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【スーパーラグビー・パシフィック】クライマックス間近。NZ4チーム、AUS2チームのプレーオフが始まる
レギュラーシーズンを首位で終えたチーフスのSOダミアン・マッケンジー。(撮影/松尾智規)

【スーパーラグビー・パシフィック】クライマックス間近。NZ4チーム、AUS2チームのプレーオフが始まる

松尾智規

 いよいよ2025年度のスーパーラグビー・パシフィックも今週末からクライマックスを迎える。
 今季からフォーマットが変更され、プレーオフを戦うのは、昨季の8チームから2チーム減。レギュラーシーズンの上位6チームが頂点をかけて激突する。

 今季の注目すべき変更点は、1チームだけに「幸運な敗者」の権利が与えられる事だ。
 準々決勝の敗者のうち、レギュラーシーズンの順位が最も高かったチームは準決勝に進出するチャンスが与えられる。これは、首位通過のチーフスだけは、勝ち負け関係なく準決勝に進出できる事を意味する。
 6月6日(金)と7日(土)の2日間で開催される準々決勝の3試合は、いずれも白熱した試合が予想される。中でも注目と言えるが7日におこなわれるチーフス×ブルーズ、ブランビーズ×ハリケーンズ の2試合だろう。

【プレーオフのフォーマット】
・準々決勝はレギュラーシーズンの1位×6位、2位×5位、3位×4位。。
・各試合の勝者と、敗者の中で最も順位の高かった1チームが準決勝進出
・準決勝進出チームは、レギュラーシーズンでの順位により再びシード
・敗者として準決勝進出のチームは、1つ下のシード順位を適用(例えばレギュラーシーズン1位チームが準々決勝で敗れた場合、準決勝では2位として扱われる)
・準決勝は再シード後の1位×4位、2位×3位が対戦。それぞれの勝者がグランドファイナルへ

 ニュージーランド(以下、NZ)勢を中心にレギュラーシーズンを振り返り、準々決勝を展望してみたい。

【レギュラーシーズン(全16節)を終えての順位表】

1 チーフス(11勝3敗、51P)、NZ 
2 クルセイダーズ(11勝3敗、49P)、NZ
3 ブランビーズ(9勝5敗、44P)、AUS
4 ハリケーンズ(8勝5敗1分、39P)、NZ
5 レッズ(8勝6敗、38P)、AUS
6 ブルーズ(6勝8敗、33P)、NZ
7 モアナ・パシフィカ(6勝8敗、28P)、パシフィック
8 ワラターズ(6勝利8敗、26P)、AUS
9 フォース(4勝9敗1分、23P)、AUS
10 フィジアン・ドゥルア(4勝10敗、20P)、フィジー
11 ハイランダーズ(3勝11敗、20P)、NZ
※チーム、勝敗、ポイント(勝ち点)、国名の順

 プレーオフに残った6チームの内訳は、NZ勢が4チーム、オーストラリア(以下、AUS)勢が2チームとなった。中盤まではAUS勢が優勢だったが、最終的にNZ勢が巻き返す形となった。

●チーフス(1位通過)
充実のFW陣。気になるCTB陣のケガ。 

 シーズン中盤を過ぎたあたりで若干足踏みした感があったものの、終盤の4試合で調子を上げてきた。良い形でプレーオフを迎えることになった。
 ケガで出遅れたHOサミソニ・タウケイアホ、FL/NO8ウォレス・シティティのオールブラックスの2人が戻ってきてからはFWに厚みが増した。
 シーズン終盤に入って経験豊富なアントン・レイナートブラウン、クイン・トゥパエアの2人のCTBが揃って負傷した。それがプレーオフにどう影響するか気になるところだ。層の厚さで乗り切れるか注目される。

●クルセイダーズ(2位通過)
絶対王者復活に向けて、引き続き10番のポジションが鍵


 前週、2位の座を懸けてブランビーズとの直接対決を戦った。その試合は、勝負を決めるトライ直前のミスが見逃されるなど、レフリーのジャッジに疑問も残る結果となった。しかし上位通過を実現し、昨季の絶不調からしっかり立て直したと言える。
 昨季同様、鍵となっている司令塔(SO)のポジションは、今季錯覚したタハ・ケマラが開幕から活躍。ケマラが膝の負傷で離脱後は、リヴェス・ライハナが良いパフォーマンスを見せて穴を埋める形となった。ライハナがプレーオフの大舞台でどこまでやれるか注目だ。経験豊富なSOジェームズ・オコナーも健在で、CTBもこなすなどプレーオフに向けて存在価値を高めている。
 FW陣に目を向けるとタフさが戻ってきているのが頼もしい。7番にトム・クリスティーを毎試合起用するようになりチームが安定してきた。さらに、FLイーサン・ブラカッダーが長期のケガから復帰し、最終節の復帰戦では40分の出場ながらも力強いプレーを見せたことは明るい材料だ。

