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11月13日はカーディフに来て4日目で初めて青空を見た。
穏やかな天気の中、街を散策。カーディフ城近くや、賑やかな通りを歩く選手たちの姿もちらほら。日々ハードトレーニングをおこなっている。みんな、オフの日をそれぞれ楽しんだようだ。
ウェールズは生活の中にラグビーが溶け込んでいる。ウェールズ×日本(11月15日)がおこなわれるプリンシパリティスタジアムは街の中心地からすぐ近く。ショッピング街にはラグビーショップもあり、パブには試合開催の告知ポスターや古いラグビーの写真が飾られ、建物の外壁にラグビーの絵がドーンと描かれているところもあった。
お土産物店にも必ずラグビーボールが置いてある。



11月11日の練習後には日本代表の練習場からバスで15分のところにある『GROGGS』(グロッグス/The Grogg Shop)に行ってみた。世界的に有名なラグビー人形のお店だ。
粘土で作り、それを焼き上げ、色付けした人形は味がある。2015年のワールドカップ、日本が南アフリカを倒した翌年には日本代表、五郎丸歩のものも作られた。そんなことを考えながら到着すると、店の扉の営業時間を知らせる紙に五郎丸の顔! 嬉しいなあ。
手作業で人形を作るリチャード・ヒューズさんと話した。
「週末のジャパン戦のことを考え、私はとてもナーバスになっているんだ。7月には負けたからね」
リチャードさんには悪いが、日本代表には、五郎丸歩に続く日本人選手の人形製造を考えるきっかけになるパフォーマンスを見せてほしい。
テストマッチ2日前、11月13日の夜には、ウェールズ戦に出場するメンバーに関する記者会見がカーディフ市内のホテルで開かれた(午後8時開始)。
チームからはエディー・ジョーンズ ヘッドコーチ、ワーナー・ディアンズ主将が出席。ウェールズのメディアも数人参加した。
日本代表のメンバーは、アイルランド戦の先発メンバーから2人が変更となった。為房慶次朗が3番で出場し、竹内柊平がフィニッシャーに。前戦と役割が入れ替わった。ジャック・コーネルセンは6番で先発復帰だ。
リーチ マイケルがふくらはぎを痛めてチームを離脱したバックローのフィニッシャーにはタイラー・ポールが入り、20番のジャージーを着る。日本代表資格をクリアし、この試合から出場可能となったハリー・ホッキングスが19番を付け、PR古畑翔とWTB植田和磨がそれぞれ17番、23番でフィニッシャーに加わった。
ホッキングス、古畑、植田は、出場すれば初キャップ獲得だ。

ジョーンズHCは冒頭に、「この秋の4戦目。チームは各週(の試合を通して)上達しています。トレーニングでも成長を重ねていて、状態はいい。ウェールズはヘッドコーチの変更もありましたが今年3試合目。お互いをよく知っている同士です。プリンシパリティスタジアムでの試合を楽しみにしています」と話して、メンバー選考について話し始めた。
タイトヘッドPRの入れ替えについては、「(両選手は)3番の一番手と二番手」とし、「最後の20〜30分のところでスクラムでプレッシャーをかけられると思っています」。先に為房が出て試合を作り、最後に竹内がフィニッシュするイメージを描いての起用だ。
「ホッキングスは体が大きくて、テストプレーヤーになれるポテンシャルを秘めている。今回起用できて嬉しく思っています。古畑は怪我をしていましたが、そこから回復した。ハードトレーニングを積み重ねてスクラムでも手応えを感じているようです。竹内とともに出場し、最後にスクラムでの優位性を図りたいと思います。植田はウェールズ戦後にスコッドから外れていましたが、トレーニングで一貫したパフォーマンスを見せていたため今回メンバー入りしました」
7月の対戦時とはヘッドコーチが代わり、現在はスティーヴ・タンディー ヘッドコーチが指揮を執るウェールズ代表については、「アタックは同じ考えでしょう。ただ、タンディーはディフェンス(面のスペシャリスト)で知られている。コネクトして(守り)チョークするタックルにこだわっています。そこが以前とは違うし、試合に大きな影響を与える」とした。
アイルランド戦で見られた、トライを取り切れない課題の解消は進めている。
「ハードワークに尽きます。チャンスは作れているのにフィニッシュできていないのは、ボールを持っている選手の周りの冷静さや、サポートの深さが足りないのが理由。練習ではアンストラクチャーの状況を作り、サポート(役の動きの修正)のところに着手しています」
先の試合でWTB長田智希がブレイクしたものの、 サポートのSH齋藤直人が前に行き過ぎてオフロードパスがうまく通らなかったところがあったことを例に出して話した。
「そういったプレーが何回かあった。そうならないような癖をつけるため、(これまでと違う)サポートコースの習慣づけを図っています。繰り返しの訓練と習慣を変えるためのトレーニングにこだわっています」

