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【JAPAN SEVENS 2025】仲間航太[SDS/明大]は「セブンズで生きていく」。
仲間航太はセブンズ愛の深い大学4年生。(撮影/松本かおり)

【JAPAN SEVENS 2025】仲間航太[SDS/明大]は「セブンズで生きていく」。

田村一博

 国内唯一のセブンズの賞金大会を制したのはオリンピアンやセブンズ日本代表経験者らがいる男子セブンズ・デベロップメント・スコッド(以下、SDS)だった。

 結果を見て、そんなの当たり前だろう、と言ってはいけない。
 7月13日に秩父宮ラグビー場で開催された『なの花薬局ジャパンセブンズ2025』は、準優勝の大阪府警察の奮闘もあって楽しめた。
 入場料は無料。3858人のファンが朝から夕方までスピード感ある各チームのパフォーマンスを楽しんだ。

 ファイナルで大阪府警察に26-12と勝ったSDSの戦いは、前半に3トライを集中させる理想的なものだった(19-0)。
 チームとゲームをうまくコントロールしたのは仲間航太。明治大学の4年だ。

ゲームの流れの中でのキックを高める仲間航太。(撮影/松本かおり)


 前半2分に今大会で主将を務めた中野剛通(下の写真の左上)が決めたトライは、仲間が右コーナー方向に転がしたキックから始まった。相手防御を乱す効果的なものだった。
 そこから攻撃は続き、中野が左スミに飛び込んだ。

 4分には植村陽彦(下の写真の右上)のトライを呼んだ。
 やや左寄りのスクラムからボールが出る。それを受けた背番号7は右に少し走った後、左の大きく開いたスペースにクロスキックを蹴った。
 連係を取っていた植村が受ける。そのままトライとなった。

 試合後の仲間は、冷静に大会を振り返った。
「この大会は(優勝が目標でなく)、今後のアジアシリーズ、チャレンジャーシリーズ、ワールドシリーズ昇格へ向けて(重ねている)合宿のひとつ、と考えていました」

世界を頭にプレーし、優勝したSDS。(撮影/松本かおり)


 そう話した上で、「自分たちが求めていたシチュエーションにぴったりはまったのが、あのキックでした。2つめのは、事前にコミュニケーションが取れていました」と続けた。
 いずれも、世界で勝つための選択肢。状況に応じて的確な判断をした結果だった。

 ドロップキックはもともと得意も、試合の流れの中で使うキックはそうでもなかった。
 しかし、日本が世界と伍していく上で必要なもの。チーム内にそんな要求もあったから練習を重ね、期待に応えられるように成長している。

 キックを交えたアタックは日本の武器と相手が認識してくれたなら、「その他のプレーがより効く」と考える。
 この大会でも考えをぶらすことなく戦い、対世界をスタンダードにプレーして頂点に立った。

大会を盛り上げる、気持ちの入ったプレーで準優勝の大阪府警察。(撮影/松本かおり)

 常翔学園出身の165センチ、75キロ。大阪ラグビースクール、茨田北中で楕円球を追った仲間が最初にセブンズに取り組んだのは、高校1年時だった。セブンズユースアカデミーのメンバーに選出された。

 その後、継続的にセブンズの育成システムの中で力を伸ばした。そして2024年、仲間の気持ちは大きくセブンズに傾いた。
 6月に男女セブンズ学生日本代表としてフランスへ。世界学生選手権を戦った。8月、11月とアジアラグビーセブンズシリーズの3大会を戦い、2025年に入ってからはワールドラグビーセブンズチャレンジャーの2大会に参加。この競技への愛が深まった。

 セブンズ専属の選手が、もっと多く出てこないと日本のセブンズは強くならないとの声が聞こえてくる。
 そんな中、「自分はその中のひとりになりたい」と話す。「日本代表をオリンピックでメダルを獲れるチームにしたい」と強く思う。

出場全10チームのキャプテンたち。(撮影/松本かおり)


 世界の舞台で戦い、セブンズシニアアカデミーのフィジー遠征にも行った。いろんな国を訪れ、それぞれのスタイルを持つ国々と戦う。そんな経験を経て、「こんなにもおもしろいものがあったのか、と」セブンズの魅力に引きずり込まれた。

 オリンピックに出たい。
 明大ラグビー部の神鳥裕之監督にも、正直にその思いを伝えている。
 今後、チームと話し合いながらセブンズの代表活動にも可能な限り参加していきたい。大学卒業後の進路もセブンズ活動優先が可能なことを条件に探している。

