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【Just TALK】(矢崎不在の間は)僕たちで勝つから行ってきていいよ。服部亮太[早大2年]
帝京大戦には敗れるも、モスト・インプレッシブ・プレーヤーに選ばれる活躍。今季の関東大学対抗戦は全5試合中4試合に出場(すべて先発)。©︎JERFU

【Just TALK】(矢崎不在の間は)僕たちで勝つから行ってきていいよ。服部亮太[早大2年]

向 風見也

 早大ラグビー部の2年で正スタンドオフの服部亮太は、11月2日、東京・秩父宮ラグビー場で大学選手権4連覇中の帝京大に20-25と惜敗。加盟する関東大学対抗戦Aにあって、開幕からの連勝を4で止めた。
 
 昨季の選手権決勝と同カードの一戦。約1週間前に筑波大に14-18と敗れた帝京大を向こうに、スコアした直後の失点や反則禍で苦しめられた。また後半開始早々のチャンスを逃すなど、決定力にも課題を残した。

 もっとも、スクラム、自陣ゴール前での防御には手応えを掴んだ。

 ルーキーイヤーだった昨季からレギュラー司令塔の服部亮太は、前半6分、持ち前のスピードとスペース感覚を活かして先制トライを挙げた。

 足技も光った。

 7-14とリードされていた27分、相手のチャージを目の前にしながら約50メートルのドロップゴールを決めた。

 その直後の攻防では、自陣22メートルエリアからの60メートルほどの長距離砲、ハーフ線付近右中間から敵陣22メートル線付近右への高い弾道と、好キックを重ねた。その直後に味方フォワードがスクラムでペナルティキックをもらい、13-14と接近できた(CTB野中健吾主将がPG成功)。

 178センチ、80キロの19歳。服部は、それ以外のシーンでもハイパント、ロングキックでスタンドを沸かせた。後半13、17、18分頃には、タッチキックの連発で度重なるピンチを脱した。

 学生シーンきっての注目株は、このバトルをどう捉えたか。ミックスゾーンで振り返った。

帆柱ヤングラガーズ出身。佐賀工→早大スポーツ科学部2年。178センチ、80キロ。(撮影/向 風見也)


——試合を振り返っていただきます。センターの野中健吾主将は「遂行力」が足りなかったと話しています。

「(点を)獲り切れるところで獲れなかった。10、12番(スタンドオフ、センター)といったゲームをコントロールするポジションの選手は責任を感じています。どうすればスコアできるのかをもう1回、話していきたいです」

——相手の重圧は。

「タイトなゲームになるとわかっていた。苦しい時にどちらが我慢できるか。その、我慢比べで、負けたかなと」

——反則数は帝京大の5に対して早大は12。向こうに得点機が増えるきっかけとなりました。

「レフリーとのコミュニケーションがあまり取れていなかった。いかに(笛の傾向に)アジャストできるか。そこは、帝京大に比べて、できなかったのかなと」

——お互いのコリジョンバトルについては。

「ディフェンスは負けていなかった。そこは、自信をつけるべきところかなと。皆、タックルがえぐくて。全然ゲインもされず、ゴールラインを守った場面もある。武器になるなと」

——ご自身のキックについては。

「きょうは風も強かった。キックゲームに負けると苦しくなる。前に出ながら蹴ることは意識しました。

 いいキックができると、周りも勢いに乗れる。僕も自信を持てる。

(個人セッションでは)コントロールを意識しています。(分量や頻度は)気まぐれです。コンディションにもよるので、そこも考えながら、です」

——きょう披露したようなドロップゴールのトレーニングは。

「(キックオフなどでおこなう)ドロップキックを練習しています。ドロップゴールもその要領です。成果、出たかなと」

 この日の早大は、正フルバックの矢崎由高を欠いていた。昨年から選出されている日本代表の遠征に帯同しているためだ。

 春先は怪我の治療などでグラウンドから離れていたが、復調後の10月から代表活動にコミット。同25日には東京・国立競技場でオーストラリア代表戦に先発した(●15-19)。

 その後渡欧し、現地時間11月1日の南アフリカ代表戦でもプレーした。その一戦では、ジャパンで唯一のトライを挙げた(●7-61)。

早大はこの日、帝京大に敗れて今季4勝1敗となった。今季の関東大学対抗戦は11月2日時点で1敗が4校。早大が勝ち点26でトップに立ち、帝京大と明大が勝ち点25(ここまで5戦終了)。もう1校の筑波大は4戦を戦い3勝1敗で勝ち点16。©︎JERFU


 大田尾竜彦監督は、矢崎は現地時間11月15日のウェールズ代表戦後に早大へ戻ると説明した。シーズン中に主軸を送り出した経緯をこう述べる。

「彼に早大で優勝する気持ちが強いなか、『自分にしかできないことはヨーロッパ遠征に参加することなのでは』と向こうから相談を受けました。長く考えましたが、いまは誰かに頼るのではなく結束してチームを作ってきている。(矢崎には)いましかできない経験をして、いいものを持って帰ってきてもらおうと思い、送り出しました。昨日の試合(南アフリカ代表戦)を見ました。難しい状況で、ミスもあれば、強気に走るよさもあった。非常に伸び盛りかなと。本当に、怪我なく戻って来てほしいです」

 この件につき、矢崎の1学年後輩にあたる服部も応じた。

「彼がいない分、僕らにできることがあります。また彼が戻った時には、こちらが吸収する部分も、僕たちから共有してもらうこともあると思います。いかに、ひとつになれるか(が大事)」

 出国への話し合いは本人、監督、主将によってなされた一方、服部も矢崎と個人的な会話をしているとのことだ。

「『矢崎がいなくなった』ではなく、『(不在の間は)僕たちで勝つから行ってきていいよ』と。彼とチームが決めたことなので(異論はない)」

 これで対抗戦の全勝チームはなくなった。早大の大田尾監督は「対抗戦にはきちっと自分たちの型、ゲームプランを作っているチームが多い。帝京大を中心に切磋琢磨できている」と述べた。
 矢崎が帰国後初の公式戦は11月23日。秩父宮で慶大とぶつかる。



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