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【with サクラフィフティーン/RWC2025 ⑦】NZ戦は、「最初から」、「粘る」、「誇りと思ってもらえるように戦う」。
記者会見に出席したンドカ ジェニファ(左)と永田虹歩。永田はこの日の午後のオフ、「最近はステイホテルが気に入っているので、映画を何本か見ようと思っています」。(撮影/松本かおり)
2025.08.30
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【with サクラフィフティーン/RWC2025 ⑦】NZ戦は、「最初から」、「粘る」、「誇りと思ってもらえるように戦う」。

田村一博

 一日のうちに天気がころころ変わることを毎日経験している。イギリスの特徴として知ってはいたけれど、こんなに短い周期で急変するのかと困惑する日が続く。
 傘をささない人が多いのも分かる。いちいち傘を出したりしまったり、雨に備えて常備しておくのは面倒だ。

 エクセター滞在3日目の8月27日もメディアの取材機会がなかったため、部屋で作業をしたり、街の中に隠れているラグビーを探しに出たり。坂の多い街を歩き回ってくたくたになる。
 翌8月28日は、午前中にサクラフィフティーンの滞在先で選手2名とマーク・ベイクウェル アシスタントコーチの取材機会が設けられた。

エクセター図書館の自伝コーナーには南アフリカ、ラっシー・エラスムスHCのものもあった。エディーの自伝は貸出中かな!?
エクセター市街地にある、世界一狭いと主張するパーラメント・ストリートは、一番狭いところで約60センチ。ただ、ドイツにもっと狭い通りがあるようだ。(撮影/松本かおり)


 取材に対応したのは、プロップの永田虹歩(PEARLS)、バックローのンドカ ジェニファ(北海道バーバリアンズディアナ)のふたり。
 永田は今回のワールドカップ初戦、アイルランドとの一戦(14-42)に後半5分から出場。何度もボールキャリーをしてチームに勢いを与え、ゲインメーター33は、35分間の出場ながらチームで5番目の数値だった。
 ンドカは初戦はメンバー外だったものの、フィジカリティの強さには定評がある。次戦で出場機会を得たなら、きっとチームを前に出してくれる。

 アイルランド戦の前半は積み重ねてきたプレーを出せなかった。自分たちらしくないミスを連発して相手に食い込まれた。
 前半の戦況を外から見てそう感じていた永田は、ピッチに出たら「ハードキャリーで少しでも前に出よう」と、自分に求められているプレーを遂行することに集中した。
「それが、そのあとの(チームとしての)アタックにも良い影響を与えられたと思います。次の試合(対ニュージーランド/8月31日)では、そのプレーを前半からやっていきたいと思います」

 2022年に開催された前回W杯では力不足と感じるところもあったが、「余裕が生まれた」ことが、現在の進化につながっている。
 その過程について、「(日常を)オンとオフを意識して過ごしていたら、自分にいい影響があった」と振り返る。

 スーパーラグビーのブルースでもプレーした経験があるだけに、次戦のブラックファーンズとの対戦は楽しみにする。現地での経験から「ニュージーランドの選手はプロップでも足が速い」と警戒するも、「それに対しては、はやい反応でカバーしたい」と話す。

 初戦のスターターたちの動きを見て、大きなプレッシャーを受けていると感じた。戦術を遂行する意識の強さも、逆に思い切りの良さを弱めたかもしれない。
 だから週末の試合は、「自分たちのワークレートの高さ、ハードワークで、テンポとモメンタムを出したいですね。それをトライにつなげたい」。

 自分を高めてくれた国相手の試合に燃えたぎる気持ちはあるけれど、「気持ちは上がっていますが、いつも通りに淡々とプレーして、パフォーマンスを出したい」と現在の気持ちを表現した。

チーム活動がオフの午後、ルームメイト同士で街を散策していた弘津悠(左)とンドカ ジェニファ。エクセター大聖堂の前で。2人は部屋で「はぁ」というゲームをするのにはまっているそうだ。(撮影/松本かおり)


 今回が初W杯のンドカは敗れたアイルランド戦について、「自分たちのラグビーができていなかったよね、と(チームで)話しました」と回想するものの、個人的には「(出場していた選手たちは)エネルギッシュだったし、いい刺激をもらいました」という。

 そして、「次は自分たちがやってきたラグビーをします。自分にフォーカスすると、強いキャリーと前に出るディフェンスを意識して試合に臨みたい」と力強く、前向きに話した。

