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【Just TALK】「自分ばかり、にはなっていない」。下川甲嗣[日本代表/FL]
8月15日に始まった日本代表のFW合宿で精力的に動いた。(撮影/松本かおり)
2025.08.18
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【Just TALK】「自分ばかり、にはなっていない」。下川甲嗣[日本代表/FL]

向 風見也

 ラグビー日本代表の下川甲嗣が8月15日、取材に応じた。

 身長188センチ、体重105キロの26歳。東京サントリーサンゴリアスに所属のフランカーだ。

 ジャパンでは2023年のワールドカップフランス大会などで合計14キャップを得ており、昨季9年ぶりに復帰のエディー・ジョーンズヘッドコーチにも頼りにされる。

 今年6月からの代表活動へも参加。6月28日には東京・秩父宮ラグビー場で、マオリ・オールブラックス戦に臨むJAPAN XVのゲーム主将を務めた(●20―53)。

「何か特別に意識したことがあるかと言われれば、そんなこともなく。いつも通り、自然体でやろうと」

 7月1日、コンディションの都合でチームを離れたと発表された。左足を痛めていた。

「怪我してしまったことはもう変えられなかった。もし次の招集があったら、以前よりもいい状態で臨めるようにというモチベーションで、リハビリ、トレーニングをしてきました」

6月28日におこなわれたマオリ・オールブラックス戦では主将を務めた。(撮影/松本かおり)


 日本代表はこの季節、対ウェールズ代表2連戦を1勝1敗とした。現体制にあって、ハイパフォーマンスユニオン勢から初の白星を奪った。

 折しも下川は、回復に努めていた。

「去年のテストマッチではなかなかチャンスを得点に結びつけられずに、相手のアタックのサイクルを作らせてしまい、自分たちのやりたいリズムに戻せないまま試合が終わってしまったところがありました(4勝7敗と負け越した)。ただあのウェールズ代表戦では、ひとりひとりがファイトしていた。ミスをしているところもありましたけど、得点すべきところでスコアして帰ってくるところもあった。ディフェンスも本当に粘り強くできた。それが結果に繋がったと思います」

 心機一転。8月12日発表のキャンプメンバーに名を連ねた。話をした同15日は、都内でのフォワード合宿の初日だった。

 その日はちょうど、ラインアウトからのモールについて細部を確認。捕球役を前後で支えるリフターの2人が、塊を作るのに先んじて相手役にぶつかっていた。下川が説く。

「リフトして、そのまま高い位置から(圧をかけに)行くほうが、いったん低くなってから行くよりも速く相手に仕掛けられるというイメージです。ここでは(モールの)1列目だけが速くいっても力が伝わらない。2、3列目もそのタイミングで(押し込む)。着地の瞬間に、全員が相手にインパクトを与える」

しもかわ・かんじ。1999年1月17日生まれ、26歳。福岡県出身。草ヶ江ヤングラガーズ(5歳/幼小中)→修猷館→早大→東京サントリーサンゴリアス(2021〜)。日本代表キャップ14。(撮影/向 風見也)


 8月17日には宮崎にスコッド全38名(16日の追加招集者を含む)が集まり、同月下旬からのパシフィック・ネーションズカップ(PNC)を見据える。

 PNCには昨年も参戦。当時は決勝でフィジー代表に17-41で敗れ、準優勝に終わっている。

——今度のPNCの位置づけは。

「チームとしては去年の決勝戦でフィジー代表に差をつけられて準優勝。次はその時よりもいい結果を目指していく。自分はバックロー(フランカーなどのフォワード第3列)として試合に出てチームにいい影響を与えたいです」

——優勝に向けて。

「自分たちのラグビーをぶらさずに戦う。個人としてはウェールズ代表戦前に離脱しているので、その時までにチームが積み上げてきたものを早く理解し、コミットし、戦力として戦えるようにしていきたいです」

 7月まで主将だった36歳のリーチ マイケルは、体調管理の観点からか今回のキャンペーンには参加しない。フランス挑戦中の齋藤直人も招集外となっている。

 ここで注目されるのが、今度のスコッドにおいて誰が船頭役となるかだ。

 原田衛、ワーナー・ディアンズ、李承信といった他の主力とともに、下川もリーダーを担う。おもに防御を任される。

 リーチ、今年初選出された23歳の奥井章仁といったフランカー陣を引き合いに出して語る。

「去年の秋からディフェンス(のリーダー)も任せてもらっています。練習を見返す時も、最初の頃(初選出された2022年のことか)はシステム(の理解)に時間をかけていましたが、いまは自分のところを見るのと同時に『チームとしてどうなるか』についてもリーチさん、章仁と部屋で集まって話し合っていました。前回(6~7月)は途中で離脱しちゃいましたけど」

——リーチ選手不在のいま、下川選手の役割は。

「リーダーを任せるよと言われているわけではないですけど、チームでは中堅というか、若手ではない。責任を持ってやっていきたいです。

 選ばれてすぐの時は自分のことで精一杯。ただ、いまは『ここにいる以上、チームがいい結果を残すことが大切』という考え方です。『自分ばかり』にはなっていないです」

ディフェンス時にリーダーとして周囲に声をかけ(写真左)、アタック時には勤勉に味方をサポート。(撮影/松本かおり)


——引き続き、防御のリーダーなのでは。

「自分はそのつもりでいますが、まだわからないです。宮崎でエディーさんと話すことで、そういったことが決まっていくと思います」

——ジョーンズさんは、ベテランとなったリーチさん以外にもリーダーが出てきてほしいと願っています。どんな人がその位置に立つべきだと感じますか。

「…難しいですね。言葉も大切ですが、チームのために身体を張れるとか、(周りに)この人について行きたいと思わせるとか、このチームの目指すラグビーを一番体現できているといった人が(主将に)なるべきだと思います」

——ワールドカップに4度出場のリーチさんも、献身性、方針に沿ったプレーの質に秀でているのですね。

「グラウンド内外で何が必要かを理解してやっている。それは誰が見てもわかることです。ボールを持った時(突進)、ディフェンスでのタックルの回数や成功率といった、数値で表れるスタンダードも高いです。

(自身は)リーチさんに比べたら、テストマッチの中でのスタンダードはまだまだです。どの部分を切り取っても、です。チームとともに、自分自身の成長もさせていきたいです」

 ジョーンズHCはメディアを通し、将来的には日本代表の主将は国内出身の選手がするべきだと伝える。

 この談話について下川は、「エディーさんが本当は何を考えているのかはわからないので、そこ(報道された言葉)に対して意識することはないです」。
 自分の見聞きしたことに基づき、行動する。




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