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1月10日におこなわれた東京サントリーサンゴリアス×コベルコ神戸スティーラーズの試合は、22-20という接戦でスティーラーズが勝利を収めた。
サンゴリアスは構造的に相手を崩そうと試みた。スティーラーズは流動的にボールを動かすことで活路を見出そうとしていた。
順番に試合を振り返っていこう。
◆東京サントリーサンゴリアスのラグビー様相。
〈アタック/階層構造とゾーン戦略〉
サンゴリアスは、ラックからFWが直接ボールを受ける9シェイプを好み、その比率はアタックの中でかなり高い。攻撃のリズムを作り出す狙いがある。
それに合わせて10シェイプもバランスよく用いることで、キャリアーが接点を作る位置関係を切り替えながらアタックしていく。
テンポよくボールを動かしていく過程で、表と裏のラインを作り分ける「階層構造」を用いることがある。表のラインに参加している(主にFWの)選手が裏に立つプレイメーカー(司令塔役のSOなど)にボールを出すことで相手の足を表のラインで止めながら、裏のラインで外方向に展開する形を使っている。
しかし、この階層構造の命となる、表のラインから裏のラインにボールを動かす過程の中で、プレイメーカーが相手のディフェンスラインを切れない、ノミネートから外れることができないといった状態が生まれていた。
これは、表のラインの選手が前に出る勢いを止めるようにしながら、裏のラインにパスを出す動きをしていたからだ。
表のラインをノミネートしていたディフェンスの選手たちは、早い段階で表のラインの選択肢をスルーし、裏のラインに対してプレッシャーをかけることができていた。
サンゴリアスのアタックのベースになるのは前述したように、9シェイプでのキャリーだ。浅くアタックに参加するキャリーの連続によって徐々にギアを上げるように加速する結果、非常に攻撃的な選択肢となる。
その中でもアタックの選択肢として、ティップオンというパスの選択肢を多く用いていた。9シェイプの三角形の先頭に立つ選手に対して、内側の選手は浅く近い位置、外側の選手は深く、少し遠い位置から走り込み、外側の選手に対して浮かすように小さなパスを通し、ギャップを突くような動きを作り出す動きだ。そうすることで、ティップオンのパスにモメンタムを作り出す働きが生まれる。
ただ、外側の選手がティップオンでもらう過程で、相手ディフェンスに下げられていた。そうなると、オフサイドではない、うしろからサポートに入ることができる選手が少なくなる。丁寧にサポートに入る様子は見せていたが、相手の圧力で倒れてしまい、ラックが崩れてしまっていた。

