
Keyword
開幕から激戦が繰り広げられてきた今季のスーパーラグビー・パシフィックは、いよいよ今週末の13節(5月9、10日)から終盤戦に突入する。クライマックスが近づくいま、ニュージーランド(以下、NZ)勢を中心にこれまでを振り返ってみたい。
4節を残した地点での順位は、1位チーフス(37P)、2位クルセイダーズ(37P)、3位ブランビーズ(34P)、4位レッズ(28P)、5位ハリケーンズ(26P)、6位モアナ・パシフィカ(24P)の6チームがプレーオフ圏内に入っている。
内訳をみるとNZのフランチャイズ3チーム、オーストラリア(以下、AUS)のフランチャイズが2チーム。そしてパシフィックのチームのモアナ・パシフィカが6位に食い込んできた。
シーズン前半戦を終わった時点では、NZ勢2チーム、AUS勢4チームだったのが、NZを拠点に活動しているモアナ・パシフィカが6位に食い込んできたことで、NZ勢が巻き返しに成功していると分かる。中盤戦まで苦戦していたNZ勢の反撃によりNZ国内のメディアやラグビーファンの間では、シーズン終盤に向けて盛り上がりが増してきた。

◆チーフス、首位堅持も足踏み。層の厚さで不安なし⁉
11試合を消化し、8勝3敗で首位をキープしているチーフス。シーズン序盤からここまで順位表の頂点をほぼ独占している。
しかしシーズンの後半に差し掛かった9節(4月11日)のワラターズ戦は、ミスを連発して14-21で敗戦。12節(5月3日)のハリケーンズ戦は、前半に17-9リードを奪うも、後半は無得点に抑えられて17-35と逆転負けを喫した。
チームは直近4試合で2敗と、やや失速気味ではあるものの、充実したメンバー層を擁しているだけに、このまま停滞するとは考えにくい。
負傷により数試合欠場していたSO/FBのダミアン・マッケンジーが13節(5月10日)から復帰する。また、膝の負傷から予定より早く復帰しているFL/NO8ウォレス・シティティも徐々にパフォーマンスを向上させていく事が期待される。これらの要素を踏まえると、チームは再び上昇し、上位の地位をしっかりと固める可能性が高いだろう。
残り3試合のうち、レギュラーシーズン首位通過のカギを握るのは、勝ち点で並ぶ2位のクルセイダーズとの戦い(13節/5月10日)、そして勢いに乗るモアナ・パシフィカとの第15節(5月24日)の2試合になりそうだ。

◆クルセイダーズは完全復活へ! ケマラの離脱でオコナーの存在価値高まる
10試合を消化し、8勝2敗で2位のクルセイダーズ。昨季の大不振から今季は完全に復調していると言える。
昨季から課題だった司令塔のポジションでは、開幕からほとんどの試合で10番を付けていたタハ・ケマラの成長ぶりが光っている。そして、同ポジションのジェームズ・オコナーが後半からケマラに代わって司令塔の位置に入り、試合を締める役割を担っている。この明確な役割分担と継投策がチームにしっかりとクリックしており復調を大きく後押ししたと言える。
そのオコナーは10節(4月18日)、粘るブルーズを退けるサヨナラPGを決め、ヒーローになった(25-22)。元ワラビーズのオコナーの存在価値は試合を重ねるごとに高まっている。
躍進を続けていたケマラは、11節(4月26日)のハイランダーズ戦で試合開始直後に膝を負傷し、今季の残り試合でのプレーは絶望となった。しかし、同試合で途中から司令塔の位置に入ったリヴェス・ライハナが素晴らしいパフォーマンスを披露し、ケマラ離脱の不安を和らげた。
昨季はケガで全試合欠場のFBウィル・ジョーダンは、今季は元気だ。毎試合インパクトのあるプレーでチャンスを作り出している事も、チームの復調を後押している。

