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【オールブラックス】敵地でTRC開幕。対アルゼンチンでスコット&ボーデン復帰し、バレット3兄弟揃う
「おかえり兄貴たち」の気持ちだろうか。フランス戦でも活躍のCTBジョーディー・バレット。(Getty Images)

【オールブラックス】敵地でTRC開幕。対アルゼンチンでスコット&ボーデン復帰し、バレット3兄弟揃う

松尾智規

 いよいよ今週末から開幕を迎えるザ・ラグビーチャンピオンシップ(以下、TRC)。オールブラックスの初戦がNZ時間の8月17日(日)に迫っている。週の始めから、熱心なラグビーファンが集うスポーツ・トークバックラジオでは、TRC初戦のメンバー選考についての議論が白熱。リスナーたちが「自称セレクター」となり、電話越しに熱のこもったトークを披露している。

 さらに、今月初めにはNPC(NZ国内選手権)も開幕しており、ラグビーファンにとって、まさにラグビー漬けの週末が続いている。

 TRCのオールブラックスのスコッドは、負傷者が続出したこともあり、バックアップメンバー6人を含む構成となった。その中でもゲームタイムが必要な選手たちは、NPC序盤戦で実戦経験を積み、TRC第1節および第2節のアルゼンチン戦に向けて調整をおこなった。

◆スコット&ボーデン、バレット兄弟復帰。キリフィ7番、サヴェア8番。


 8月15日の朝、オールブラックスの指揮官スコット・ロバートソンHCは、TRCの第1節の対アルゼンチン戦の試合登録メンバーを発表した。PRタマイティ・ウィリアムズ (膝)、FL/NO8ウォレス・シティティ (足首)の欠場が明かされていた中で、「バランスと経験のあるメンバー」と語り、フランスとのテストシリーズ3戦目から先発メンバー9人を入れ替える大幅変更をおこなった。

敵地でのTRC開幕戦を戦うメンバー。All Blacksの公式『X』より


【フォワード陣】
 フロントローは、イーサン・デ・グルートが4試合連続で1番を背負い、HO(2番)には、コーディー・テイラーが先発に復帰。3番には、タイレル・ロマックスの怪我によりフレッチャー・ニューウェルが入った。

 セカンドロー(LO)は、今季開幕戦で負傷していたキャプテンのスコット・バレットが復帰し、新人ながら安定した活躍をしているファビアン・ホランドとコンビを組む。

 注目が集まったバックロー(FL/NO8)では、LOが本職のトゥポウ・ヴァーイの怪我が癒え、再び6番のポジションに入る。今季は7番での起用が多くなっているアーディー・サヴェアがシティティの欠場によりNO8に入り、新人デュプレッシー・キリフィが2試合連続で背番号7を付ける。

【バックス陣】
 SHは、キャメロン・ロイガードとノア・ホザムの負傷により、コルテス・ラティマが先発に指名され、怪我の癒えたボーデン・バレットとハーフ団を組む。
 中盤のCTBは、ジョーディー・バレット、ビリー・プロクターが今季3度目のコンビを組む。

 バックスリー(WTB/FB)は、フランスとの3戦目の前日に負傷したリーコ・イオアネが左WTB(11番)に復帰、セブ・リースが右WTB(14番)、最後尾のFBには、ウィル・ジョーダンが入った。

【リザーブ】
 ベンチには、経験豊富な顔ぶれを揃えた。フォワード陣は、オリー・ノリス、パシリオ・トシのボールキャリーの良いPRが並び、LOの控えは、フランス戦で存在感を示したパトリック・トゥイプロトゥとなった。サミペニ・フィナウがバックローをカバーする。メディアの話題を独占、今回スコッド入りをした新人FL/NO8サイモン・パーカーは、初戦のメンバー入りはならなかった。
 バックス陣の控えに目を向けると、SHフィンレー・クリスティー、CTBアントン・レイナートブラウン、SO/FBダミアン・マッケンジーと経験豊富なメンバーがベンチに並ぶ。

 10番のセレクションについてロバートソンHCは、「ボーデン(バレット)は経験豊富で、彼はゲームをコントロールできる」。マッケンジーについては「ベンチから出てきて試合の流れを変えられる最高の選手のひとり」と語り、役割に対する考えを明言した。
 負傷者が相次ぐ中でもオールブラックスは、現時点での強力メンバーを揃えてTRC初戦に臨む。

◆アルゼンチンは、もはや【格下】ではない。


 近年のアルゼンチンは、世界のトップと対等に戦う力がある。
 今年の6月には、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズのウォームアップマッチとはいえ、代表経験者が並ぶ相手に28-24で勝利した。

 実際にオールブラックスは、アルゼンチン相手に近年は苦戦を強いられている。
 2020年にはウエスタン・シドニーで15-25と初めての勝利を献上。2022年にはクライストチャーチで18-25、そして昨年2024年にはウェリントンで30-38と、直近5年間で3敗を喫している。しかもそのうち2試合は、NZのホームでの敗戦だ。

2022年、オールブラックスはクライストチャーチで18-25とアルゼンチンに敗れている。(撮影/松尾智規)


 今回、オールブラックスはスコッドに将来有望なノンキャップ選手も含めているが、アルゼンチン戦には1人も起用しなかった。この事実こそ、セレクター陣がアルゼンチンを「試す相手」ではないと見ていることになる。

 試合会場は、オールブラックスが約30年ぶりに訪れるコルドバのスタジアム。収容人数は5万人を越えるこのスタジアムは、圧倒的多数のアルゼンチンサポーターで埋め尽くされる見込みだ。完全なるアウェーの雰囲気が選手たちを迎えることになる。

 これまでオールブラックスは、アルゼンチンの地では負けた経験はないものの、着実に実力をつけている相手にとって、地元での勝利は大きな目標のひとつで、モチベーションは高いだろう。
 TRCの開幕を楽しみにしているNZ国内のラグビーファンからは、キックオフの時間(日曜日の午前9時10分)が「最高のタイミングだ!」との声が溢れている。キウイ(NZ人の愛称)たちは、愛するコーヒーを片手にオールブラックスの試合を楽しめるとあって、ご機嫌だ。

 果たしてオールブラックスは、完全アウェーの地で、チームが目指す「速くてスキルフル」なラグビーを披露し勝利することができるだろうか。
 待ちに待ったTRCのキックオフを楽しみに待ちたい。




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