシフィックネーションズカップ 2025/プール B アメリカ代表戦 日本代表試合登録メンバー】
①小林賢太(PR1/東京サントリーサンゴリアス/早大/181、113/26/1)
②江良 颯(HO/クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/帝京大/172、106/23/2)
③竹内柊平(PR3/東京サントリーサンゴリアス/九州共立大/183、115/27/16)
④ワイサケ・ララトゥブア(LO・FL/コベルコ神戸スティーラーズ/東海大/193、120/27/3)
⑤ワーナー・ディアンズ◎(LO/東芝ブレイブルーパス東京、SRハリケーンズ/流経大柏/201、117/23/24)
⑥ベン・ガンター(FL/埼玉パナソニックワイルドナイツ/ブリスベンボーイズカレッジ/195、120/27/12)
⑦下川甲嗣(FL/東京サントリーサンゴリアス/早大/188、105/26/15)
⑧ファカタヴァ アマト(NO8/リコーブラックラムズ東京/大東大/195、118/30/15)
⑨福田健太(SH/東京サントリーサンゴリアス/明大/173、83/28/2)
⑩李 承信(SO/コベルコ神戸スティーラーズ/大阪朝高/176、86/24/21)
⑪長田智希(WTB/埼玉パナソニックワイルドナイツ/早大/179、90/25/18)
⑫チャーリー・ローレンス(CTB/三菱重工相模原ダイナボアーズ/ハミルトンボーイズ高/170、89/27/1)
⑬ディラン・ライリー(CTB/埼玉パナソニックワイルドナイツ/ボンド大/187、102/28/31)
⑭石田吉平(WTB/横浜キヤノンイーグルス/明大/167、75/25/3)
⑮サム・グリーン(FB・SO/静岡ブルーレヴズ/ブリスベングラマー高/178、85/31/2)
⑯佐藤健次(HO/埼玉パナソニックワイルドナイツ/早大/177、108/22/1)
⑰木村星南(PR1/東芝ブレイブルーパス東京/東海大/175、105/26/2)
⑱為房慶次朗(PR3/クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/明大/180、108/23/12)
⑲奥井章仁(FL/トヨタヴェルブリッツ/帝京大/178、105/23/-)
⑳マキシ ファウルア(NO8/クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/天理大/187、112/28/17)
㉑藤原 忍(SH/クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/天理大/171、76/26/13)
㉒廣瀬雄也(CTB/クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/明大/182、94/24/1)
㉓木田晴斗(WTB/クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/立命館大/176、90/26/-)
◎=ゲームキャプテン
※カッコ内はポジション、所属、出身校、身長・体重、年齢、キャップ数の順