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【日本代表欧州4連戦を追っかける/DIARY⑩】ウェールズ戦から出場可能。ホッコの日本愛、深し。
ウェールズ戦から日本代表として出場可能となるハリー・ホッキングス。208センチ、124キロ。27歳。(撮影/松本かおり)
2025.11.13
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【日本代表欧州4連戦を追っかける/DIARY⑩】ウェールズ戦から出場可能。ホッコの日本愛、深し。

田村一博

 きょう(11月12日)もウェールズ、カーディフは雨。本降りにはならないが、降ったり止んだりが繰り返される。
 現地の人が言うには暖冬らしい。確かに日中はあまり寒くない。が、夜はそこそこ冷え込む。

 日本代表のこの日の練習は午後から、いつものように郊外のグラウンドでおこなわれた。
 アンストラクチャーの状況を作ってのゲーム形式の攻防はハード。アイルランド戦で足りなかった、トライを取り切る点も強く意識されている。

 みっちり2時間。試合週にもかかわらず、いつも火曜、水曜はハードなコンタクトをともなったトレーニング。怪我人が出る可能性もあるが、対戦相手のタフさ、こちらのメンバーの若さを考えての取り組みだろう。
 前週、ディラン・ライリーは「コーチたちがこれがベストと考えるなら、信じてやるだけ」と言っていた。全員、同じ気持ちだろう。

全員が泥だらけになって練習。連日、コンタクトの激しいトレーニングが繰り返される。(撮影/松本かおり)


 練習後、日本代表選手になる資格をクリアし、11月15日のウェールズ戦から出場可能となるハリー・ホッキングスに話を聞いた。
 この資格取得のタイミングを睨み、秋の国内合宿から代表活動に参加し、チームメートとハードトレーニングを積んできた「ホッコ」と親しまれる208センチの長身LOは、「ついに試合に出られるようになった。嬉しいですね。もし試合出場となったら、やれることすべてをやりたい」と笑顔だった。
「自分のフィジカル面の強さを前面に出して、パワーのあるプレーで、チームに勢いを与えたいですね」

 これだけの長身で、たくさん走る。世界の大型LOを見ても、このタイプは多くない。
「日本に来て早いスピードの展開に追いつくようにしていたら、自然といまの速さと体になりました」
 日本代表での練習を見ていても、プレーの連続性が高く、よくタックルもする。

 19歳でスーパーラグビーへのデビューを果たした。当時所属していたレッズのブラッド・ソーン ヘッドコーチに「ワラビーズで100キャップを獲得できる」と素質を高く評価されたが、日本ラグビーの中でさらに力を伸ばしたと言っていいだろう。
 来日後、サンゴリアスのコーチから、「背が高いぶん、胴も長い。コアが弱かった。それが原因で、スクラムもボールキャリーも、(倒れた後の)ボールプレゼンテーションも、うまくいかない。S&Cコーチと連動して改善していきました」と聞いたことがある。
 本人も当時、「いろいろ教わりました」と言っていた。

 現在の日本代表のLO陣について、「ワーナー(ディアンズ主将)をはじめ、リーグワンでも活躍するいい選手ばかりいます。競争力が高いポジション」と言う。その中でしっかりとトレーニングを重ね、出場機会を得るつもりだ。

「日本代表になりたいと思ったのは、サンゴリアスに加わって1年経った頃でした(2020年度から所属)。日本のラグビーの環境にも慣れ、このチームで長くプレーしていこうと思いました」

スローイングの練習をするWTB石田吉平。(撮影/松本かおり)


 府中のグラウンドで仲間たちと優勝を目指す。そんな日々に没頭しているうちに、思っていた以上の歳月が過ぎた。日本代表が視野に入った。
 自チームを強くしようとする毎日と、その過程で残した結果が代表選出に結びついた。

 2027年のワールドカップは母国のオーストラリアで開催される。
「家族、たくさんの友だちが暮らしているところでの大会。そこでおこなわれるワールドカップのメンバーに選ばれ、プレーすることは楽しみですが、まず目の前の試合に集中し、その次、またその次と、一戦ずつ戦って先が見えると思っています」

 母国とは違う国の代表選手になるのはどんな感覚なのか。
「オーストラリアで生まれましたが、長く日本で暮らし、気持ちは日本にあります。仲のいいチームメートもいて、その(国の)代表になれるのは誇らしい」とし、待ちに待った初キャップを得る瞬間を心待ちにする。

 近鉄でプレーしていたマットさんを長男に、兄4人と1人の姉を持つ6人きょうだい。そのうちの数人がロンドンで暮らしており、スペインからやって来る友だちも含め、ウェールズ戦には10数人が応援のために足を運ぶそうだ。

 サンゴリアスの仲間との普段の会話はスムーズ。本人は「少しだけね。聞くのは大丈夫」と言って、「話すのは難しい」と続ける。日本への愛情がいろんな形で伝わってくる人だ。

 日本での5シーズンで、トップリーグ9試合+リーグワン64試合。赤白のジャージーを着るにふさわしい足跡がある。
 大好きな国での最初のキャップが白星だったら最高だ。

この日も小雨。午後4時頃には暗くなる。(撮影/松本かおり)




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