テストマッチが毎週続く中でも、連日体をぶつけ合う激しいトレーニングを続けていることについては、「日本が他の国と同じことをしていてはダメだ」と理由を口にした。
それについてディアンズ主将も、「経験の浅い選手たちがテストマッチに出た時(その強度の高さに)驚かないようにするためにも必要」とHCの考えを支持した。
現地記者からは、ウェールズがホームのプリンシパリティスタジアムで2年間勝っていないことについての質問も出た(2023年11月のバーバリアンズ戦、同年8月のイングランド戦勝利が最後)。
ジョーンズHCは、まずスタジアムについて、「素晴らしい。街の中にあり、周囲は賑やか。ファンは試合の日の午後そこで過ごし、スタジアムに行き、熱狂的な声援でウェールズを応援する」と述べ、「独特な雰囲気です。(自分が)イングランド(代表HC)の時は、いつも屋根が閉まるのか空いているのかディベートされていましたが、今回は閉まるそうです。その場合、(スタジアムはファンの声などで)さらに雰囲気が増します。強烈なファン、野次も飛ぶでしょう。若手主体のチーム(日本代表)がその中でどう対応し、勝ちにいくのか、学ぶ絶好の機会」と続けた。
そして、ウェールズ代表のメンタルに触れ、「(そこで2年間)勝てていないプレッシャーが(彼らの気持ちに火を点けて)アドバンテージになるのか、精神的負担となるのかは、チーム次第」と話し、「我々としては、負担と考えてほしい」とした。
2年後のワールドカップに向けての日本代表の成長については、「(現体制)2年目となりメンバーは安定してきていると思います。10から20キャップの選手が増えてきてペース作りが進んでいるし(メンバー間の)ケミストリーも起こり、いい方向に向かっています。そしていい方向に向かっている時こそ必要なのは(その傾向を)さらに跳ね上げるためのブースト(押し上げるもの)で、それは勝利。今週のウェールズ戦でそれが得られるといいですね」と話した。
ただ、代表チームとして「結果が求められていることは理解している」。「勝てばチームは成長しているととらえられ、いい内容でも負けたら、プロセスが遅れているとされても仕方ないでしょう」とも言う。
その上で、「現状を見ると成長はできているし、毎試合チームは強くなっています。アイルランドにも60分まではしっかり戦えていました。それでは十分ではないと分かっています。だから、ウェールズ戦では80分戦える内容にしたい。闘争心を切らさず、集中力高く、耐えながら戦い続ける。不必要な細かいミスをなくしたい」

チームの結束を感じている。
例えばリーチが離脱する時、若い選手たちが本人に「離れないでほしい」と伝えたそうだ。
「本人(リーチ)は感銘を受けた、心を動かされたと言っていました。そう聞いて、いい話だな、と。(残った選手たちは)みんな、必死に戦うだけです」
ワーナー主将はリーチから特別な言葉はなかったが、「残り2試合頑張ってください、と。頑張りますと答えて握手しました。リーチさんがいなくても、僕は何も変わらない。パシフィックネーションズカップでもそうだったし、自分は自分の仕事に集中してプレーします」。
プレーでリーダーシップを発揮すると誓った。
同主将は、今年3度目となるウェールズとの対戦に向け、「日本での1戦目は後半いいアタックができた(ので勝った)。2戦目はキッキングゲームとディフェンスのエラーでやられました。なので、そこを修正したいです。いろんなゲームをやってきて成長していると思います。シンプルに自分たちのラグビー、自分たちのアタックを100パーセントやって、相手のアタックを止めたい」と勝利をイメージしている。
フィニッシャーに入った208センチのホッキングスについては、「リーグワンで戦う時は毎回、ラインアウトの対策が大変。それが強みで、いいアタックも、いいディフェンスもできる。その力を試合でも見せてくれると思う」と期待を寄せた。

【2025年11月15日 vsウェールズ/日本代表メンバー】
①小林賢太(東京サントリーサンゴリアス/早大/181、113/26/7)
②佐藤健次(埼玉パナソニックワイルドナイツ/早大/177、108/22/7)
③為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/明大/180、108/24/18)
④エピネリ・ウルイヴァイティ(三菱重工相模原ダイナボアーズ/ラトゥ カダヴレヴスクール, FIJ/196、122/29/9)
⑤ワーナー・ディアンズ◎(東芝ブレイブルーパス東京/流経大柏/201、117/23/30)
⑥ジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ/クインズランド大/195、110/31/27)
⑦下川甲嗣(東京サントリーサンゴリアス/早大/188、105/26/21)
⑧マキシ ファウルア(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/天理大/187、112/28/22)
⑨齋藤直人(スタッド・トゥールーザン, FRA/早大/165、73/28/26)
⑩李 承信○(コベルコ神戸スティーラーズ/大阪朝高/176、86/24/27)
⑪長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ/早大/179、90/25/24)
⑫チャーリー・ローレンス(三菱重工相模原ダイナボアーズ/ハミルトンボーイズ高/170、89/27/7)
⑬ディラン・ライリー○(埼玉パナソニックワイルドナイツ/ボンド大/187、102/28/36)
⑭石田吉平(横浜キヤノンイーグルス/明大/167、75/25/8)
⑮矢崎由高(早大3年/桐蔭学園/180、86/21/8)
⑯平生翔大(東京サントリーサンゴリアス/関西学大/174、103/23/2)
⑰古畑翔(埼玉パナソニックワイルドナイツ/大東大/185、118/29/-)
⑱竹内柊平(東京サントリーサンゴリアス/九州共立大/183、115/27/22)
⑲ハリー・ホッキングス(東京サントリーサンゴリアス/クインズランド大/208、124/27/-)
⑳タイラー・ポール(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/ネルソン・マンデラ大/195、111/30/2)
㉑福田健太(東京サントリーサンゴリアス/明大/173、83/28/7)
㉒小村真也(トヨタヴェルヴリッツ/帝京大/180、92/23/1)
㉓植田和磨(コベルコ神戸スティーラーズ/近大/177、87/22/-)
※カッコ内は所属チーム、出身校、身長・体重、年齢、キャップ数の順。◎はゲームキャプテン、○はゲームバイスキャプテン