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やや強めの風が吹いていたものの青空が広がっていた。山の緑は濃く、いい季節だ。
6月4日に始まった15人制男子トレーニングスコッド菅平合宿が6月5日、報道陣に公開された。合宿は同11日まで実施される。
この日のトレーニングは午前10時に始まり、各ポジション練まで含めると2時間弱続いた。
この合宿に参加しているのは、6月28日におこなわれるJAPAN XV対マオリ・オールブラックスへ挑むメンバーの選出対象選手だ。
練習後、報道陣の取材に応じたエディー・ジョーンズ ヘッドコーチは、この日のトレーニングについて「新しい選手たちがたくさん入ってきたので、自分たちのアタックとディフェンスのシステムを、しっかり落とし込む。みんながセイムページを見られるようにするためのセッション」と話した。
5月に大分にて活動したU20日本代表(NZU戦)、JAPAN XV(NZUとの2戦、ホンコン・チャイナ代表戦の計3戦)から選出されたメンバーと、リーグワンでの戦いを終えたチーム(準々決勝で敗退したブルーレヴズとサンゴリアスや入替戦出場チーム)からの選出選手たちが参加している今回。
ジョーンズHCは、「セレクションのための合宿」と目的を明確にする。

「選手にとっては、この(マオリ・オールブラックス戦前の)ラストの合宿で、ジャパンにのし上がっていってほしい」
6月16日からは宮崎で日本代表の合宿が始まる。同代表スコッドは35人が予定されており、その中には、リーグワンD1でベスト4に入ったチームから15人ほどが選出される予定だ。
その15人や海外プレー組などで占めるメンバー以外の枠を争うことになる。
ジョーンズHC体制が発足した昨季をスタートに、2027年ワールドカップまでの4年をかけてチームを完成品に仕上げるとしてきた。
『超速』をスローガンに掲げた昨季はテストマッチ11試合を戦い4勝7敗。現在のワールドランキングは13位となっている。
目指す場所が山の頂上とするなら、現在は何合目にいるのか。記者に現在地を尋ねられると、HCは、遠くに連なる山々の中の一番高い山を指差し、「私たちはいま、あの山の一番下にいます」と言った。
そして、「上がり始められれば一気に上がれると思っています。スタートの位置ではなく、一番大事なのはフィニッシュの位置」と続けた。
「そのためにも、今年はトップ10に入っているチームを倒したいと思っています。2019年以降、ジャパンはトップ10以内のチームに勝てていません。それができれば選手には、自信とチームに対する信念が生まれ、チームの成長は爆発的に上がります」

自身が最初に日本代表を率いた頃のことを思い出す。
初年度の2012年は不振に喘ぐも、翌年にウェールズから史上初めての勝利を挙げるとチームは階段を昇り続け、2015年ワールドカップでは南アフリカ撃破とプールステージ3勝という成績を残した。
7月に対戦するウェールズとのテストマッチ2試合が、上昇のトリガーとなるようにしたい。
現在のレッドドラゴンはワールドランキング12位も、同チームに勝てば選手たちのマインドは変わる。 ジョーンズHCは指揮官2年目、チームが停滞する中で、ふたたびウェールズと対戦することについて運命を感じると話した。
「(現状を)ブレイクスルーする試合が必要」とするHCは、そのためにもハードワークを続けるという。
取り組むスタイルについて、「プレーすること自体が難しいが、相手にとっても対抗するのが難しいラグビー」と表現し、強みを出して戦うことと、新たな強みも創出するとした。
勝負を懸けるウェールズ戦(7月5日/北九州、7月12日/神戸)に向けて、入念な準備を重ねて挑む。宮崎での日本代表合宿では勝つための濃密な練習を繰り返す。
ウェールズと戦うチームの選手層を厚くするため、JAPAN XVとして戦う6月28日のマオリ・オールブラックス戦もうまく使う。新しい才能を見つけ、伸ばす以外にも、日本代表選手の中でシーズン中のプレータイムが足りていない選手については、そのピッチに立ってコンディションを高めさせる。
フランスのトップ14でプレーするトゥールーズの齋藤直人(SH)は体がフィットしている状態にあるので招集の可能性があるけれど、ボルドーのテビタ・タタフに関しては状態が万全ではないため、選考に絡む可能性は低いようだ。

2024年シーズンにディフェンス面を担当したデイビッド・キッドウェル コーチの姿はこの日、見られなかった。
2月から英・プレミアシップのレスター・タイガースのコーチングチームに加わり、同チームで過ごす一定期間が終了すれば日本代表に戻り、経験を還元する予定だった。今回は日本代表活動ではないため、宮崎では今回と違う指導陣の顔も見られるかもしれないが、HCは「いま公式に言えることはない」とした。
菅平合宿は1週間。ここから何人もの選手がインターナショナルの舞台に立ち、それだけでなく、真紅のジャージーを倒す当事者になれたなら、指揮官の言うように日本代表の周囲は急激にヒートアップするだろう。
ジョーンズHCは、この地に立つと、いつも「多くの選手にとって自分のホームと思う場所」と言う。
停滞の空気を破り、逆襲を始める地にしたい。