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【スーパーラグビー・パシフィック/準決勝展望】復調クルセイダーズ×逆襲のブルーズ、幸運の敗者チーフス×巧者ブランビーズ
準々決勝でのクルセイダーズFBウィル・ジョーダン。(Getty Images)

【スーパーラグビー・パシフィック/準決勝展望】復調クルセイダーズ×逆襲のブルーズ、幸運の敗者チーフス×巧者ブランビーズ

松尾智規

 スーパーラグビー・パシフィックの4強が出そろった。
 準決勝の組み合わせは、スーパーラグビー以前から、カンタベリーとオークランドのライバル関係にあるクルセイダーズ×ブルーズが激突する一戦と、「幸運の敗者」で生き残ったチーフスが唯一オーストラリア勢で勝ち上がってきた強豪ブランビーズを迎え撃つ顔合わせだ。
 2年前(2023年)と会場も対戦カードも同じとなった今回の準決勝は、どちらのカードも白熱した展開が期待される。

 準決勝2試合の会場となるニュージーランド(以下、NZ)は盛り上がっている。テレビのスポーツニュースは準決勝に関する話題を取り上げ、スポーツトークバックラジオでは、ラグビーファンが電話越しに興奮を語っている。
 今季不振ながらも辛うじてプレーオフに滑り込んだブルーズ(6位)がチーフス(1位)を破る波乱があるなど、見ごたえのあった準々決勝を振り返り、準決勝の展望をしてみたい。

【準々決勝3試合(6月6、7日)の結果】
●クルセイダーズ32-12 レッズ
 クライストチャーチは冬の雨が降り、非常に冷え込んだ。比較的温暖なブリスベンから来たレッズにとっては、この過酷な条件が多くのミスを誘発する要因となった。
 一方、好調を維持しているクルセイダーズは、ホームアドバンテージを充分に活かし危なげなく勝利をものにした。

●チーフス 19-20ブルーズ
 まるでテストマッチのような緊迫した一戦だった。
 前半は両軍トライがなくハーフタイムはチーフスが 9-3とリード。後半に入り試合が動き出し、チーフス優勢で13点差(19-6)をつけた時点で試合を決めたかに思われた。
 しかし、そこからブルーズが反撃を開始した。ロスタイムに入り、6点ビハインドの状況。途中出場のLOジョッシュ・ビーアが数人のディフェンダーを引きずりながら圧巻のトライを決めた。10番ボーデン・バレットの正確なゲームメイクとサヨナラ・コンバージョンがブルーズを逆転勝利に導いた。

●ブランビーズ 35-28ハリケーンズ
 試合の分かれ目になったのは、前半終了間際と後半の早い段階でブランビーズが連続トライを挙げて14点差(28-14)にした事だろう。チャンスを確実にトライに繋げたブランビーズに対し、後半のハリケーンズは、トライを取るのに手こずった。
 タイトな試合だったが、試合巧者のブランビーズが勝利をものにした。

激戦となった準々決勝のチーフス×ブルーズ。(Getty Images)


◆「幸運の敗者」はチーフス。準決勝の第1シードはクルセイダーズに


 準決勝進出チームは、準々決勝を勝ち上がったクルセイダーズ、ブランビーズ、ブルーズの3チームに加え、新たなプレーオフフォーマットで導入された「幸運の敗者」として、レギュラーシーズンの順位が最も高かったチーフスが準決勝への切符を掴んだ。

 通常、レギュラーシーズンで1位だったチームが準決勝でも第1シードとなるが、今季のプレーオフのフォーマットでは、敗者として準決勝に進んだチームは、シード順位が1つ下がるため、以下の通りシードが入れ替わる事になった。

・クルセイダーズ(レギュラーシーズン2位)が第1シードに繰り上がる
・チーフス(レギュラーシーズン1位)が第2シードに

 結果、準決勝の組み合わせは、第1シードのクルセイダーズと第4シードのブルーズ(レギュラーシーズン6位)、そして第2シードのチーフスと第3シードのブランビーズ(レギュラーシーズン3位)となった。

 ただ、準々決勝で負けたにもかかわらず、チーフスが準決勝もホームで戦う事になった点については、疑問の声がたくさん挙がっている。そのため、シーズン終了後に見直しがおこなわれるようだ。

◆準決勝2試合のプレビュー


◆クルセイダーズ×ブルーズ
6月13日(金)NZ現地時間7:05 PM/日本時間4:05 PM /クライストチャーチ

 今季3度目の対戦となる因縁の対決。レギュラーシーズンでの対戦は、6節(3月22日)42-19、10節(4月18日)25-22と、いずれもクルセイダーズが勝利している。
 しかし10節の対戦は、ロスタイムでSOジェームズ・オコナーのサヨナラPGで決着がつく大接戦だった。

 ホームのクルセイダーズは、準々決勝で負傷退場したPRタマティ・ウイリアムズの欠場が注目点だ。140キロを超える巨漢ながらワークレートも高いウイリアムズが、この大一番を欠場する影響が気になる。ウイリアムズの欠場で1番にはジョージ・バウアーが入る。

 この変更について指揮官のロブ・ペニーは、「ジョージ(バウアー)は我々にとって素晴らしい存在であり、何度か長い時間プレーした経験もあるので、素晴らしい仕事をしてくれることは間違いない」と語った。

 しかし今季はケガが相次ぎ、PR陣の層が厚いとは言えない。接戦になればたとえ疲労が見えようが、バウアーが80分間戦い抜く事になるかも知れない。大一番だ。その点が気になる。
 LOジェイミー・ハナがテイラー・ケーヒルに代わってベンチ入りする点も変更点だ。

