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【Just 20 minutes】「直人は凄くいい奴。彼に会って、ますます日本に行きたくなった」。サンティアゴ・チョコバレス[アルゼンチン代表/トゥールーズ]
1999年3月31日生まれの26歳。188センチ、100キロ。2020年11月14日のオールブラックス戦で初キャップを得て現在アルゼンチン代表キャップ27。(撮影/中矢健太)

【Just 20 minutes】「直人は凄くいい奴。彼に会って、ますます日本に行きたくなった」。サンティアゴ・チョコバレス[アルゼンチン代表/トゥールーズ]

中矢健太


「チョコ! チョコ! チョコ!」

 子どもたちが嬉しそうに呼ぶ声の先には、フランスTOP14・トゥールーズでプレーするアルゼンチン代表プーマスのCTB、サンティアゴ・チョコバレスがいた。ザ・ラグビーチャンピオンシップ前のわずかな休暇で、古巣であるデュエンデス・ラグビー・クラブに戻ってきていた。

 チョコバレスは、ブエノスアイレスから約300キロ北上したサンタフェ州にあるパンパス・デ・ルフィーノというクラブでラグビーを始めた。その後、同州のロサリオにある強豪、デュエンデスに移り、アルゼンチンのU20代表、かつてスーパーラグビーに参戦していたハグアレスにも選出される。4年前にフランス・トゥールーズへ移籍。そこから代表選手としての階段をさらに駆け上がっていった。

 気さくで人懐っこい性格。いい人なのが、すぐにわかる。憧れの存在を前に子どもたちの目は輝いていた。チョコバレスの目も同様だった。

 突然のインタビューにも関わらず、快く引き受けてくれたチョコバレス。英語、時には自ら翻訳アプリを介してスペイン語で、トゥールーズでのシーズンや同僚である齋藤直人、そして日本への興味について語った。

自分の出身クラブを訪れ、子どもたちと触れ合った。(撮影/中矢健太)


——まずはトゥールーズでのTOP14優勝、おめでとうございます。
「ありがとう! 本当に特別な瞬間だったよ。僕は4年前にフランスに来たんだけど、1年目はもう大変だった…。思い出すだけでしんどいよ。特にフランス語が難しくて。だから今話している英語は、僕にとってスペイン語、フランス語に次ぐ第3言語。だから、あんまり上手くないんだ(笑)」

——いやいや、英語お上手ですよ!
「実はナオト(齋藤直人)はね、日本語とほんの少しの英語しか話せないんだ。ハハハ、でもすごくいいヤツだよ!」

——彼のどういったところがそう思わせるのですか?
「彼は良いラグビー選手であると同時に、人としてすごくナイスガイなんだ。仲も良くて、たまにアントワンヌ(・デュポン)と(ファン=クルス・)マリーア、ナオトと僕で食事に行っているよ。彼は土曜日にチャンピオンになった後、月曜日には帰国して代表合宿に合流していたよね、ウェールズ戦のために。本当すごいと思うよ」

——シーズン終了後、あなたはどう過ごしていたのですか?
「僕はいま、ザ・ラグビーチャンピオンシップに向けてチームから数週間のオフをもらっている。1週間はフランスで過ごして、その後アルゼンチンに帰ってきたんだ」

——トゥールーズのモラHCは、今シーズンのことを「地獄のようにタフなシーズンだった」と例えていましたが、実際にはどう感じましたか?
「すごくタフだったし、簡単なシーズンではなかった。アントワンヌも怪我してしまったし。その中で優勝できたことは本当に嬉しかった。モラは僕にとって最高のコーチだよ。プロラグビー選手として、彼から学ぶことは本当に多い」

——例えばどんな影響を受けていますか?
「選手のモチベーションを上げるのが本当に上手いんだ。チームの調子が良いときも、悪いときも、ロッカールームや全体ミーテイングで彼の話を聞くと、自然と体の内側からワァーっと力が湧いてくるよ」

——このデュエンデス・ラグビー・クラブであなたは3年間プレーしました。そして、今はこうして戻ってきて、子どもたちに指導している。あなたにとって、ここはどんなクラブですか?
「アルゼンチンは昔から、裕福な上流階層がラグビーをしている傾向があるかもしれないけど、ここはそんなの関係ない。このクラブにはいろんな社会階層の人が集まっているし、それをクラブも歓迎している。そういった意味で、ここはすごくオープンで、地元の人からも好かれているクラブだと思う。だから僕にとっては特別で、今でもこうして帰ってきているんだ」

——このクラブの関係者の一人に話を伺ったときに、「帰属意識」がとても強いクラブだと聞きました。
「そうだね。ラグビーで高いレベルに到達するためには、ハードワークする必要がある。みんなとそうやって高め合うから、自分もここに属していると感じられる。人生もラグビーも一生懸命に努力しないといけないけど、このクラブはその人のバックグラウンドに関係なく、そういった価値観を体現しているクラブだと思うね」

2023年のワールドカップに出場し、日本戦では先制トライを挙げた。写真はタックルシーン(右)。(撮影/松本かおり)


——実は、このサンタフェ州・ロサリオという街は、少し危険な地域だと事前に聞いていました。実際はどう感じていますか?
「いやいや! そんなことないよ。一部は確かに危ないかもしれないけどね。ロサリオの街はちょうどいいサイズなんだ。その意味ではトゥールーズと少し似ている。パリみたいに都会すぎず、かといって田舎すぎない。ちょうどいい規模で、僕にとってはすごく居心地がいいんだ」

——齋藤選手と出会ってから、なにか変化はありましたか?
「そうそう。ナオトに会ってから、ますます日本に行きたくなったよ。実はまだ日本に行ったことはないんだけど、以前日本でプレーしていたニコ(ニコラス・サンチェス)や旅行した友だちから、日本の素晴らしさを聞いていたんだ。日本のカルチャー、特にお互いをリスペクトし合う(気をつかい合う)文化は他の国にはないものだってみんなが口を揃えて言うんだ。日本の写真もたくさん見せてもらったし、本当に興味があるよ。トゥールーズにある日本食レストランには、ナオトと2回行ったよ。日本食は本当に美味しいね。寿司は前から知っていたけど、あのスープにパスタみたいなものが入った…」

——ラーメン?
「(肩を叩いて)そう! ラーメン!! あれはもう最高だね。とにかく日本特有のカルチャーや食文化にはすごく興味があって、いつかは日本でプレーしたいと思っているよ」

——日本であなたを見たいラグビーファンも多いと思います。
「嬉しいよ。でも、日本でプレーするなら日本語を覚えないといけないね。どのチームにも通訳がいると思うけど、僕は英語がそこまで上手くないから。日本語は難しいイメージがあるし、僕にとっては第4言語になるから…これは大変だね!(笑)」

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