〈キックマネジメントとディフェンス〉
キックの観点から話すと、全体的に、効果的なエリアコントロールができていなかった。例えばペナルティを獲得した後のタッチキックを外に出し切ることができず、アンストラクチャーなキックリターンが生まれることがあった。中途半端な距離のキックをうまくリターンされることにより、エリアを押し込めないこともあった。
ペナルティを獲得した後のタッチキックを相手に確保されることは、戦略的にも大きな痛手となる。
本来、相手に邪魔されることなく最も効果的に、前に出ることができる手段だが、それを遂行できないと、キックが外に出る前提でいるぶん後手に回りやすく、ディフェンスラインの整備も遅れる。
それ以外のキックに関しても、エリアをうまく狙うことができていなかった印象だ。ラックからのボックスキックが少しグラウンドの中央方向に飛ぶことで、相手にリターンする選択肢が生まれていた。効果的な攻撃に転じられるシーンも見られた。
中盤からのキックに関しても、相手のリターンに対する各選手のディフェンス戦略にブレが見られた。
例えば、真っ直ぐ相手に向かってプレッシャーをかけようとする選手もいれば、前に出られた時のサポートとして、チェイスするラインの裏に回り込むように移動する選手もいた。やろうとしているディフェンスがチグハグなシーンもあった。
ディフェンスが不安定となった要因として、イエローカードとレッドカードで合計40分ほどの時間を14人で戦わざるを得ない状況に陥ったことの影響も大きいだろう。
ディフェンス時はフロントライン、ラックから直線上に並ぶディフェンスラインに13人を揃え、キックに備える2人が後方に位置することがベースとなる。しかし、選手の退出により15人→14人になると、一気にバランスが崩れる。キックに対応する裏のエリアへの配置を1人にしたりすることで対応するも、キックで裏のエリアを狙われたり、数的不利となったことの影響があった。
ディフェンスの一つひとつの様相を見ても、単純なタックルミスが何度か見られたように感じた。後半に飛び込むようなタックルが増えたことで相手に体を当てることができなくなり、容易に前に出られていた。
影響が大きかった要素として、相手の上半身を止めるようなタックルができなかったことが挙げられる。ダブルタックルができたかどうかではなく、「相手の上半身に対して仕掛けることができたかどうか」という要素が大きい。
上半身にタックルができない、つまり相手の上半身や腕を自由にした状態では、相手は簡単にオフロードパスを通すことができる。実際スティーラーズのトライには、オフロードパスにより数的に優位な状態が生まれ、外方向にスペースが生まれるシーンがあった。
◆コベルコ神戸スティーラーズのラグビー様相。
〈アタック:動的な数的優位の活用〉
スティーラーズは基本的な形としてタッチラインに近い位置から、1人ー3人ー3人ー1人という人数比でFWの選手を配置していた。セットピースからの一連の流れの中では4人のポッドを用いていることもあったが、ベースの形は1-3-3-1と見た。
シークエンスの中で個人的に興味深かった動きとしては、5人でセットしたラインアウトからの一連の流れだ。最初のフェイズでは中央でラックを作り、次のフェイズではラインアウトに参加していた5人のFWの選手のうち4人の選手が逆方向にポッドを作り、キャリー。そのさらに次のフェイズではタッチライン際に残っていた6番のティエナン・コストリーを使い、エッジでの質的なギャップを活用していた。
一連の流れの中で用いている4人のポッドでは、隣の選手に浮かすパス(ティップオンパス)と、スイベルパスという裏の選手へ下げるパスの選択肢を持つことで、ディフェンスに対して脅威となっていた。
基本的に4人が横に並んでいるポッドに対し、3人目の選手に対してパスを出すところからフェイズが始まる。つまり、4人目の選手に対するティップオンとスイベルパスの選択肢が発生する。ポッドに対してプレッシャーをかけていた相手ディフェンスを、その使い分けで外すことができていた。

アンストラクチャー、つまりセットした状況ではないフェイズでは、ポッドではなく、シンプルなBKによるアタックラインが構築されていた。シンプルなラインだとプレッシャーを受けやすくなるが、大外にいるのがイノケ・ブルアや植田和磨といった一人で打開できる選手なので、うまく前に出ることができていた。
アタックの中で特徴的だったのが、キャリーをする中での「粘り」だ。相手にタックルに入られても、すぐには倒れ込まないことにより、オフロードパスを繋ぐことができていた。その結果、どんどんと前に出ることができていた。
サンゴリアスのこの試合でのディフェンスは、どちらかというと一人ひとりがマンツーマン気味、自分がノミネートした選手に対してしっかりプレッシャーをかけることがベースになっており、精度の高いダブルタックルをすることは少なかった。
その結果としてスティーラーズの選手の上半身がある程度自由になることで、オフロードパスがつながっていた。また、それぞれの選手がある程度近い距離感でサポートに入っていたので、無理に放らなくてもオフロードパスが通りやすい状況が生まれていた。
〈ディフェンスと接点〉
スティーラーズのディフェンスは基本的には堅かった。20点という失点はそこまで致命的な失点ではなく(むしろ22点の得点力を課題としたい)、失点の多くが前半、かつ奪われたトライも2つと比較的安定していた。
特にサンゴリアスが得意としている9シェイプに対して、安定した堅さを見せた。サンゴリアスは9シェイプで前に出ることによりアタックのリズムを掴むチームのため、そこを抑え込むことで大きく崩れることを防いでいた。
ブレイクダウンへの仕掛けも、丁寧にコントロールされていたように見えた。すべてのラックに対して激しく仕掛けていくわけではなく、ある程度捨てながら、それでいて相手のサポートが遅れたり崩れたりしたシーンでは、的確にスティールを狙いにいったり、練られたブレイクダウン戦略が見られた。
【マッチスタッツをチェックする】