 ブルーズ側の変更は前週から1人のみ。コーリー・エバンスに代わり、ザーン・サリヴァンが15番に指名された。この変更に関して指揮官のバーン・コッターは、「サリヴァンのキックはいま、おそらく国内で最も強力だろう」と語っている。ブルーズがキックを多用する戦術を考えていると推測できる。

 プレーオフという負けられない状況とクライストチャーチの冬の気候を考慮すると、試合はキッキングゲームになる可能性が高い。両軍の司令塔(10番)と最後尾のFB(15番)のキックの精度が試合の鍵になる。
 10節で対戦した際の接戦では、クルセイダーズのスクラムがブルーズを圧倒し、何度も反則を誘った。それが試合の流れを大きく左右した。

 しかしブルーズは、、前回の対戦からPR陣のケガ人が復帰。経験豊富なフロントローがベンチに控えている。ブルーズがスクラムで対抗できれば勝機が見えてくるかもしれない。

両チームの公式SNSより


 クルセイダーズは先週の勝利で、ホームでのプレーオフ無敗記録を更新した(30連勝)。
 この記録はポジティブにもとらえられるが、記録のプレッシャーがかかるともいえる。

 ブルースには特別なモチベーションがある。
 癌から復帰していたものの、再び闘病する事になったチームメイトの存在だ。FL/NO8のキャメロン・スアフォアが先日、手術を受けた。チームには、彼のために戦うという強い思いがある。
 チーフスに勝利し、勢いもある。病と闘うスアフォアに勝利を届けたい。

 2年前の準決勝も今回と同じクライストチャーチで対戦し、その時は52-15でクルセイダーズが圧勝した。当時のブルーズの、打ちひしがれた姿は今でも目に焼き付いている。その時の屈辱も胸に、今回はリベンジに燃えている。

【注目マッチアップ】
・クリスチャンリオウィリー×ホスキンス・ソトゥトゥのNO8対決
・リヴェス・ライハナ×ボーデン・バレットの10番対決
・ウィル・ジョーダン×ザーン・サリヴァンの15番対決



◆チーフス×ブランビーズ
6月14日(土)NZ現地時間7:05 PM/日本時間4:05 PM /ハミルトン

 準々決勝で「幸運の敗者」となったチーフスが再びホームで準決勝を迎える。
 迎え撃つのは、オーストラリアの強豪ブランビーズ。両チームは今季、3節(3月1日)に今回の準決勝と同じ会場のハミルトンで対戦している。前半は15-15も、最終的にはチーフスが49-34で勝利している。

 ホームのチーフスは、準々決勝から先発メンバーの変更は4人。FWでは1番にオリー・ノリスが入り、前週、試合前に急遽欠場となったキャプテンのルーク・ジェイコブソンが7番で先発復帰。前週ベンチスタートのウォレス・シティティは、ケガで今週欠場するサイモン・パーカーに代わってNO8で先発に復帰する。

 BKでは、2週前に目の上を大きく切ったクイン・トゥパエアが準決勝に間に合い12番を付けて復帰となった。
 これにより、先週7番で先発したケイラム・ボーシェーと同じく先週12番で先発のギデオン・ランプリングの2人は、今回はベンチスタートとなった。

 先週ベンチスタートのLOジョシュ・ロードが脳振盪により欠場となった。ジミー・トゥポウがLOのカバーでベンチ入りした。

チーフスの公式SNSより
ブランビーズの公式SNSより


 一方のブランビーズは、準々決勝からベンチを含めてメンバーの変更はなし。攻撃力のあるハリケーンズ相手に貫録勝ちした事を考えると、あえてメンバーを代える必要はないと納得できる。
 現役時代はワラビーズ(オーストラリア代表)で大活躍したブランビーズの指揮官、スティーヴン・ラーカムは、「選手たちは絶好のタイミングでピークを迎えている。週末(準々決勝)の選手たちのプレーは本当に素晴らしかった」と自信があるコメントをしている。

 準々決勝でハリケーンズ相手にタフな試合を制したブランビーズの勢いは、チーフスにとって脅威となるだろう。安定感抜群のセットピース(スクラム、ラインアウト)を武器にクオリティーの高いBK陣は一気にトライを奪う力がある。

 試合巧者のブランビーズ相手にチーフスはどう戦うか注目される。モールが得意な相手に対し、自陣深い位置でのラインアウトは絶対に避けなければいけない。モールの攻略も試合の鍵を握る。
 セットピース対決をはじめ、ブレイクダウンの攻防、豪華なBK陣の対決と見ごたえ満載の試合が期待される。

 チーフスの指揮官クレイトン・マクミランは、先週の反省を踏まえ「今週はフィジカルに戦うこと、規律を守ること、自分たちのスタイルを貫くことが重要」と語っている。

 3月の対戦では、トライ数は両チームとも6個と同じだったが、ゴールキックの差(3PG,3G=15点)でチーフスが勝利した。今回も接戦が予想されるだけに、ゴールキックの精度を含めたキッキングゲームが鍵になりそうだ。
 2年前の準決勝での対戦は、19-6でチーフスが勝利している。

【注目マッチアップ】
・サミペニ・フィナウ×ロブ・ヴァレティニの6番対決
・ダミアン・マッケンジー×ノア・ロレシオの10番対決
・ショーン・スティーヴンソン×トム・ライトの15番対決





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