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【Just TALK】タックル練は原渕選手と。見てほしい選手がたくさんいる。リーチ マイケル[東芝ブレイブルーパス東京]
ファイナル後、胴上げされるリーチ マイケル主将。(撮影/松本かおり)
2025.06.05
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【Just TALK】タックル練は原渕選手と。見てほしい選手がたくさんいる。リーチ マイケル[東芝ブレイブルーパス東京]

向 風見也

 激戦の裏側、喫緊の課題について語った。

 東芝ブレイブルーパス東京のリーチ マイケル主将は6月2日、都内ホテルにいた。

 前日には東京・国立競技場で、ジャパンラグビーリーグワン1部のプレーオフ決勝にナンバーエイトとして先発。ノーサイドの瞬間まで走り抜け、2季ぶりの日本一を目指すクボタスピアーズ船橋・東京ベイを18-13で下した。リーグ発足4季目にして初の連覇を達成していた。

 激闘から一夜明け、都内ホテルでアワードに参加した。

 ベストフィフティーン、ベストタックラー、ゴールデンショルダー(選手が選ぶ最高のタックラー)などに輝いた身長189センチ、体重113キロの36歳は、報道陣に囲まれた。

リーグワンアワードでは多くの項目で表彰された。(撮影/松本かおり)


——前日からこの日まではどう過ごしましたか。仲間との祝杯は。

「夜にテレビの生出演があって、終わったのは午前1時。(拠点の府中に)着いた頃には皆すでにでき上がっていたので、コーチ陣と少しだけ喋ってすぐに帰りました」

——話題をアワードへ。MVPは、2シーズン連続で同僚のリッチー・モウンガ選手でした。

「誰もが選ぶMVP。本当のMVP。リーグワンに(ニュージーランド代表56キャップの)モウンガ選手がいるだけでも素晴らしいことです。高校生、大学生がモウンガ選手の凄さを生で見られる」

——モウンガ選手は準決勝で右手を骨折しながらファイナルに強行出場。大活躍しました。

「本人が行けるというから尊重した。それでも無理じゃないかと思っていたんですけど、見事でした。驚きです。右手でオフロードして、トライを決めて、タックルして…」

——リーチ選手も3つのタイトルを受賞しました。ベストフィフティーンに輝くのはリーグワンになってから初。旧トップリーグ時代から通算すると、6季ぶり7回目となります。

「タックルと、試合に出る回数が多かったからだと思います」

——状態を保てたのはなぜですか。

「東芝のいいところは、若手とベテランが同じメニューをするところです。よくある、『ベテランになると(負荷をかけない選手を識別するために)ビブスの色を変えたり、ウエイトトレーニングのメニューを変えたり、(走り込みのある)グラウンドの横でバイクを漕いだり』ということが、まったくない。先輩には大野キンちゃん(均)、松田ジョン(努)さん、望月(雄太)さん、(立川)剛士さんなど、長く現役をやった人もいます。…工場の水が、いいんじゃないかと思います!

 メディカルのチームもものすごくよくて。あとは、オンとオフの切り替えをしっかりと。毎日、厳しくやるということはなく、試合後には後輩と少し酒を飲みに行ってリセットして、月曜日からハードワーク…。そのルーティーンができました。1回、リセットが必要。それがないまま4週間、5週間もやるとどこかで爆発する」

——それに気づいたのはいつ頃ですか。

「ずっとこうです。東芝に来てから、ずっと、同じです」

 ここから先は、長所のタックルについて深掘りする。

——全体練習前にはいつも、新人プロップの原渕修人選手とタックル練習をおこなっていたようですね。

「今シーズンは練習前に原渕選手、タイ・リーバコーチ、通訳の(山内)遼を呼んでやりました。遼はもともと10番(スタンドオフ)だったから(ボール保持者役への)パスができる」

——取り組んだわけは。

「優勝するためにはディフェンスが大事だと思っていました。そこは、キャプテンとして見本にならないといけない。タックルの成功率と回数でチーム貢献できるように頑張ってきました。(タックルを受けるのは)原渕選手です。『(取材で)必ず僕の名前を言って』って言われました!」

——原渕選手の指名理由は。

「彼はプロップで、当たりのセンスがあって、身体のサイズがよい。彼とタックル練習をすると、成功率が上がる。あとは、たまに(プロップの木村)星南選手を呼ぶくらいです。(自軍の)キックオフで最初にタックルを決める役割の選手が何人かいて、僕と星南がそう」

——原渕選手へのお礼は。

「焼肉、連れていきます!

