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【そんなに強くないだろ、は危険】「魂のハカ」再び。マオリ・オールブラックス、雪辱の一戦に本気
昨年の来日時に見せたマオリ・オールブラックスのハカ。(撮影/松本かおり)

【そんなに強くないだろ、は危険】「魂のハカ」再び。マオリ・オールブラックス、雪辱の一戦に本気

松尾智規

 観る者すべての心を揺さぶる「魂のハカ」が、再び日本のスタジアムを震わせる。
 昨年の雪辱を胸に、マオリ・オールブラックスが「本気モード」で再び日本の地に降り立った。本家オールブラックスをも凌ぐ迫力で観客を魅了するだろう。

 今回のスコッドには、6月21日にスーパーラグビー・パシフィック決勝を終えたばかりのクルセイダーズとチーフスの選手を擁する、強力なメンバー構成。6月24日(火)にスコッドが発表されると、翌25日(水)には日本に向けて出発した。

 昨年同様タイトなスケジュールの中でもマオリの誇りは揺るがない。指揮官のロス・フィリポHCは「多くの選手が土曜日の夜(6月21日)の決勝に出て、そのままこの環境に入ってきたので、我々にとっては厳しい状況です。選考は厳しく、コーチンググループは時間をかけてメンバーを確認しました。昨年(2024年)の愛知での雪辱(14-26で敗戦)を果たしたい」。今回は絶対に負けられないという強い覚悟でJapan XVに挑む。

 今年の日本での試合は、Japan XVとの一戦のみ(6月28日(土)日本時間午後6時5分キックオフ)。昨年は1勝1敗(初戦は36-10で勝利)と五分に終わっただけに、今回は一発勝負での決着をつける覚悟だ。

◆試合登録メンバーに代表経験者は少ないけれど強力布陣。


 6月26日(木)にマオリ・オールブラックスの試合の登録メンバーの発表があった。昨年の初戦は、4人のキャップホルダー(代表経験者)がメンバーに入っていたが、今年はNO8で先発のカレン・グレイス(1キャップ)のみとなっている。いわゆるスター選手こそ少ないが、それでもチームの総合力は高い。

昨年に続き指揮を執るのはロス・フィリポHC。チームは7月5日にはスコットランド代表と戦う。(撮影/松本かおり)


 キャプテンに選ばれた2番カート・エクランド(ブルーズ)を始め、4番イサイア・ウォーカー・レアウェレ(ハリケーンズ)、クルセイダーズの優勝メンバーで今季開花した10番リヴェズ・ライハナ、ベイリン、ザーンのサリヴァン兄弟など、各ポジションにクオリティーの高い選手が揃っており強力布陣と言って良いだろう。
 今回の出場メンバーは、「勝ちにこだわり日本の弱点を突く」という意図を感じられる。それをもとにFW、BKそれぞれの注目選手をいくつか挙げてみたい。

◆仕事量豊富な3人のバックロー(FL/NO8)


【6番】FLテカマカ(TK)・ハウデン(ハイランダーズ)
 バックローの層の厚いハリケーンズから出場機会を求めて今季ハイランダーズに移籍し11試合に出場(先発9試合)。ダイナミックなボールキャリーとラインアウトでも強みを発揮し、LOで出場する事もある。経験を積めばさらに上を目指せる可能性を秘めた選手だ。

【7番】FLジェローム・ブラウン(チーフス)
 昨季までブランビーズに所属し経験を重ねてきた実力者。今季からチーフスに移籍して層の厚さに6試合出場にとどまった。試合に飢えている。日本での試合で大暴れする姿が見れるか。

【8番】FL/NO8カレン・グレース(クルセイダーズ)
 2020年に20歳でオールブラックスに選出された逸材。層の厚いクルセイダーズのバックローの中で今季は13試合に出場(先発は10試合)。ラインアウトでも存在感を示し、常にハードワークするプレーでチームを支える。頼りになる男。

◆日本にとって脅威となる強靭なCTB


【12番】ギデオン・ランプリング(チーフス)
 スーパーラグビーデビューは4年前(2021年)の18歳と早かったが、その後。ケガに苦しんだ。今季、途中出場からインパクトのあるプレーでアピールして11試合に出場(3試合先発)。CTB/WTBどちらでもこなし、フィジカルを活かしたプレーは、相手にとっては脅威となる存在。

【13番】ベイリン・サリヴァン(ハリケーンズ)
 ハリケーンズの層の厚いCTB陣の中でもシーズンを通して活躍した。アタック、ディフェンスともにフィジカルの強さで相手を翻弄する。スーパーラグビーのデビュー時はWTBでプレーしており、昨年の来日時は左WTB(11番)で2試合出場している。

All Blacks の公式『X』 より


 バックスのこの2人は、日本が苦手とする「速くて強い」タイプの選手だ。彼らがディフェンスを切り裂く場面が多くなるとマオリ・オールブラックスに勢いが出る。
 加えて、10番ライハナ、15番ザーン・サリヴァンというキックに定評がある2人がエリアマネージメントの面で重要な役割を担う。
 バランスの取れた、抜け目のないセレクションだ。

 マオリ・オールブラックスの選手たちにとって、この試合は単なる一戦ではない。ここでアピールすればオールブラックス入りも視野に入る。

 昨年の来日メンバーPRオリー・ノリスは、今年初めてオールブラックスに選ばれた。昨年の雪辱を晴らすという目的に加え、各選手が自身のキャリアを懸けて戦う。モチベーションは高い。
 試合当日は、登録メンバー以外の選手もマオリ・オールブラックスの魂を揺さぶる「ハカ」に参加する。プレーと合わせて、日本のファンに「マオリ魂」を全身で届ける。

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