logo
【Just TALK】「うまくいかないのなら、どうする? その反省が次に繋がる」。齋藤直人[日本代表]
7月12日のウェールズとの第2テストマッチ。PR竹内柊平のトライを祝福。(撮影/松本かおり)
2025.07.14
CHECK IT OUT

【Just TALK】「うまくいかないのなら、どうする? その反省が次に繋がる」。齋藤直人[日本代表]

向 風見也

 ラグビー日本代表の齋藤直人は7月12日、兵庫・ノエビアスタジアム神戸でウェールズ代表戦に先発した。

 身長165センチ、体重73キロの27歳。代表戦出場の証であるキャップ数を25とした。

 6月中旬に始まった代表のキャンペーンへ7月1日から参加。7月5日の福岡・ミクニワールドスタジアム北九州での同カードでは給水係を務めていた。

 初戦を24-19で制し、実現すればジャパン史上初となる強豪国「ハイパフォーマンスユニオン」からの2連勝を目指すチームにあって、ワールドカップ経験者でもある齋藤の存在感は大きかった。

 同じスクラムハーフの位置で切磋琢磨する藤原忍は、こう証言した。

「(初戦では)ディフェンスでハーフとバックスリー(ウイング、フルバック)との連携ができていなかった。それでバックスリーを呼んでミーティングを開くなど、彼から細かく発信してもらいました。『僕たち(SH)がヘルプできるところがあるんじゃないか』という風になり、『どういう動きをしたらいいか』、『バックスリーにどういう声をかけたらいいのか』など細かいことを話しました」

 2024-25シーズンからフランスのトゥールーズへ加わり、今年6月までの長丁場を戦った。トップ14で2連覇を達成したチームの中で進化した。若返りの進むナショナルチームにあって、得難きリーダーとなりつつある。

 本人はこうだ。

「僕自身も合流して2週間も経っていないから、たくさんコミュニケーションを取らなければならない。試合にも勝ちたかったですし。9、10、15番(スクラムハーフ、スタンドオフ、フルバック)、今週は特にウイングとも(話し合った)。自分に必要だと思ったからやりました。一緒にラグビーを見るのとは別に、トランプしたり、コーヒーに行ったりする機会がだいぶ増えて、『こういう人なんだな』が見えました。面白かったです」

経験値を高め、その知見を日本代表にも伝える。(撮影/松本かおり)


 7月12日のウェールズとの第2テストマッチには22-31で敗れた。記者団に囲まれ、試合展開を踏まえた問答に応じた。

——ご自身とチームの動きについて。

「プランがあって、遂行したつもりですけど…。終わった後にエディーさんとも話したのは、『前半、プランがうまくいかなかった時に次どうするか』。そこ(アイデア)が、なかったですね。

 後半は全体を通して、特に最初の 5~10 分はモメンタム(勢い)がありました。逆にあそこでスコアしきらなければいけなかったです」

 確かに4分、10分、13分頃に再三、敵陣22メートルラインより向こうへ到達も、逸機に終わっていた。

——総じて、よいシーンとそうでないシーンが交互にあったような。

「特に(10-21とリードを許した)前半は、あまりアタックができなかった。言い訳みたいになりますけど、本当にボールがものすごく滑って、攻められないくらいの感覚でした。セットピースからはまだ大丈夫でしたが、流れのなかでは…。スクリューパスで(指の球への)引っかかりが…。これはお互い様ですが」

——前半で言えば、高い弾道のキックの競り合いにも苦しみました。齋藤選手が好位置へ蹴り上げたボールも、落下地点での相手のプレッシャーで再獲得できないシーンが多かった。

「こちらも競っていました。お互い入ったり、入らなかったりで。それは、うまくいかない日もある。『うまくいかないのなら、どうするか』というの(反省)が、次に繋がるところです」

——先ほどの「前半、プランがうまくいかなかった時に次どうするか」の話に繋がりますね。例えば状況を鑑みてキックの高さ、種類を変えるなど。

「そうそう。そうだと思います」

——ハイボールの争奪戦は、齋藤選手個人の課題か、チームの課題かでいえばどちらでしょうか。

「どっちもじゃないですかね。僕ももっと精度の高いキックを蹴れたな…と思うこともありました。

9番(スクラムハーフのいる接点の周り)から蹴らないとなると、アタックしながら、バックスペース(後衛)の動きを見て蹴ることになる。ただ、実際に自分たちが裏に蹴ろうとした時——まだ映像を見ていないので(正確かは)わからないですけど——相手が3~4 人、(キック処理のために)下がっているシーンもあった。

 そうなれば、次はどこにスペースがあるのか。外側にスペースがあるなら(その空間に)ボールを運び、(後衛が)上がってきたら…(キックを選ぶ)。

 こういったこと(チームとしての判断力強化)は、今後、やっていくんじゃないかと。

 でも、9番からのハイパントはひとつの強みというか、オプションになり得る。前回の試合でもトア、吉平(ハラトア・ヴァイレア、石田吉平の両ウイング)が捕りに行って、1~2本はこちらに入っていた。

(フランスでは)基本的に、自陣では蹴ります。もちろんスペースがあれば攻めますが、(ハイボールを)蹴って捕れれば毎回それをすればいいわけですし。(日本代表でも)キック、競り合いの精度を上げていけば、武器になります」

ジョーンズHCも球さばきを評価。ただ、テストマッチでは、前半にSHが自由に動けるスキはなかなかない。(撮影/松本かおり)


——日本代表の現在地は。

「去年はアタックにフォーカスして、今年はキックを(導入)。積み重なっているとは思います。あとは、ディフェンスのところをもう少し詰められるように…と」

 来季もトゥールーズとサインしたとあり、今後はトップ14の新しいシーズンを見据える。

 詳細について本人は「まだ決まっていない」とするが、日本代表が8月下旬から参戦するパシフィック・ネーションズカップではプレーしない見込み。秋の欧州遠征中の再合流が期待される。「まずは自分を磨いて、また合流できる時に(力を)還元できるようにしたいです」と言葉を選んだ。

「ひとつは、もう1回、キックを(磨く)。きょう、かなり蹴って、感触は悪くなかったですが、もっとよくできる。ここの精度が上がれば、『毎回、蹴って、毎回、捕る』ができるので。あとは、全体的に、変わらずしっかりやる。僕がトゥールーズにコミットすることが結果として自分の成長と、日本代表へ持ち帰られるものに繋がる」





ALL ARTICLES
記事一覧はこちら