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今週のオールブラックスのラインアップに、ニュージーランド(以下、NZ)は話題沸騰となっている。
注目度の高い新人FL/NO8サイモン・パーカーがついに代表デビュー。大ベテランHOコーディー・テイラーは記念すべき100キャップの偉業へ。そして、PRタマイティ・ウィリアムズ、FL/NO8ウォレス・シティティといった怪我から復帰した実力選手が合流。ベテランと若手が融合した豪華布陣がついにそろった。
ザ・ラグビーチャンピオンシップ(以下、TRC)の開幕戦(NZ時間、8月17日)のオールブラックスは41-24でアルゼンチンに勝利。スコア上は快勝したものの、試合内容には課題も見えた。
前半は、スクラム、ラインアウトといったセットピースが安定し、落ち着いた試合運びで31-10と大きくリードして折り返した。
しかし、後半は大量リードが気の緩みとなったのか、ハンドリングエラーや規律の乱れで(2枚のイエローカード)、2連続トライを奪われ、一時はわずか7点差(31-24)まで詰め寄られる場面もあった。
その後、オールブラックスは試合運びを修正。フォワードが近場を突くシンプルな攻撃でボールをキープし、安定したラインアウトからモールを押し込み、途中出場のHOサミソニ・タウケイアホがたて続けに2トライ(いずれもモールから)を挙げて試合を決めた。
後半には課題が残ったものの、セットピース全体の完成度は高く、特にラインアウトは成功率100%の数字を記録。新人LOファビアン・ホランドの存在が大きな安定要素となっており、その価値は試合を重ねるごとに高まっている。

◆新星デビュー、大物復帰。アルゼンチンとの第2戦のメンバー
8月22日、オールブラックスの指揮官スコット・ロバートソンHCは、TRCの第2節の対アルゼンチン戦(24日=NZ時間)に挑む試合登録メンバーを発表した。
第1節で負傷したLOパトリック・トゥイプロトゥ(顔面骨折で手術)、CTBアントン・レイナートブラウン(脳震盪)の離脱が決まった中でのメンバー選考となった。
最も注目されるのは、TRCに入ってから新たに正スコッド入りをしたFL/NO8サイモン・パーカーが背番号8を背負って代表デビューを迎えることだ。これにより、前週NO8だったアーディー・サヴェアが7番にシフトチェンジ。先発メンバーの変更は、この一点にとどまった。
この選考についてロバートソンHCは、「彼(パーカー)がテストマッチに出場する準備ができていることを私たちは分かっている。長い間、彼に注目してきた。非常に安定しており、能力を発揮してくれることを楽しみにしているし、彼の前には良いフォワードパックがそろっている」と期待を語った。
今季デビューしたばかりで安定感抜群のパフォーマンスを見せるLOホランドは、開幕から5試合連続で先発を任され、キャプテンのスコット・バレットとコンビを組む。
バックスに目を向けると、開幕から先発で多く起用されているWTB(11番)リーコ・イオアネとCTB(13番)ビリー・プロクターにも注目が集まる。
イオアネは数年ぶりに本来のWTBへ戻ったものの、代表デビュー時に11番のポジションで見せた圧倒的な輝きを取り戻すには至っていない。プロクターもまた、スーパーラグビーでの好パフォーマンスをテストマッチで再現できていない。オールブラックスにとって13番は長年の課題ポジションであり、負傷離脱が続くレイナートブラウンのコンディション不安や人材不足もあり、昨年デビューしたばかりでキャップ5のプロクターに経験を積ませている状況だ。両者にチャンスを与え続けるのは期待の裏返しであり、この試合はまさに正念場となる。

ベンチに目を向けると、ウィリアムズとシティティの大物2人の復帰は、パーカーのデビューと並び大きな話題となった。ロバートソンHCは、「彼らは“大きな身体”を持っている。ここまでよく努力してきた事をとても嬉しく思う。テストシリーズ全体を見れば、この試合に間に合ったことはタイミング的に非常に大きい」と語り、9月初めの南アフリカとのビッグマッチ2連戦に向けて彼らの復帰を素直に喜んだ。
ただ、両者ともスーパーラグビー・パシフィックのプレーオフ決勝で怪我を押して強行出場で悪化しており、今回はベンチスタートで出場時間を制限する形となった。2か月ぶりの実戦感覚に不安は残るものの、その存在感はチームに勢いをもたらすはずだ。
なお、ウィリアムズ、シティティの復帰により、今季の新人FLデュプレッシー・キリフィ、PRオリー・ノリスの2人がメンバー外となった。その他では、負傷のトゥイプロトゥの代わりはバックアップメンバーのLOジョッシュ・ロード、レイナート・ブラウンの代わりは、CTBクイン・トゥパエアがベンチ入りした。
◆2戦目もアルゼンチンを警戒。ポゼッションが鍵
初戦を勝利したものの課題を残したオールブラックスは、9月に控える2試合のビッグマッチ(南アフリカ戦)に向けてしっかりと調整したい。
前週の失点場面では、アルゼンチンにポゼッション(ボール支配)を確保された際に苦戦していた。ボールを持たせると危険なBK陣が揃い、FWも勢いに乗せると厄介だ。まずは、安定感が増してきたセットピースを武器に有利に戦いたい。特にラインアウトからのモールは南アフリカのお株を奪うかのような強力さを持っている。2戦目もその強みを生かしたい。
2連敗は避けたいアルゼンチンのモチベーションは、きっと高い。先週よりタフな試合になる事が予想され、フィジカルバトルも激しさを増すだろう。オールブラックスにとっては、南アフリカ戦を見据えた大事なステップとなる。

◆100テスト。節目のコーディー・テイラー
この試合で100キャップの節目を迎えるテイラーは、ちょうど10年前、クライストチャーチで今回と同じアルゼンチン戦でデビューを果たした。
2年前までクルセイダーズの指揮を執り、テイラーをよく知るロバートソンHCは、「コーディー(テイラー)は偉大なオールブラックスだ。彼の立ち振る舞いや、背中で示してきた姿勢こそ、彼の人柄を物語っている。これまでの99テストと同じように、今週も存在感を示してくれるだろう」と最大限のリスペクトの言葉を述べた。
100試合目の舞台でも、テイラーが「ハカを指揮」する姿が見られる可能性は高い。デビューを飾るパーカーと、100試合を積み重ねた大ベテランの共演が楽しみだ。