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【Just TALK】準決勝敗退も、「(ラグビーは)強い奴とやったほうが楽しい」。ブロディ・レタリック[コベルコ神戸スティーラーズ]
ニュージーランド代表キャップ109。スティーラーズでの2024-25シーズンは、レギュラーシーズンの全18試合中15戦に出場し、プレーオフ2試合に出場した。すべて5番で先発。©︎JRLO
2025.05.25
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【Just TALK】準決勝敗退も、「(ラグビーは)強い奴とやったほうが楽しい」。ブロディ・レタリック[コベルコ神戸スティーラーズ]

向 風見也

 どこかを痛めていたように映った。

 5月24日、東京・秩父宮ラグビー場。コベルコ神戸スティーラーズのブロディ・レタリック共同主将は、東芝ブレイブルーパス東京との国内リーグワン1部・プレーオフ準決勝にロックで先発していた。

 3-17と14点差を追う後半18分頃、自陣10メートル線付近左中間からビッグゲインを決める。身長204センチ、体重120キロと大きな身体で軽やかなステップを踏み、敵陣22メートルエリアへ進む。スティーラーズにチャンスをもたらす。

「できるだけいいラグビーをしようと思うなか、そのランニングが生まれました」

 ここからスティーラーズはしばらく攻め続けるが、レタリックはラックを作った地点に倒れたままだった。

 プレー続行が心配された。現在33歳の本人は後述する。

「もう、トシですね。ただ、問題ないです」

 何とか起き上がった。しかしこの場面で、スティーラーズの攻撃は7フェーズ目で断たれた。

 レタリックが必死にサポートも、相手の両ロックであるワーナー・ディアンズ、ジェイコブ・ピアスのチョークタックルに阻まれ球が出せなかった。

 その後もレギュラーシーズン5位のスティーラーズは、同首位でディフェンディングチャンピオンであるブレイブルーパスの防御を崩せなかった。

 残り10分を切ると反則、被ターンオーバーをきっかけに加点され、3-31とノートライで敗れた。
 
 ニュージーランド代表109キャップを持つレタリックは、この80分をいかに振り返るか。

204センチ、120キロの巨漢。ラーメン好き。(撮影/向 風見也)


——試合を振り返って。

「なかなか好機で(点を)取りきれず、東芝さんにしてやられた。そして、こういう試合結果になったと思います。東芝さんはいいチームですから、こちらが少しでも隙を見せたらそこを突き、崩してきます。きょうは僕たちがチャンスを生み出しながらも東芝さん(の防御)に崩され、(ボールを)繋ぎきることができませんでした。ブレイクダウン(接点)でも相当、プレッシャーがかかっていました。

 よいチームとよいチームがぶつかったら何が起きるか。削り合いです。チャンスを獲りきった数が多いほうが勝つ。それが、好チーム同士の試合の本質です」

——スティーラーズがチャンスをつかめなかったわけは。

「ボールを落としたり、パスが通らなかったり。シンプルな精度のところです」

 この日の殊勲者はリッチー・モウンガだった。

 ニュージーランド代表56キャップの31歳は、ブレイブルーパスのスタンドオフとして前半に2本の「50・22」キックを決めたほか、鋭いラン、パスでも光った。

 後半29分頃にはピンチで堅実なタックルを披露した。攻守に躍動した。

 プレイヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたモウンガを、自国で通称「オールブラックス」としてともに戦ったレタリックはどう見るのか。

——対戦相手のことで恐縮ですが、モウンガ選手、どう見ましたか。

「ある意味でありがたい存在です。リーグワンのレベルが上がってきているなか、彼は来日して時間が経った(2季目)いまなお、輝くプレイヤーであり続けています。彼がどれだけ才能に溢れた素晴らしい選手であるかを、自ら証明している。そういう存在がいること、そんななかでラグビーができていることに対し、感謝に等しい思いを抱いています」

——対戦相手としては厄介では。

「どうせなら、そういう強い奴とやったほうが楽しいじゃないですか。プレーするなら、ベストとベストが当たったほうが面白い」

 かつての仲間が日本のライバルチームで爆発するのを「ありがたい」と語るレタリックも、スティーラーズに2019年度から2季在籍し、2023年度に復帰していまに至る。

 一時は低迷したクラブにあって、接点、空中戦で存在感を発揮し、今年度は2シーズン連続の5位と復権の兆しを見せている。

 リーグワンにおける海外選手の奮闘を知るだけに、5月13日に発表されたレギュレーションの変更には、少し、首を傾げる。

 再来年度から、現状は無制限に出られる「カテゴリA(日本代表資格保持者)」の選手が「カテゴリA-1」「カテゴリA-2」にわかれる。

 各クラブは、先発15名中8名をおもに国内出身者を対象とする「カテゴリA-1」で埋めるよう義務付けられる。かたや海外出身者が主体となる「カテゴリA-2」は、レタリックのような「カテゴリC(他国代表経験者)」の面々らと限られた枠を争うこととなる。

 レタリックはこうだ。

「申し訳なさすら覚えます。悲哀に似た気持ちです。長くリーグワンにい続け、日本ラグビー界の最前線で活躍し続けてきた、もしくはワールドカップ日本大会(2019年)の日本代表となった選手がいる。彼らがそんな扱いを受けることには——いろんな理由はあるのでしょうが——どうなのかな、と思うところはあります」

 自身への直接的なデメリットは少ない事案とはいえ、気がかりであることを覗かせた。スティーラーズではこの日両センターでプレーしたラファエレ ティモシー、マイケル・リトルらが「カテゴリA-2」となる見込みだ。





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