 チームの強みを「粘り強さ」と感じている。ブラックファーンズ戦を睨み、「大きい相手にも粘ってディフェンスをしたい。遂行力も強みです。自分たちがやってきたアタックを出して点を取りたい」。

「(相手が戦った初戦の)スペイン戦を見ると、オフロードパスをうまく使っていたので、そこを止めないといけません。そしてキャリーが強いから、低くタックルしないと」
 ピッチに立った時の自分をイメージして日々を過ごしている。

 埼玉・昌平高校時代はバスケットボール部で活躍し、ウインターカップにも出場したアスリート。ナイジェリア人の父と日本人の母の間に生まれ、2人の兄は Jリーガーだ。
 24歳。流経大入学後に始めたラグビーのキャリアはまだ浅いが、前向きな性格もあり、成長のスピードははやい。そして、可能性も秘めている。
 チームを勢いづけるXファクターになれる存在だ。

喋り出したら止まらないマーク・ベイクウェル アシスタントコーチ。(撮影/松本かおり)


 両選手に続いて取材を受けたマーク・ベイクウェル アシスタントコーチは、約30年以上の指導経験を持つFW指導のスペシャリスト。ニュージーランド出身も、オーストラリア、フランス、イングランドの各クラブや、サンゴリアスやトンガ代表でのコーチング経験もある。
 2024年3月から現職に就いて、サクラフィフティーンのFW、特にラインアウトとモール強化に力を発揮してきた。

 アイルランド戦では緊張もあったか、思うようなラインアウトを実現できなかったサクラフィフティーン。ベイクウェル コーチも、選手の緊張と、「最初の20分にすべてを懸け、私たちを破壊しにきた」アイルランドにより、自分たちの遂行力が落ちたことを認めた。

「ただ(ラインアウトについては)相手が何をしたかではなく、うまくいかなかったのは、とてもシンプル。自分たちの基礎的なエラーから起こった」とした。
 スローイング、リフティング、デリバリーの根幹をもう一度徹底し、それぞれを機能的なラインアウトにつなげて次戦を戦うとした。選手たちには、自分たちの強みとなるまで積み上げてきたセットプレーに自信を失うな、とあらためて伝えた。

 同コーチが就任してからのFWの進化は著しい。当初は10メートルを超えると精度が大きく落ちていたスローイングについて、徹底して改善を求めた。その要求に応え、努力を重ねた選手たちに敬意を表す。

 モールの進化も後押しした。コーチングの真ん中にあるものは、男子チームに指導するときと変わらない。技術的なディテール、セットアップの追求はするが、考え方はシンプル。まっすぐ押すことを徹底する。
「まっすぐ押せば(相手の)どこが割れてきたか、を感じることができます。どちらかに回ったなら、ディテールを使って弱い方を攻める」
 まっすぐ押して相手のウィークポイントを探り、崩すことで、押す。

 サクラフィフティーンは、ほとんどの場合、対戦相手より小さいけれど、サイズが不利とは思っていない。
「自分のコーチとしてのチャレンジでもありましたが、不利と思われることを有利に変えていくことを考える。(小さければ)相手の下に入り込んでダメージを与えられる」
 地面の近くでプレーする強さを自分たちの強さとした。

8月28日の午後に催されたエクセター・チーフス・ウィメンズのイベントには多くのファンが集まっていた(写真上)。写真下は、応援も熱かったボートレース。(撮影/松本かおり)

 バインドの仕方など細部までこだわるベイクウェル コーチは、強敵ブラックファーンズとの対戦について、ディテールの徹底を前提に、個々もチームも、「絶対に屈しないマインドセットが大事」と強調した。
「110パーセントの力を出すつもりで立ち向かう。応援してくれる人たちに、誇りと思ってもらえるように戦う」
 自分たちから仕掛けていくことが大事と何度も強調した。

 この日の午後、チームはオフ。選手たちはエクセターの街を散策したり、カフェに寄ったり、思い思いの時間を過ごしたようだ。

 キーサイドと呼ばれるウォーターフロント地区で、エクセター・チーフス ウィメンズのファン向けイベントがあると聞き、足を運んでみた。
 選手たちがボートレースで競い合い、盛り上がっていた。子どもたちもマスコットと触れ合ったり、アトラクションを楽しむ姿も。

 しかしそんな穏やかな時間も、急変する天気と降り出した雨で何度も中断していた。
 地元の人は慣れっこでへっちゃらな感じだったが、旅人には辛い。日本×ニュージーランドの日は、頼むから一日中晴れてくれ。

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