FW陣では、HOジョージ・ベルが開幕から離脱しているが、同ポジションのイオアネ・モアナウの存在が光る。モアナウの最大の魅力は突破力。ディフェンスをこじ開け、チームに勢いをつけている。
シーズン前半戦はおとなしかったLOスコット・バレットも復調しており、今季さらにステップアップしたNO8クリスチャン・リオウィリーと共にFW陣を引っ張っている。
上記のように若手の成長に加え、FW陣に本来のタフさが戻ってきている。チームのバランスも良く、王者奪回に向けて着実に進んでいる印象だ。
残り4試合は、ホームでチーフス戦(13節/5月10日)、レギュラーシーズン最後の16節(5月30日)に敵地でブランビーズ戦と強敵との対戦が控えている。手強い2チームに勝利すれば首位通過も見えてくるか。

◆ケガ人復帰で急上昇のハリケーンズ。どこまで上昇するか?
11試合を消化し、5勝5敗1分けで5位につけているハリケーンズ。直近2試合は、敵地ながら11節(4月26日)でブランビーズに35-29と競り勝った。続く12節(5月3日)は、首位チーフスを後半シャットアウトし、35-17で快勝して2連勝。結果、シーズン前半戦を終えた時点で7位だった順位を2つ上げプレーオフ圏内に入ってきた。
序盤戦の苦戦からチームが復調してきた要因は、ケガ人の復帰が大きい。特に第10節(4月19日)のフォース戦から復帰したライリー・ヒギンズ、ビリー・プロクターのCTBコンビが光る。彼らの不在の間に同ポジションを任されていたピーター・ウマガ・ジェンセン、ベイリン・サリバンのCTBの2人も決して悪くなかったが、ヒギンズ、プロクターのコンビはチームの攻撃力を上げた。
注目の司令塔(10番)は、ケガで離脱したハリー・ゴッドフリーの穴をSO/FBルーベン・ラヴがしっかりと埋めている。ラヴが10番に上がった事で15番を任されているのはカラム・ハーキンだ。スコッド外ながらもケガで出遅れたラブの代わりに開幕戦でも15番を付けて先発出場した。中盤戦以降に再び出場機会が訪れ、ここ数試合は15番でインパクトを残すパフォーマンスを見せ、ケガ人の穴をしっかりと埋める役割を果たしている。
FW陣は、相変わらず第3列をはじめ層が厚く頼もしい上に、BK陣の攻撃力が上がって来た。一気に上位に進出する事も考えられる。
残り3試合は、ハイランダーズ(14節/5月16日)、敵地でレッズ(15節/5月23日)と続き、16節(5月31日)には、前回の対戦で敗れているモアナ・パシフィカとの対戦が残っている。
◆パシフィック魂が爆発。モアナ・パシフィカはプレーオフの扉を開けるか
11試合を消化して5勝6敗のモアナ・パシフィカは、終盤戦を前に、プレーオフ圏内の6位に食い込んできた。
7節(3月29日)でクルセイダーズに45-29で圧勝した後、8節(4月5日)ではワラターズに45-28と勝利して2連勝を飾るも、その後ブルーズに17-36(9節/4月12日)、ホームでブランビーズに0-24と完封負け(10節/4月19日)。連敗を喫した。
しかし、その後フィジアン・ドゥルアに34-15で勝利(11節/4月26日)し、続くハイランダーズ戦(12節/5月4日)では、粘りを見せる相手に34-29と競り勝って2連勝と盛り返した。
まだまだ波はあるものの、昨季までの大きな波ではなく、着実に実力を上げてきている。最後まで集中力が途切れることなく、競った試合も勝てるようになってきた。
主将のアーディー・サヴェアの影響が大きいのは言うまでもない。そして、そのアーディーに匹敵する素晴らしいパフォーマンスを見せているのが背番号6、ミラクル・ファイランギだ。この2人がFW陣のみならずチーム全体に勢いをもたらしている。
FW陣だけでなく、BK陣も試合を重ねるごとに成長している。司令塔のジャクソン・ガーデン・バショップとパトリック・ペレグリーニの2人が競い合って良いパフォーマンスを見せている。CTBは、ダニー・トアラ、ラロミロ・ラロミロのコンビが絶好調だ。
FWとBKのバランスも良くなった。プレーオフ進出の可能性が現実味を帯びてきたかもしれない。
初のプレーオフ進出に向けて残り3試合は、対ブルーズ(14節/5月17日)、対チーフス(15節/5月24日)、対ハリケーンズ(16節/5月31日)と、どの試合も厳しい試合となる。