 小柄で、特別なスピードを持つわけでもない自分の武器を、「ゲームコントロール」と話す。
 周囲の好ランナーを生かすため、パスやラン、キックを使う。「いろんな角度から、チームにいい影響を与えられる選手になりたい」。
 理想は、セブンズ日本代表キャップ62を持つ坂井克行さんだ。スキルフル。左右両足でキックを蹴ることもできる。

 人生を「セブンズに捧げたい」と言う。
「将来はユース世代のコーチになりたい。セブンズが日本でも人気のスポーツになるように、(自分も参加する代表で)結果を残して、そこを目指したい子どもたちが増えるようにしたいと思っています」
 大好きなセブンズで国内最高峰大会の頂点に立った21歳は、とても気持ちよさそうだった。

 2年続けて準優勝となった大阪府警察は、昨年の決勝では0-48と男子セブンズTID /Bチームに大敗した。
 しかし今大会では12-26。反撃した時間もあり、準決勝ではNECグリーンロケッツ東葛を撃破。その試合は同チームの選手たちの矜持が感じられる内容で、好走、猛タックルが相次いだ。両チームの意地がぶつかり合う熱い試合だった。

 チームを率いた廣田瞬主将は、万博や選挙の警備で多忙な中、全員で集中力とモチベーションを高く持って準備してきた成果が出たと話した。前回大会のリベンジを果たしたい気持ちもあった。
 しかしグリーンロケッツ戦のハードな内容が選手たちの体力を削った。進化はしたけれど再び届かなかった現実に同主将は、「来年こそ」。早くもターゲットを1年後の優勝に定めていた。

会場では芸人、マスコットが観客を楽しませた。写真下はSDSを率いた男子セブンズ日本代表のヘッドコーチ、フィル・グリーニング。(撮影/松本かおり)
北海道バーバリアンズの平野雄紀。(撮影/松本かおり)

 たくさんの試合と一人ひとりのやる気や才能が伝わってきて、長い観戦時間も、飽きることのない一日。滋賀県成年男子では元セブンズ代表の林大成のリーダーシップや盛田気(ちから)のパフォーマンスが目立った。
 北海道バーバリアンズにはパリ五輪でサクラセブンズを率いた平野優芽主将の弟・雄紀(専大卒)の姿が。ラックサイドの狭いスペースを走り切るセンスを見せるシーンもあった。
 ラグビーと仕事を両立させる北海道での生活も充実しているようだった。

福岡工業大学の廣瀬幹太。(撮影/松本かおり)


 福岡工業大でこの大会の主将を務めていた廣瀬幹太は、クボタスピアーズ船橋・東京ベイで活躍する廣瀬雄也の弟だ。現在182センチの身長はまだ伸びており(体重は80キロ前後)、バランスのいい体格。玄海ジュニアラグビークラブ、東福岡で基礎を学んだ3年生は、「将来はリーグワンでプレーできたら」と上を見ている。

 時速38.5キロで走ることができるランが魅力で現在はウイングでプレーしているが、本人は、これまでもある程度経験のあるSHとしてトップレベルでプレーしたい。
 希望は所属チームの監督にも伝えている。今季からはチームでも同ポジションに就くことが増えるかもしれない。

 スピアーズのミッドフィールドに立つCTBを夢であり目標という弟は、「兄はパスもキックもできて体も強いけど、真似するのではなく、自分は自分のスタイルでプレーを伸ばしていきたい」と話す。
 全国大学選手権ベスト8進出の目標も達成したい。未来には、やり遂げたいことがたくさんある。

【なの花薬局ジャパンセブンズ2025 最終順位】
1位 男子セブンズ・デベロップメント・スコッド(SDS)
2位 大阪府警察ラグビー部
3位 NECグリーンロケッツ東葛
4位 帝京大学
5位 サムライセブン
6位 北海道バーバリアンズ
7位 摂南大学
8位 男子セブンズシニアアカデミー
9位 滋賀県成年男子
10位 福岡工業大学

2大会連続でリーグワンから唯一出場のグリーンロケッツ。写真は藤井達哉。(撮影/松本かおり)
【写真左、上から】男子セブンズシニアアカデミー、NECグリーンロケッツ東葛、北海道バーバリアンズ、サムライセブン。【写真右、上から】帝京大学、滋賀県成年男子、摂南大学、福岡工業大学。(撮影/松本かおり)
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