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ボールを手にしての63メートルのゲインは、チームトップだった。
9月14日(日本時間/9月15日、午前6時35分開始)、アメリカのコロラド州デンバー近郊で日本代表がトンガ代表を62-24と圧倒した。
プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたのは背番号3、竹内柊平。2度のビッグゲインでチームにモメンタムを与える働きを見せた。
ターンオーバーから攻められて自陣に入り込まれ、FWの激しいランを止め切れずに先制点を許したこの試合(前半6分)。
竹内はキックオフから10分後、相手ラインアウト時に得たFK機に自ら仕掛けて走り、約30メートル前進。サポートするHO江良颯につないでトライを呼んだ。
日本代表は前半25分、トライライン前で150キロのPRベン・タメイフナ主将に防御を破られ、同37分にもLOヴェイコソ・ポロニィアティにラインアウトからインゴールに飛び込まれる。前半は21-19と苦しんだのだが、後半立ち上がりの20分に2トライ(2G)、2PGの20得点を挙げて一気に試合を決めた(スコアは41-19に)。

竹内はチームがギアを上げた時間帯の後半14分にも、SH藤原忍のトライを呼ぶ走りを見せた。
グラウンド中央でPKを得て、SH藤原がタップキックで速攻の意志を示す。そこに走り込んで、今度は約25メートル前進。チーム全体を前に出し、背番号9が仕上げる攻撃の先鋒役となった。
最後の最後まで攻撃の手を緩めることなく、最終的にトンガを圧倒。次週のPNC決勝進出(対フィジー)を決めた試合をエディー・ジョーンズ ヘッドコーチ(以下、HC)は「選手たちが後半のキックを使うゲームプランによく対応した」と評価した。
「トンガはパワフル。前半はタイトな試合になると予想されましたが、ジャパンらしくプレーすることを心がけました。前半は相手にプレッシャーを受け、反則も出ましたが、後半は逆に圧力をかけました」と続けた指揮官は、「結束力のあるチームになった」ことも得点力アップの理由に挙げた。
今季序盤にリーチ マイケル主将が整えた土台と、そのリーダーシップを引き継いだワーナー・ディアンズの働き、そして周囲の選手たちのサポートにも触れ、「自分たちの戦い方を信じ切ってプレーできている」と、チームに漂う空気の良さも伝えた。
強みを出してチームを牽引した竹内は、パワーのある相手に対し、「セットプレーとフィールドプレーで受けずに、80分戦い続けることがチームの目標でした。前半から相手をフィジカルで削っていけば後半に勝機が来る、と。そのプランを遂行できました。スクラムからモメンタムも作ることができた」と話した。
「クイックタップやピックゴーなど、アタックのランは僕の強みで、チームに貢献できるところと自負しています。(自分は)常にオン。相手がオフになった瞬間に行くことを意識しています」
HCから「ボールキャリ―はアグレッシブにいけ」と言われているようで、そういう言葉を受けて、より積極的に動けている。

若い選手たちについて「めちゃくちゃいい。すごくフレッシュ。自分が知らないことも知っていて、若いリーダーも多く、学ぶこと、刺激を受けることも多い」と言う。
その一方で、若手が知らないことがあれば惜しみなく教える。
「中堅、ベテラン、若い人、全員のいいところが集まってできているチームです」
「競争とチームビルディング、その両方をわくわくしながらやっています」という27歳は、「ハードワークするのが日本のアイデンティティーで、相手より動くことも含め、そういった考えは去年と同じも、より明確に目標を持ち、全員が主体的に動けているのは変わってきたところ」と体感を言葉にした。
得点力アップについては、「どうやったら試合に勝てるのか(プレビューなどを経て)、試合に出る23人だけでなく、スコッドの全員が理解できているから」とした。
「中学までは体も小さく、相手に狙われるような存在だった」と過去を振り返る好アタッカーは、自身の進化について、メンタリティに原点があると力説する。
「自分の強みのボールキャリーで、誰にも負けたくないと思っています。自分の目の前の相手、トイメンに絶対に勝ちたいと、いつも思ってプレーしています」
プレーするステージのレベルが上がり、壁にぶつかろうが、自分のアイデンティティーを消すのが嫌で、そんな時は、それまで以上に努力する。時には自分より強そうな選手をわざわざ探し出して、さらに高いところへ進もうとすることもあるそうだ。
トンガのハードランナーたちが竹内に火を点けたゆえの、この日の躍動だったのかもしれない。
決勝で当たるフィジー(準決勝でカナダを63-10と圧倒)にも、好ボールキャリーをする選手が多い。いつも以上に闘志が燃え上がる80分になる。