それでは試合のスタッツを見ていこう。
ポゼッションとテリトリーは、それぞれスティーラーズが上回る結果となった。圧倒的というほどではないが、ある程度優位に立って試合をコントロールしていたということができるだろう。スティーラーズはその中で14回の敵陣22メートル内への侵入を果たしている。
しかし、スティーラーズは14回の敵陣22メートル内侵入から3つのトライしか奪うことができていない。相手のディフェンス時のペナルティによって連続してこのエリアでポゼッションを獲得することもあったが、このエリアでの決定力を高めていきたいところだろう。
キャリーに対するパスの比率は「そのチームがパスとキャリーのどちらに重きを置いているか」が見えてくる指標ではあるが、サンゴリアスが平均より少しキャリー寄り、スティーラーズがパス寄りという数値になった。
サンゴリアスは9シェイプを好んで用いていることから、1回のパスでキャリーが生まれる、つまりパス回数が少なめになる、ということが想像できる。スティーラーズは10番のブリン・ガットランドを経由するアタックが多く、パスが多くなっていることがわかる。
それ以外の気になる点としては、サンゴリアスのペナルティ、スティーラーズのターンオーバーロストといったところだろうか。どちらも(おそらく)望む水準とは違う数値となっており、双方の苦戦の理由になったと推察できる。
【プレイングネットワークを考察する】
〈東京サントリーサンゴリアス ネットワーク〉

まずはサンゴリアスのネットワークを見ていきたい。
特徴としては、ラックからFWの集団に直接パスをする9シェイプの比率が高めに見える。100回ほどのキャリーに対して約4割を占める戦略だ。数回は9シェイプからスイベルパスでバックスラインに対して展開されており、階層構造を用いていたことがわかる。
バックスラインへの展開を見ると、10番のケイレブ・トラスクや石田一貴へのパス回数が最も多いが、12番の中野将伍や15番の松島幸太朗へのボール供給が多いという結果になった。
中野はFWのようにアングルをつけてラックに向かって走り込みながらボールをもらうペネトレーターとしての働きが多く、松島は準プレイメーカーとしてアタックラインを構築したり、ラックからボールを受けてキックを蹴り込んだりした。
ネットワーク自体はある程度の複雑性を持っており、それぞれの選手が様々な選択肢を持った状態でラックからボールを受けている。10シェイプの回数も比較的多く、9シェイプをベースにしながらBKでの展開も活かしていた。
〈コベルコ神戸スティーラーズ ネットワーク〉

次にスティーラーズのネットワークについても確認していく。
スティーラーズは、非常に多くのボールを9シェイプに供給している。そのままキャリーに持ち込むだけではなく、バックスラインへのスイベルパスを使ったパスワークも見られていた。
これは1-3-3-1という中央に厚いポッドの配置によって、9シェイプが好んで用いられていることが想像でき、司令塔であるガットランドを中心に据えたシステムであることも相まって、単にポッドを使うだけではなく、流動的にボールを動かしていることがわかる。
一方で、ラックから直接バックスにボールが供給される回数はそこまで多くはなかった。ガットランドは9シェイプからスイベルパスでボールを受ける回数も多く、比較的バランスのいい供給となっている。
それぞれの選手に渡ったボールは、選手個々の役割に応じた活用がされる。例えば11番のブルアはキャリーを得意とするため、ラックに近い位置でボールを受ける、FWのような役割の中でキャリーをすることがあった。選手ごとの役割はある程度絞られ、ネットワークも比較的単純な構造をしていた。
◆まとめ。
サンゴリアスとしては、ペナルティを減らしていきたいところだろうか。ペナルティが発生すると、ゴールを狙われて簡単にスコアに繋げられたり、相手に邪魔されることなくエリアをとることができる手段につながる。構造性の精度を上げながら、規律を重視して修正を加えていきたい。
スティーラーズは、いい試合展開には持ち込むことができた。しかし、敵陣への侵入回数に対してスコア効率は相手よりも悪かった。必ずしもいいアタックはできていなかった。敵陣に入る準備は整っている。あとは決定力を磨いていきたい。
【プロフィール】
今本貴士 / いまもと・たかし
1994年11月28日生。九段中等教育学校→筑波大学。大学・大学院での学生トレーナー経験を経てNECグリーンロケッツでアナリストとしてのキャリアをスタートする。NECグリーンロケッツ東葛で2年間活動し、退団後はフリーアナリストとして個人・団体からの依頼で分析業務に携わる。また、「UNIVERSIS」という大学ラグビー分析専門の連載をnoteにて執筆している。
