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【Just TALK】「我慢というワードがいっぱい」。清水健伸[早大3年]
各カテゴリーでキャプテンシーを発揮してきた。(撮影/向 風見也)

【Just TALK】「我慢というワードがいっぱい」。清水健伸[早大3年]

向 風見也

 早大ラグビー部3年の清水健伸は、「本当にありがたい経験をさせてもらいました」と強調する。

 今年3月、有望な大学生に国際基準を涵養する「ジャパンタレントスコッドプログラム」(JTS)にピックアップされた。4月には、オーストラリア遠征をする23歳以下(U23)日本代表の主将を託された。

 昨季、約9年ぶりに日本代表のヘッドコーチとなったエディー・ジョーンズが指揮を執るなか、リーダーの役目を再認識した。

 その経験を話したのは6月22日。関東大学春季大会Aグループの最終戦の直後、即席のインタビューに応じた。

 この日は持ち場のフッカーで先発フル出場した。大学選手権4連覇中の帝京大を36-35で下した。
 
——まずは帝京大との試合について伺います。

「我慢が続く試合だと感じました。相手陣のゴール前に入った時、自陣のゴール前に入られた時の我慢が、両チームにありました」

——13点ビハインドを背負ってラスト10分に突入し、逆転する展開でした。これも「我慢」のおかげ。

「もうミスはできないなか、『我慢、我慢』っていう感じはしていました。絶対に負けないという気持ちと、絶対に止めるという気持ち…。その、我慢比べで、勝てたかなと。本当に、『我慢』というワードがいっぱい出てきます」

——その時の仲間の顔つきは。

「燃え尽きることなく、常にたぎっているというか、もう『絶対にいける』という自信があったかなと」

——スクラムは。

「きょうはスクラムなどのセットプレーが多かった。『行く時は、行く』という風に話していて、(反則を)取れていた。安定したセットプレーが見せられました。(帝京大は)裏表とも(先発、リザーブとも)強かったですが、アジャストできました」

 一進一退のスクラムについては「行く時は、行く」。両軍への取材を総合すると、早大が組み勝ったシーンでは組み合う瞬間の仕掛けが効いたようだ。

力強いボールキャリー。昨季の大学選手権より。(撮影/松本かおり)


 身長178センチ、体重96キロの清水は、江東ラグビークラブ、ワセダクラブ、國學院久我山高を経て2023年に早大入り。高校日本代表、20歳以下日本代表への選出歴がある。

 春季大会に先んじて臨んだJTS、U23日本代表の活動では、有事におけるリーダーシップが求められた。そういえば高校時代も主将を担った。

——ここからはJTSについて振り返ってください。

「オーストラリアのツアーで学んだチームがまとまる大切さ、視点は、早大で還元できています。

(一般的に)疲れてきた時に、皆、『個々』になってしまう風潮がある。そういう時にリーダーが声掛けをして、まとめることがすごく(大事)」

——活動中、その必要性を感じたのですね。

「何か…。いろいろとそういう場面はあって、まとめないといけないという使命感がありました」

——思い出せる「場面」は。

「エディーさんが練習を止めて、『何で(全力で)やらないんだ!』と。そこは、リーダーが先に気づいて変えさせる(べき)というのが、エディーさんから学んだことです。それがリーダーの責任だと感じました」

——ジョーンズさんは、選手の臨む態度によってはその場で練習を切り上げます。過去の日本代表でも見られた風景です。清水選手は若くしてそれを経験した。

「そうですね。『そこはお前たちリーダーの責任だ』という風には言われました。

(トレーニングの強制終了は)遠征前の千葉での合宿でも、オーストラリアでもありました。『練習をやっても意味がない』となれば、絶対に切り上げられるので。いろんな日にありました」

——その都度、心がけたことは。

「『(周囲に)厳しい言葉をかけるなかでも、仲間のやる気をどう出させるか』意識しました」

——誰かに喝を入れるにしても、相手の気持ちを慮る。

「個人に対してと、全体に対してでは、伝えるメッセージが違う。そういう感じです」

U23代表でのオーストラリア遠征では3試合で主将を務めた。©︎JRFU


——そもそも幼少期からリーダーを任されるタイプだったのですか。

「物事に対して負けず嫌いみたいなことがあり、小さい時からリーダーを任されることは多かったです。ただ、(その時々の)チームに求められる形ではできてなかったかな、と自分では思っていて。ただJTSでエディーさんにいろいろと学ばせてもらった感覚です」

——ジョーンズさんはメディアを通し、清水選手には2027年のワールドカップで日本代表の主将を務めるだけのポテンシャルがあると話しています。ご存じですか。

「知っています。そこまでいきたいし、期待されているのはすごく嬉しいですけど、そこには、自分がやるべきことをやらないといけない。常に成長を求めてやっていきたいです」

——あらためて今年の目標は。それまで複数の位置でプレーも、いまはフッカーに専念していますが。

「セットプレーに関しては100パーセント(確保)でき、冷静で、リーダーシップがあるフッカーになりたいです」

——将来はどんな選手になりたいですか。

「いま言ったことがすべて。リーダーシップを持った、セットプレー、フィールドに安定感があって、何事も任せられる選手になりたいです」

 チームにひとりは清水健伸。その領域を目指す。



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