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「とても満足している」
オールブラックスの指揮官スコット・ロバートソンは、ウェリントンでおこなわれたフランスとのテストマッチシリーズ第2戦(7月12日)での圧倒的なパフォーマンスにそう語った。
43-17でフランスを退け、2連勝でシリーズの勝ち越しを決めた。これにより、7年ぶりにDave Gallaher Trophy(デイヴ・ギャラハー・トロフィー)を奪還した。
ダニーデンでの第1戦で31-27の冷や汗ながらも勝利を収めたオールブラックスは、第2戦で大きく改善を見せた。特に前半のパフォーマンスは素晴らしく、ハーフタイムまでに29-3と圧倒的なリードを奪った。
第1戦に引き続き、安定したスクラム、ラインアウトのセットピースを軸に試合を有利に展開。第1戦でやや苦戦したブレイクダウンもしっかり修正され、攻撃の精度も向上。前半だけで4トライを奪う猛攻を見せた。
印象的だったのは、ラインアウトでバリエーションを増やし、攻撃に幅を持たせることに成功した点だ。主将のLOスコット・バレットの離脱に伴って出場したパトリック・トゥイプロトゥのパフォーマンスが光った。新人LOのファビアン・ホランドと共にラインアウトを支配。ボールを持てば力強く前に出てチームに勢いをつけた。
後半は、フランスも奮闘し2トライを挙げたが、オールブラックスも2トライを奪い、終始試合の主導権を握り続けた。
ロバートソンHCは、試合直後のピッチのでSky sportのインタビューで満面の笑みを見せ、「丁寧に、熱心に取り組んで、本当に良いラグビーをしました」と語った。インタビューの最後には「このシリーズは3連勝にフォーカスしている」と力強く宣言した。

◆大幅メンバー変更で第3テストマッチへ。
7月19日(土)、ハミルトンでフランスとのテストシリーズ第3戦(NZ現地時間19:05キックオフ)に先立ち、7月17日にオールブラックスの試合登録メンバーが発表された。
シーズン前にロバートソンHCは、「スコッドの全員を出場させる」と明言していた通り、シリーズの勝利が決定、第2戦を圧勝したことで、思い切ったメンバー変更が現実となった。
FW陣から見ていくと、フロントローは、左PRイーサン・デグルートが3試合連続で先発。過去2試合でリザーブだったHOサミソニ・タウケイアホが今季初先発で2番を付ける。右PRには、ケガが癒えたタイレル・ロマックスが今季初登場でいきなり先発となった。
LO(セカンドロー)は、第2戦で抜群のコンビネーションを見せたパトリック・トゥイプロトゥとファビアン・ホランドのコンビが継続となった。新人ホランドは3戦全て先発で、首脳陣の絶大な期待が込められていると言える。
バックローは2人の変更があった。
LOからコンバートされて6番で良いパフォーマンスを見せていたトゥポウ・ヴァアイが脳震盪により最終戦を欠場するため、サミペニ・フィナウが6番を付けて今季初先発のチャンスを得た。フィナウのチームメイト(チーフス)のルーク・ジェイコブソンが脳震盪から回復して8番で先発。2試合連続でゲームキャプテンを務めるアーディー・サヴェアは3試合連続で背番号7を付ける。
このセレクションは、今季のサヴェアは7番で定着すると言う意味合いがあるのかもしれない。
BKに目を向けると、ハーフ団は、SHコルティス・ラティマ、SOダミアン・マッケンジーとチーフスコンビが揃って今季初先発となった。
中盤のCTB陣は、初戦でベンチ入りをし、代表復帰を果たしたクイン・トゥパエアが12番。ケガから復帰のアントン・レイナートブラウンが13番に入り、こちらもチーフスのコンビとなった。
バックスリー(WTB/FB)は、3戦連続リーコ・イオアネが11番(左WTB)を付け、脳震盪から復帰のセブ・リースが14番(右WTB)。そして最後尾のFBで、今季初登場のルーベン・ラブが15番を付けるはずだった。
当初はそう発表されたものの、試合前日になってイオアネの怪我によりメンバー変更がおこなわれた。リースが11番に入り、ベンチスタートの予定だったウィル・ジョーダンが14番。ジョーディー・バレットが23番のジャージーを着る。

ロバートソンHCは「タイレル(ロマックス)、ルーク(ジェイコブソン)、アントン(レイナートブラウン)、セヴ(リース)が怪我から復帰することを大変嬉しく思います。彼らは合わせて185キャップを持ち、最高レベルでプレーする準備ができている」と、経験のあるケガ人の復帰を素直に喜んだ。
ベンチに目を向けると、今季の新人で唯一デビューをしていなかったHOブロディー・マカリスターが初めてメンバー入りとなり、出場すれば代表デビューとなる。
ケガ人のバックアップでスコッド入りをしているPRジョージ・バウアーが17番に入り、出場すれば3年ぶりのテストマッチとなる。2試合連続で先発だったPRフレッチャー・ニューウェルは、今週はベンチスタートとなった。
その他のFWの控えは、ダルトン・パパリィイ、デュプレッシー・キリフィのFLの2選手を一緒にベンチに置いた事は興味深い。LOにケガ人が相次いでいる事から、LOのカバーは数年前までチーフスで主にLOとして活躍していた、6番で先発のフィナウが担当することになりそうだ。
BKの控えには、SHノア・ホッザムが今季初めてメンバー入り。第2戦で代表デビューしたティモジ・タヴァタヴァナワイが2試合連続でベンチに座り、再びチャンスを得た。
手を負傷したSO/FBボーデン・バレットはメンバー外となり、15番で先発のラブがSOのバックアップとなりそうだ。ラブは今季のハリケーンズで、10番でも良いパフォーマンスを見せた。テストマッチレベルで、司令塔としてどこまで高いパフォーマンスを出せるのか見極められることになる。
ロバートソンHCが「まず、全員が素晴らしいトレーニングを積んだことを大変嬉しく思います。彼らはオールブラックスとして選ばれ、オールブラックスとしてプレーします。良いコンビネーション、良いバランスのメンバーで、今週彼らにチャンスが巡ってきた」と語るように、大幅な変更はあっても、若手とベテランがミックスされている。バランスの取れたメンバーだ。
8月から始まるザ・ラグビー・チャンピオンシップ(南アフリカ、オーストラリア、アルゼンチンと戦う)に向けてチームの底上げができるか試される大事な一戦となりそうだ。
ニュージーランド国内は、第2戦の快勝で安堵感が漂った。シリーズの最終戦となる第3戦は、新人を中心に若手メンバーのパフォーマンスに注目が集まる。若いメンバー構成となっているものの、フルスコッドでないフランス相手に負けるわけにはいかない。ロバートソンHCの言うシリーズ3連勝はマストになる。
フランスは、3連敗は避けたいところだろう。第1戦のような接戦に持ち込みたいと考えているはずだ。
オールブラックスは、空中戦とディフェンスにまだ課題を残している。フランスがそこを上手く突いてくるのか、それともオールブラックスがしっかり修正してくるのか。シリーズ最終戦も、熱い試合が期待できるだろう。