![【日本代表候補合宿】どん底から再び。メイン平[リコーブラックラムズ東京]、スピードアップ。](https://www.justrugby.jp/cms/wp-content/uploads/2025/06/0D4A2355_2.jpg)
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約700日も沈黙していた。
そんな日々から這い上がって、リーグワン2024-25の第6節以降はシーズン終了まで13試合に連続して先発出場。そのパフォーマンスが認められ、シーズンオフも代表候補として活動を続けている。
リコーブラックラムズ東京のバックスリーで活躍するメイン平の姿が、菅平でおこなわれている日本代表候補合宿(6月4日〜11日)にあった。
リーグワンでの最終戦を終えた後、大分でのJAPAN XVの活動に招集された。同地でNZU(ニュージーランド大学クラブ選抜)、ホンコン・チャイナ代表との試合、2試合に出場した。
その2戦にはWTBとして出場したメインは、今季のブラックラムズではWTB、FBの両ポジションでプレー。菅平合宿ではCTBに入ることもあった。
FBのポジションを狙っていきたいけれど、複数ポジションでレベル高くプレーできるのも自分の強み。エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ(以下、HC)との面談時も、自分のユーティリティープレーヤーとしての能力をアピールした。
「それはシーズン中のプレーも見ていてくれたようで、知っていました」と頬を緩める。
日本代表キャップ1。それは、2022年6月18日に来日していたウルグアイ代表と秩父宮ラグビー場で戦った際に得たものだ。
しかし、その半年後に開幕したリーグワン2022-23のシーズン中に負傷する。2023年3月4日のNECグリーンロケッツ東葛戦だった。
次の公式戦が2024-25シーズンの第6節(2025年2月1日)、コベルコ神戸スティーラーズ戦になると、誰が思っただろうか。
左足ハムストリングの怪我から始まり、右膝の前十字靭帯断裂を負う。リハビリからやっと復帰したと思ったら、2024-25シーズン開幕前のプレシーズンマッチ最終戦で右膝半月板を痛めた。不運続きだった。

どん底を味わい、少しずつ階段を昇ってきて、いま再び日本代表が視野に入る位置まで来た。
「シーズン中は考えていなかったことですが、いまここにいて、自分次第でチャンスをものにできるかどうか決まると、あらためて感じています」と話す。
充実の毎日を過ごす。
ジョーンズHCのラグビーに初めて触れ、「自分に合っている」感覚を得た。
「相手より自分たちの方が小さいことをメリットに、走り勝つ、スピードで上回るラグビー」と理解する。
求められていることはシンプル。しかし細部にこだわり、妥協を許さない。
「オフ・ザ・ボールの間にたくさん動き、セイムウェイ(順目)に動き続ける。難しいことは求められていないのでやりやすい」一方で、ディテールにこだわる。
「ブレイクダウンの入り方や、アタックシェイプの形は細かいところまで決まっています。しんどい中でも正しいポジショニングを求められる。そこは神経を尖らせ、気をつかっています」
バックスリーに求められていることを理解して動く。
「ボールを持っていない時にどれだけ走り、ボールに絡めるか。合宿でもミーティングでも、その点を言われています。どれだけボールに触れるかが見せどころ。待っていてはダメ。自分から取りにいかないと」
これまで取り組んだことがないスタイルの中で、もっとスピードを高めないといけないと感じた。
2024-25シーズン途中での復帰は、実は、「ラグビーから離れすぎていたので、とにかく早く戻りたかった」との思いから見切り発車だった。
メディカルチームの協力も得て、プレーしながら調子を上げていく道を選んだ。高校(御所実)時代も前十字靭帯断裂、復帰をしている。その経験もあった。
そんな状況での復帰だったから、本格的なスピードトレーニングに取り組めぬ状態のままシーズンを乗り切り、代表活動に加わった。
「S&Cコーチのジョン・プライヤーさんとランニングフォームを確認したら、(自分の動きは)よくなかった。なのでいま、ドリルに取り組み、修正しているところです。そのお陰で状態は上がってきています」
足の接地に気を配っている。
これまで足裏全体で接地していた。それでは地面からの反発が弱まる。足首を固めて爪先で接地すると、地面からの反発もあってバネの利いた動きとなり、前へ進むスピードも出ると教わった。
「その動きを徹底しようとしています。足首を意識する。最初は慣れないけど、自然にやっていけるようになると逆に疲れなくなるそうです」
GPSで計測するスピードも高まっている。
久々にシーズンを通してプレーしたことで、経験値が高まった手応えがある。
今季はキッカーも務めた。責任の比重が高かったハイボールへの対応でも期待に応えた。3T25G8PGで挙げた89得点は、ディビジョン1の中で11位にランクされた。
2022年6月以来、3年ぶりに近づいた代表への思いについて、「チャレンジャー。自分のベストを尽くしたい、という点では(以前と)変わらない」と話すも、代表選手たちの中での振る舞いには変化がある。

24歳。スコッドには年下も増えた。
「中堅になりました。リーダーシップも発揮していかないといけないと思います」と言って、「ウルグアイ(戦の日本代表)の頃は、乗客ではありませんが、集団のうしろの方にいる感じでした。でも、いまはミーティングで積極的に話しています」と続けた。
姿勢でも示す。「自分がやらないと、というハングリー精神もあります」。
ブラックラムズでのTJ・ペレナラ(NZ代表89キャップ)の日常に感じることがあった。
「オフ・ザ・フィールドでもいちばん練習して、ミーティングでも積極的。あれがインターナショナル(プレーヤー)のスタンダードだと思いました」
ワールドクラスのSHは、意識してそれを伝えようとしたわけではないけれど、同じ空間にいて参考になることはいくらでもあった。
雌伏の時間が長かった分、溜め込んだ学びをすべて吐き出して、もう一度代表ジャージーをつかみ取りたい。
「ウェールズ戦(7月5日、12日)、出られるものなら出たい」と言葉は控え目も、「勝ち取れるようにしたい」と静かにターゲットを定める。
先は見ず、毎回の練習で力の限りアピールをする。菅平合宿の4日目に、そう話した。
毎日、それぞれの練習を「全力でやるだけ」。そうしない限り、JAPAN XVで戦うマオリ・オールブラックス戦(6月28日)も、レッドドラゴンとの対峙もないと知っている。
日本代表ジャージーの重さも、どん底も経験したから分かる。