木村星南の右がタックル練習の相手、PRの原渕修人。(撮影/松本かおり)
こちらはHO原田衛との練習後のタックルフィットネス練習。(撮影/松本かおり)


 あとは、練習が終わった後に原田(衛=副将でフッカー)選手ともタックルフィットネスをたくさんやってきた。原田選手は80分出ていたら、(1試合で)僕と同じだけのタックル回数を記録できると思います。彼は(ポジションの特性上)60分くらいで交替しますが、前半だけを見たら僕より回数が多い時もあります」

——リーチ選手のタックルのフォーカスポイントは。

「横の動きは自信がある。ただ、真正面からやってくる選手にどう強く当たるか(を課題にしていた)。…今季、キックオフのコイントスはほとんど勝っていた。ただ、決勝だけは負けて、やられた!」

——確かにこの日、相手ボールキックオフを捕球したリーチさんは対するナンバーエイトのファウルア・マキシ主将にビッグタックルをお見舞いされていました。高い成功率の秘訣は。

「秘密です。これは本当に秘密!」

 いつしか話題は、原渕以外のチームメイトに及んだ。

——あらためて、最近のリーチ選手は原渕選手のような「K9」こと控え組に感謝を口にすることが多いですね。

「試合に出られない選手が100パーセント向き合ってくれたからこそ、優勝できた。

 今年はもっと若い選手が出るかと思ったら、出番があまりにも少ない。(トレーニングマッチなどの)試合も多くない。フラストレーションが溜まる選手もいそうな中で、ノンメンバーのモチベーションは高かった。いつも感謝しています」

——リーチさんおすすめの「K9」は。

「たくさんいますね。池戸将太郎選手(スクラムハーフ)、木戸大士郎選手、アサエリ・ラウシー選手(以上フォワード第3列が主戦場)、ステファン(ステファーナス・デュトイ=フルバック)、亀井茜風選手、それから今季ずっと期待していた高城勝一選手(以上ロック)…」

——決勝戦後の会見では、トッド・ブラックアダーヘッドコーチがいる前で若手のプレータイムをもっと増やすべきだと提言していました。

「東芝にはすごいメンバーが揃っていて、それを皆さんに見てほしい気持ちがあります。代表になれそうな選手もたくさんいる」

——その要求は、シーズン中にもしてきていたのですか。

「(普段は)メンバー選びにはノータッチ。自分のポリシーは、自分のやるべきことだけにフォーカスすること。あちこちを触ってしまうと本職がダメになるから。自分がコントロールできることだけをやっています」

 いったん自らの態度を表明しながら、こうも言い残す。

「東芝だけじゃなく、日本代表になれる選手はたくさんいる。チャンスがあればリーグワンで活躍してほしい。日本代表が強いのが、大事」
 
 日本代表としてワールドカップを4度も経験したこの人は、自身の働きにフォーカスしながら、結局、周辺へも視野を広げる。業界の盛り上がりを気にする。

リーチは日本代表キャップ87。2024-25シーズンのリーグワンではプレーオフ2戦を含む全20試合に出場した。(撮影/松本かおり)


 リーグワンは再来年度から、選手登録の区分を変更する。

 日本代表資格があり無制限にフィールドに立てる「カテゴリA」が、義務教育を6年以上受けた選手が該当する「カテゴリA-1」とそれ以外の「カテゴリA-2」に分裂。登録で14名以上、同時出場で8名以上が「カテゴリA-1」であることが義務付けられる。

「カテゴリA-2」のうち日本代表30キャップ以上の選手は「カテゴリA-1」に「優遇」されるが、現時点での該当者はリーチを含む3名のみ。日本国籍を持つ選手への「優遇」はない。

 クラブ側のニーズをもとに約半年のディスカッションで決めたこの取り決めは、5月13日の発表から賛否両論を招いていた。

 この件について、かねてリーチは「バランスを取るのが大事。日本ラグビーにとって一番いい方向となるよう(関係各所と)話したい」と発言。今度の取材機会でもその考えを明かした。

「選手会、東海林さん(後述)と議論しています。いい結果になるように頑張ります。日本代表30キャップ以上の『A-2』が『A-1』になるということですが、それは3人しかいない! 日本ラグビーを支えてきた選手のことは、ベストな方向で考えましょうという話を。国籍は難しい。その辺は、センシティブなので…」

 日本国籍保持者が「優遇」されないわけについては、リーグワンの東海林一専務理事がこう述べる。

「これから『帰化したらこうなる(ゲームに出やすくなる)んだから、帰化しなさい』というような誤解が(起こりうる)。また、『(帰化を)特別視するのなら、我々も(選手に国籍を取らせることを真剣に)考えたのに』というお声が別の方から生じるところにも難しさがある」

 全体心理をくまなく精査する態度が硬直化を生んでいるようにも映るなか、リーチは、続ける。

「ベストな方向になるよう(調整を)続けたいです。東海林さんとは日本ラグビー選手会を通し、ミーティングをしています。選手側の意見も出して、日本ラグビーが一番いい形になるようにしたい。リーグワンを世界一にしたい思いは一緒。僕は日本代表を世界で戦えるチームにしたいので、リーグワン、日本協会とも連携し、いい方向に進みたいです」

——2019年にワールドカップ日本大会の日本代表として世界8強入りを果たした海外勢が、ほとんど「A-2」。これは不憫だと指摘されています。

「そういう声はたくさん聞いています。それらもいろいろとフィードバックしています。(リーグ側も)理解はしている。完全にドアをクローズして、話し合いもなし、という状態ではない。いい会話ができています」








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