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1週間前とは逆に、今回は先手を取られた。
5月31日に柏の葉公園総合競技場(千葉)でおこなわれたリーグワン、ディビジョン1/ディビジョン2の入替戦(第2戦)で、浦安D-Rocksが豊田自動織機シャトルズ愛知に27-21と勝って勝ち点4を獲得した。
D-Rocksはこの日の勝利で今入替戦の勝ち点を5としてシャトルズと並ぶも、得失点差で上回ってD1残留を決めた。
5月24日に刈谷でおこなわれた第1戦でD-Rocksは、28点を先行しながらも42-43と逆転負けを喫していた。

D1最下位ながら、地力では上回っていると見込まれていたD-Rocksは、初戦の結果により、第2戦を重圧のかかる中で迎えた。
そんな状況の中で前半22分までに2トライ、2ゴールの14点を先行されたのだから胸中は穏やかではなかっただろう。
しかし、この日のD-Rocksは慌てることなく反撃に転じ、CTBサム・ケレビの2トライ(29分、36分)とSOオテレ・ブラックの2G1PGで17-14と逆転してハーフタイムを迎えた。
後半も先手を取り、最後の20分を24-14で迎える。27分にNO8イシレリ・マヌのトライ、SOフレディー・バーンズのGで7点を返されるも(24-21)、PGを追加して勝利とD1残留をつかんだ。
入替戦初戦を、「4トライを先行して自分たちがやってきたことが正しかったと証明したのに、それを続けることをしなかった。ディシプリンが乱れた」と振り返っていたグレイグ・レイドロー ヘッドコーチ(以下、HC)は、残留を決めた試合について、「選手、スタッフを誇りに思う」とした。
柏の葉での2戦目では、規律面を見直して戦いに臨んだ成果が出た。初戦では14-6と相手より多かった反則数が、10-13と逆転する。6点差勝利は、SOブラックが決めた2PGも効いていた。
接点でも上回った。
スクラムの多くで圧力をかけ、後半最初のトライも押し込んで相手反則を誘ったのがきっかけとなった。
ブレイクダウンでも前に出て、相手をリズムに乗せなかった。後半21分、PR金廉が見せたプレーは、その好例だった。

【写真右上】この試合で引退する浦安LOジェームス・ムーア。後半36分まで動き続けた
【写真左下】入替戦2試合でゲームキャプテンを務めた浦安HO藤村琉士
【写真右下】結束の固い、好チームだったシャトルズ。中央がLOジェームズ・ガスケル主将
D-Rocksの3番は、シャトルズの9フェーズ目のアタックでCTBジェームズ・モレンツェを好タックルで倒すと、すぐに立ち上がり前進。それに仲間も続き、ターンオーバーに成功して自陣から脱した。
この試合を最後に引退するLOジェームス・ムーアも、これまで通りに接点でハードに働き、よく走った。
シャトルズが初戦に見せた不屈のスピリット、そして、この日序盤の好ファイトに苦しみながらもD1の座を守り切れたのは、結局は勝負どころでひたむきさを出せたからだった。
◆2戦フル出場のルーキー佐々木、貴重な時間を過ごす。
そんなタフな2試合に、ルーキーながらフル出場したのが佐々木柚樹(ゆずき)だった。
今年(2025年)1月にアーリーエントリーでD-Rocksに加わった22歳は、レギュラーシーズンの終盤に3試合に出場し、17節の静岡ブルーレヴズ戦、18節の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦と先発でフル出場を果たす。入替戦でも初戦は4番、この試合では6番で起用された。
青森・八戸工でラグビーを始めた188センチ、103キロ。野球部の体験入部に行く途中、ラグビー部のキャプテンに誘われてそのまま入部して人生が変わる。
チームは県内でも上位進出はなかったものの実力を伸ばして大東大へ。U20日本代表選出の経験もした。
大学2年時に関東大学リーグ戦の入替戦も経験しているが、今回と比べて「大学時代は一発勝負(1試合だけ)という怖さがありましたが、今回の緊張感は全然違うものでした」と話した。
「先輩たちがどうやってディビジョン1に入るチームを築き上げたか、その歴史を描いた映像を見たことがあります。絶対に負けられないと思いました」

そんな中で、ルーキーながら大役を任されたから、初戦のメンバーに選ばれた際は「いい緊張感があります。自分の仕事をします」と話した。LOとして、まずはセットプレーに注力することを誓った。
しかし、その試合に負けてチームは窮地に追い込まれる。そんな状況で、2戦目はFLを任された。
初戦について、「(先行した)2つめのトライまでは、まだまだ、と気持ちが入っていましたが、4トライを取って、勝てる、という空気が生まれたと思います。自分もそう思った。そのスキを突かれた。ラグビーはメンタルのスポーツとあらためて実感しました」と話した。
だから、2戦目で再び先発の座を得て、「選ばれたからには、チームのために、若手らしく全力を尽くそう」と覚悟を決めた。
「最初の試合は力を出し切れなかった。試合が終わった後、負けた気がしなかった。それが一番悔しかったんです」
初戦の課題として全員で共有した、ブレイクダウンへの速い寄りや、一人一殺の意識を強く持って戦った。「自分だけでなく、それを全員で80分やり切ったから勝てました」
自分が感じている以上に緊張していたからだろう、試合終了時にはホッとして「泣きました」。
「まだまだ成長の途中ですが、今回の2試合の経験は本当に貴重なものでした。次のシーズン、チャレンジャー精神を常に持ち、(上位に)這い上がっていきたいですね」と未来へ視線を向けた。

チームに加わって過ごした4か月の間にも、細かいスキルや経験を先輩たちから学び、成長できている実感がある。
リーグワンのゲームに出ては、フィジカル面やスピード面のレベルの高さに衝撃を受けながらも、目指すべきレベルを体感し、日々階段を昇る。持ち前の運動量の高さも、さらに大きくしていくつもりだ。
キャプテンのSH飯沼蓮は試合前から、「若手がエナジーを出して盛り上げていこう」と声をかけてくれるそうだ。
「蓮さんは試合中も、僕らをどんどん呼んでくれる。その声もあり、萎縮せずプレーできました」
自分も早くそんな存在になって、チームを前に出す。