![苦しい時、痛い場面にいちばんに。八尋祥吾[青山学院大学/主将]](https://www.justrugby.jp/cms/wp-content/uploads/2025/06/0D4A4077_2.jpg)
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30年ぶりに全国大学選手権出場を果たした昨シーズンも勝てなかったタイガージャージー相手に28-24の僅差で勝った。
6月15日に慶大・日吉グラウンドでおこなわれた関東大学春季交流大会、Bグループの一戦で、青山学院大が慶大に競り勝った。
雨上がりの蒸し暑い中でおこなわれた試合は、途中で雨が降ったり、強い日が照りつけたり、プレーヤーにとっては過酷な状況下でおこなわれた。
青山学院大は序盤からよくボールを持ち、攻め続けたもののスコアできず、前半8分には先制点を許した。
しかし、SO井上晴生の伸びるキックも奏功して徐々に自分たちに流れを引き寄せる。13分、20分、39分と3連続トライを挙げ、21-7としてハーフタイムを迎えた。
後半に入って4分にFWで攻め切られて21-12とされるも、20分にFL松﨑天晴がこの日2つ目のトライを挙げて28-12とする。いい空気を作り、勝利に近づいた。
しかし、後半26分に7点を返された後、35分には慶大BKに左サイドを見事に攻略されて4点差に迫られた。

最終的には試合終了直前まで勝敗の行方のわからぬ展開となったものの、青山学院大は全員が動き続けて勝利をもぎ取った。
青山学院大の主将を務めるのは八尋祥吾(やひろ・しょうご)。168センチの小柄なフランカーは試合後、額に汗を滴らせながら「練習してきたことを発揮できた結果が、きょうの勝利でした」と表情を崩した。
「ここ数試合、立正、法政、定期戦の関西学院戦と、いいイメージをつかめていなかった」という。
5月18日の立正大戦は6トライを挙げて40-33。その後、6月1日の法大戦では12トライを許して26-76と大敗。6月8日の関西学院大戦は神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で戦い、11失トライで19-73だった。
慶大戦は大敗の試合が続いた直後の試合だった。
しかしこの1週間、勝ちたい気持ちを前面に出して、「強気でいこう」と練習時から気持ちを込めて過ごした。
「僕たちの(チームの)特性、性格なのですが、いい練習ができているときは、いい勝ち方、いいゲームができる。一方で、(練習から)甘さが出ていたり、チームがばらついていると、それが顕著にゲームに出る」と的確に自己分析をする。
「関学(戦を終えて)からの1週間は練習から、何がなんでも目の前の勝負にこだわって勝つ意識を徹底しました。いい練習だった」
2024-25シーズンの関東大学対抗戦では3勝4敗の5位。30-22と筑波大に勝ったことなどが効き、全国大会の切符も手に入れた。
そんな充実したシーズンを終えて新チームとなった。春季大会のグループ分けは前年の成績を踏まえておこなわれるから、今季はBグループ。1年前のCグループから1つ上となった。
だから対戦相手も例年より手応えがある。
実際、この春は筑波大、流経大と、力のあるチームとの対戦から対外試合が始まった。それぞれの試合で、14-45の大敗(4月20日)、48-37(5月4日)という成績を残した後、前述のように、立正大戦以後の戦いを重ねた。
この春はここまで、関西学院大との定期戦を含めて3勝3敗である。
自分たちの足取りを振り返って主将は、「なかなか、去年よりうまくいっているイメージがつかめない」と話す。
「去年のメンバーも多く残っているし、集中できている時はすごくいい。しかし、例年より強い相手との対戦が続くため、自分たちの実力が去年と比べてどうなのかはかるのが難しい」
力はついているのだけど、負けるし、勝っても苦戦する。

「なので、点差やゲーム内容に関わらず、自信だけはなくさないようにしよう、と(全員に)言っています」
そういう意味でも、慶大に勝ったのは大きい。
「(自分たちの成長を信じていながらも)このまま進んでいっていいのかな、という不安があった。(そういう中で)やってきた結果がきょう出たので、自信がつきました」
キャプテンの八尋は東福岡高校でも主将を務めていた。かしいヤングラガーズでラグビーを始め、中学時代は福岡県選抜でも主将。高校3年時は全国選抜大会優勝も、花園では準決勝で敗れた。
頂点には立てなかったが、抜群のリーダーシップと躊躇のないタックルで信頼が厚かった。
青山学院大に進学しても、信頼の厚さは変わらず1年時からピッチに立ち続けた。
ルーキーイヤーから3シーズン、関東大学対抗戦で出場しなかった試合は2年時の帝京大戦だけ。それ以外、すべてフランカーの位置でタックルし、ブレイクダウンに頭を突っ込み、ボールキャリーと働き続けている。
試合に出場し続けている人を見続けていると、月日が経つスピードがはやい。あっという間に4年生になった感覚。
「自分自身もそう感じます。でも、1年から試合に出してもらい、すべてのシーズンに学びがあったので、振り返れば、毎年確実に、いい時間を過ごしたと思えます。絶対に成長し続けていると、チームと自分を信じて今シーズンを戦います」と力強い。
常に中心選手だったけれど、ど真ん中にいたわけではないと思っている。
「1年生の頃は近鉄でプレーを続けた金澤(春樹)さんに引っ張られていました。あの人についていって、やり続ければいいと思っていました。2年生では、1年の時から出ているから前線で周囲を引っ張るのだけど、チームやSOの青沼(駿昌)さんに引っ張られていました」

上級生の3年生になり、「引っ張る側に回り、体を張り続け、走り続けた」自負はあるが、やはりラストイヤーは気持ちが違う。
「4年生です。僕のチームだと思っているので、一番前で死ぬ気で戦い続けたいと思っています」
覚悟はできている。
夏を超えてチームは、もっと強くなれるだろう。そして秋、昨季以上のシーズンにしたい。
「自分たちの性格から考えても、一日一日、いいものを積み重ねていけば、絶対に強くなるチーム。その自信は揺るぎません。上位校にも負ける気はしないし、そこにも食ってかかれるチームを作りたいと思っています」
「アタックもディフェンスも、いちばん苦しいときに一番にいきたい。痛いところにも」
キャプテンだからではなく、フランカーとしてでもない。それが自分なのだ。