![【Just TALK】決勝へ。「活躍しているのは私だけではありません」。マルコム・マークス[クボタスピアーズ船橋・東京ベイ]](https://www.justrugby.jp/cms/wp-content/uploads/2025/05/2505025_SW-SF_010_HN-1.jpg)
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大勝負におけるヒーローは試合後も忙しい。スタンド下のミックスゾーンでテレビ用、SNS用、ペン記者用と順に、複数種類のメディア対応が課される。
5月25日の東京・秩父宮ラグビー場では、マルコム・マークスが英雄となった。
国内リーグワン1部のプレーオフ準決勝で、クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフッカーとして計71分、プレーした。
前年度まで3季連続ファイナリストの埼玉パナソニックワイルドナイツを28-24で下すと、6月1日の決勝への意気込みを聞かれた。
——国立競技場で、ディフェンディングチャンピオンの東芝ブレイブルーパス東京とぶつかります。
「それを聞かれたのは3度目ですね」
それまでふたつのブースでインタビューに答えてきたマークスは、最後の囲み取材で笑った。
「きょうはきょうの勝ちをエンジョイ。休養し、週明けの火曜からしっかり練習します」

身長189センチ、体重117キロの30歳。ワールドカップ2連覇中の南アフリカ代表で76キャップを得てきた。スピアーズへは加入5季目で、一昨季にクラブ史上初の日本一に輝いている。
昨季は怪我で棒に振るも、今年度はレギュラーシーズン18戦中16戦、ゲームに出た。突進、タックル、スティール、スクラムワークと持ち味を発揮してきた。
レギュラーシーズン3位で突入のプレーオフでも、5月18日に6位の東京サントリーサンゴリアスに20-15で勝利。東大阪市花園ラグビー場で先発フル出場を果たし、この日のワイルドナイツ戦を迎えていた。
いざキックオフを迎えれば、前半3分、敵陣ゴール前でラックを連取して自ら先制トライを決めた。その後は前半10分頃、22分頃と自陣ゴール前で組織的に守り、向こうのわずかな穴を突いて22-10でハーフタイムに突入した。
ワイルドナイツが攻めを修正した後半も何とか堅陣を保ち、殊勲の背番号2も随所に効いた。
25-24と迫られて迎えた後半26分頃には、自陣ゴール前左で接点の球に絡む。ワイルドナイツのリサイクルを乱し、次の局面でミスをさせた。
問答を通じ、仲間の献身と自らの伸びしろについて語っていた。
——スピアーズのディフェンスは見事でした。担当のスコット・マクラウドアシスタントコーチの働きが大きいのではないでしょうか。
「(戦術上の)物事を明確にしてプレーさせてくれる。そこからお互いのためにというハードワークが生まれてゆく。選手同士、仲がいいです」
——マークス選手の肉弾戦における仕事、見事でした。
「もっと、精度を上げられるような気がします。ちゃんとボールを取り返せなかったり、相手の反則を誘えなかったりもしましたので。明日以降、映像を見て、改善点を見つけて、次のファイナルまで1パーセントでもいいので向上させたい」
——マークス選手がきょうのような大切な試合で力を発揮できるのは、なぜでしょうか。
「フィールド上には自分以外にも14人の仲間がいます。そんななか、それぞれがそれぞれの分野でベストな状態で一生懸命にやるからです。ラグビーはチームスポーツ。(活躍しているのは)私一人だけではないです」
——連戦の疲れは。
「疲れはない。シーズン中と変わらないです。1週間の準備段階で(負荷を)コントロールしてきました」

スタンドを沸かせたのは交替の直前。中盤でフランカーのトゥパ・フィナウからオフロードパスを受け取ると、軽やかに駆けながら左斜め前方へキックした。
陣地を挽回する一手。リードを守りやすくなった。
「直感です。裏のスペースを見たら空いていたので、蹴ろうと思いました。ノックアウトステージではテリトリーが大事です」
その後は途中交代したフッカーの江良颯らが好スクラムを重ね、4点差で白星を掴んだ。
——江良ら若手のフロントローについて。マークスさんが指導役になっているとも言われていますが。
「私とは無関係に、彼らはいい選手です。(終盤のスクラムは)彼らのハードワークの賜物です」
殊勲のタフガイは今季限りで契約が切れるも、関係者の話を総合すれば延長が濃厚。当の本人も別な場所でこう述べている。
「この先もチームにいるつもりです。ここの選手たちのことが好きなので。まずは今シーズンをエンジョイしたいです。南アフリカと異なる日本の文化、スピアーズのラブ&ケアの文化を経験できるのはいいことです」