◆ブルーズは、我慢のラグビーでプレーオフに望みを残す。
11試合を消化し、4勝7敗で7位の昨年の王者ブルーズは、依然として波に乗れないままでいる。
しかし、負けが3つ先行しているにもかかわらず、5位のハリケーンズとは4ポイント差、6位のモアナ・パシフィカとはわずか2ポイントの差。プレーオフ進出の可能性は大いにある。
シーズン中盤以降、負けられない試合が続いたが、10節(4月18日)クルセイダーズに22-25、続く11節(4月25日)のレッズに21-35と敗れ、シーズンエンドと思われた。しかし12節(5月2日)のフォース戦では後半に爆発的な攻撃を見せ、40-19とボーナスポイント付きの勝利を挙げた。再びプレーオフ進出に望みをつないだ。
昨季のようなFWの圧倒的な勢いはまだまだ見られない。しかし、徐々に向上している感じはある。気になるのは、シーズンを通して見られる、BK陣の決定力不足。WTBケイレブ・クラークの負傷がまだ癒えてこないのも気になる。AJ・ラムが11番に入りトライを挙げているのは明るい材料となっている。
フォース戦で見せたようなラグビーを継続できればタレントは揃っているだけに、ブルーズが滑り込みでプレーオフに進出する可能性も否定はできない。
今シーズンの課題であるセットピース(スクラム、ラインアウト)の向上と、FWの激しさが昨年並みに戻るかが鍵。そこが改善されればBK陣の得点力も上がってくるだろう。
プレーオフ進出に向けて負けられない戦いが続くブルーズの残り3試合は、フィジーの地でのフィジアン・ドゥルア戦(13節/5月9日)、モアナ・パシフィカ戦(14節/5月17日)、そして最終戦はホームでのワラターズ戦(16節/5月31日)と、プレーオフ進出を争うライバルチームとの直接対決となる。激しい戦いが予想される。

◆決定力不足が続くハイランダーズ。今季も下位で終わるのか。
11試合を消化し、3勝8敗で10位のハイランダーズは序盤の勢いが陰り、シーズン終盤を目前にしても低迷が続いている。直近の4試合では、9節(4月12日)にホームでフィジアン・ドゥルアに43-20で勝利したものの、その後は3連敗(10節/10-46 対チーフス)、(11節/10-43 対クルセイダーズ)、(12節/29-34 対モアナ・パシフィカ)を喫しシーズン前半終了時からさらにひとつ順位を下げる結果となった。
FW陣のケガ人が戻ってきてチームが上向いてくることも期待されたが、上位陣との対戦では力の差を感じる。BK陣においては、首の大ケガから復帰を果たしたFBジェイコブ・ラトゥマイタヴキ・ニープケンスの復帰でBK陣に攻撃の幅が出たことは明るい材料も、依然としてBK陣の決定力不足は否めない。シーズン序盤で大活躍したWTBケイレブ・タンギタウの負傷欠場が続いている。そのことが想像以上に響いているのが現状だ。
これ以上負けは許されないハイランダーズの残り試合は、14節(5月16日)ハリケーンズ、15節(5月23日)クルセイダーズ、16節(5月30日)はチーフスと、強豪との対戦が待っている。
シーズン終盤戦のキックオフとなる13節の注目カードは、5月10日クライストチャーチでおこなわれる、首位攻防戦となるクルセイダーズ×チーフスの試合だろう。そして、もう負けられない昨年の王者ブルーズが、フィジーの地でフィジアン・ドゥルアと対戦する(5月9日)。こちらも白熱しそうだ。