成長したクルセイダーズのSOリヴェス・ライハナ(撮影/松尾智規)


●ハリケーンズ(5位通過)
充実のFW、BKのキープレーヤーの復帰で急上昇


 ケガ人を多く抱えた序盤は苦戦した。その後少しずつケガ人が戻り、10番のポジションにルーベン・ラブを起用したことで上手くいった。その後CTBビリー・プロクターの復帰に続き、SOブレット・キャメロンも予定より早く復帰を果たし、BK陣の層が厚くなった。結果、攻撃に厚みが出た。終盤の5連勝はチーム状態の良さを示している。
 FW第3列を筆頭に相変わらず充実のFW陣は、プレーオフでも充分勝てる戦力になっている。

●ブルーズ(6位通過)
昨年王者の逆襲なるか?


 昨季の王者は、FL/NO8アキラ・イオアネの移籍やLO/FL/NO8キャメロン・スアフォアの再離脱が大きな痛手となった。これらのパワーランナー不在により昨季のゲームプランが機能しなくなり、苦戦が続いていた。  
 勝ち星よりも負け数が多いものの、リーグ最多の9ボーナスポイントを獲得し、なんとかプレーオフに食らいついた。そして迎えた最終節のワラターズ戦で46-6圧勝し、滑り込みでプレーオフ進出を決めた。
 昨年の王者が目を覚ませば、6位から一気に頂点へ駆け上がる可能性も否定できない。ブルーズの逆襲はあるのか⁉

実力者が揃うブルーズ。(撮影/松尾智規)


●モアナ・パシフィカ(7位、プレーオフ外)
アーディーの存在とパシフィック魂


 惜しくもプレーオフを逃したものの、パシフィック魂が爆発し、今季は大きく飛躍した。チーフスを除くNZのフランチャイズのチームに勝利した事は、実力がついた証拠であり、高く評価できる。
 今季の躍進はラグビーファンを大いに楽しませた。その結果、これまで観客の入りが悪かったノースハーバー・スタジアム(オークランド)に観客を呼び込むことに成功した。
 なんといっても今季加入のオールブラックスの大黒柱、FL/ NO8アーディー・サヴェアの存在が光る。プレーだけでなく存在自体がチームのレベルを上げた。来季がいまから楽しみだ。

いまから来季が楽しみなモアナ・パシフィカ。チームを変えたアーディー・サヴェア。(撮影/松尾智規)


●ハイランダーズ(11位、プレーオフ外)
序盤の勢いはどこへ。課題の司令塔問題は続く


 最下位でのシーズン終了は、期待外れと言っていい。序盤は、ブルーズで試合に飢えていた新加入のWTBケイリブ・タンギタウのトライ量産でチームに勢いがあった。しかし、タンギタウの離脱後からチームは得点力を失った。毎試合インパクトあるプレーで魅せたCTBティモチ・タヴァタヴァナワイがリーダーとしてチームを支えるも、1人での活躍には限界があった。
 今季も課題だった司令塔は、キャメロン・ミラー、テイン・ロビンソンの2人が伸び悩み、司令塔問題を抱えたままシーズンを終えた。

◆プレーオフ準々決勝3試合のプレビュー


クルセイダーズ(2位)×レッズ(5位)
6月6日、NZ現地時間7:05 PM/日本時間4:05 PM/クライストチャーチ

 プレーオフの開幕戦は、クルセイダーズのホームのクライストチャーチでおこなわれる。
 レギュラーシーズンでの両チームの対戦は、3節(3月9日)に7トライの猛攻を見せたクルセイダーズが43-19で勝利している。
 NZ国内での大方の予想は、今季しっかり立て直してきたクルセイダーズが優位と見ている。しかし、粘り強いレッズは、NO8ハリー・ウイルソンがシーズン終盤にケガから戻ってきた。BKもクオリティーの高い選手が揃っている。簡単に勝てるとは言い難い。
 クルセイダーズは、13節(5月9日)に膝を負傷したFBウィル・ジョーダンがプレーオフに間に合った。昨季はジョーダンの全欠がチームが苦戦した大きな要因だった。この復帰戦での回復具合が、王者奪回を目指すにあたって大きなポイントとなりそうだ。

【注目マッチアップ】
・クリスチャン・リオウイリー × ハリー・ウィルソンのNO8対決
・リヴェス・ライハナ × トム・ライナーの10番対決

それぞれのチームの公式SNSより


チーフス(1位)×ブルーズ(6位)
6月7日、NZ現地時間7:05PM/日本時間 4:05PM/ハミルトン

 両軍の対戦は、オークランドとハミルトンの境界にあるボンベイと言う街にちなんで「バトル・オブ・ザ・ボンベイ」と名がつくほどだ。盛り上がらぬわけがない。
 今季レギュラーシーズンで2度対戦しており、第1節は25-14、第6節は32-31と、いずれの試合もチーフスが勝利している。
 チーフスのメンバーは、FW、BKともに充実の一言に尽きる。前週のハイランダーズ戦から先発メンバーを9人入れ替えてきた。ケガから復帰後すぐにチームにコミットしたFL/NO8シティティをベンチに下げて、今季6番でインパクトあるプレーをしているサイモン・パーカーをNO8にしたことは興味深い。
 そして今季スーパーサブとして後半からの出場が多かったサミペニ・フィナウが先週に続いて6番で先発メンバーに入った。

 BK陣に目を向けると、最終節にヘッドコンタクトで途中退場したCTBトゥパエアが欠場となり、代役はギディン・ランプリングを12番に指名した。タックルの高さを始め規律面で不安視されるものの、パワフルなランは相手には脅威となりそう。

 一方のブルーズは、前週の最終節からの変更はわずか1人。6番にエイドリアン・チョートを先発に昇格させアントン・セグナーをベンチに下げた。フィジカルバトル戦を意識しての入れ替えと言えるか。
 ブルーズは、前週ワラターズに46-6の大差で勝って勢いに乗っている。チーフス戦は間違いなくタフな試合となるが、FWが粘り強く耐えることができ来れば、豪華なBK陣を活かすことができるだろう。調子を上げてきたWTBケイレブ・クラーク、CTBリーコ・イオアネらのスター選手が目立つ展開となれば、試合が面白くなる。

 チーフスは昨季の決勝のリベンジに燃えている(10-41で敗戦)。ブルーズは、同じ相手に年に3度も負けるわけにはいかない。
 試合を前にブルーズの指揮官、ヴァーン・コッターは、「ホッとしたよ。予選(レギュラーシーズン)を突破できたんだからね。たった80分のラグビーさ。簡単なことだよ」とメディアに語っている。もう失うものは何もない。昨年のチャンピオンは不気味だ。
 挙げきれないほど注目ののマッチアップがある。面白い試合になりそうだ。

【注目マッチアップ】
・トゥポウ・ヴァアイ ×パトリック・トゥイプロトゥの LO対決
・サイモン・パーカー×ホスキンス・ソトゥトゥの NO8対決
・ダミアン・マッケンジー × ボーデン・バレットの 10番対決
・エモニ・ナラワ × ケイレブ・クラークの WTB対決

それぞれのチームの公式SNSより


◆ブランビーズ(3位) vs ハリケーンズ(4位)
6月7日、AUS現地時間7:35PM/日本時間6:35PM/キャンベラ

 準々決勝で一番白熱すると予想されるのがこのカードだ。
 レギュラーシーズンでの対戦は第11節(4月25日)、準々決勝と同じキャンベラが舞台だった。その試合、敵地ながらハリケーンズが35-29で勝利を収めた。ハリケーンズはそこから勢いに乗った。今回も試合巧者のブランビーズに勝利する事ができるか。

 メンバーは両軍ともに充実している。特にブランビーズは代表クラスの選手を多く抱えて豪華なメンツとなっている。
 ハリケーンズのメンバーを見てみると、今週復帰予定で試合登録メンバーに入っていたHOアサフォ・アウムアがトレーニング中に負傷して欠場となり、2番にはジェイコブ・デベリーが入る事になった。
 アウムアの欠場があるものの、メンバーは充実している。前週の試合で圧巻のプレーをしたCTBピーター・ウマガジェンセンが絶好調だ。CTBでコンビを組む13番プロクターとともにブランビーズのディフェンスをこじ開けることができれば勝機が見えてくるか。

 まずは、FW戦でどちらが有利になるか。ここが試合の最大のポイントとなりそうだ。

【注目マッチアップ】
・ジェームズ・スリッパー × タイレル・ロマックス のPR対決
・ノア・ロレシオ × ブレット・キャメロンの10番対決
・レン・イキタウ × ビリー・プロクターの13番対決
・トム・ライト × ルーベン・ラブの15番対決

それぞれのチームの公式SNSより



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