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【Just TALK】「去年と比べて断然、よい雰囲気。モメンタムがある。わくわくしています」。李承信[日本代表/SO]
り・すんしん。2001年1月13日生まれ、24歳。兵庫県出身。176センチ、86キロ。兵庫県ラグビースクール(4歳/幼小中)→大阪朝鮮高級学校→コベルコ神戸スティーラーズ(2020〜)。日本代表キャップ23。(撮影/松本かおり)
2025.09.16
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【Just TALK】「去年と比べて断然、よい雰囲気。モメンタムがある。わくわくしています」。李承信[日本代表/SO]

向 風見也

 エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ体制となって2シーズン目のラグビー日本代表が、北米勢、環太平洋諸国とのパシフィックネーションズカップ(PNC)で2年連続での決勝進出を決めた。

 渡米中のチームは現地時間9月14日、コロラド州デンバー近郊のコーマスシティ、ディックス・スポーティング・グッズ・パークでトンガ代表との準決勝を62-24で下した。

 序盤のエラーや自陣ゴール前での守りに課題を残しながら、21-19で迎えた後半に計5トライ(ペナルティトライを含む)。防御の裏側を突くキックも有効に使い、試合を支配した。

「フィットネスでは(優勢)。相手の足が止まりだした時にひとりひとりがエフォートしていた。あとはコミュニケーション、(プレーの)遂行力を改善していくともっとスコアができる」

 こう述べたのは李承信。先発のスタンドオフとして攻めを統率し、自身も2本のペナルティゴールなどで計20得点をマークした。

プレースキックの精度も高く、チームの勝利を支える。トンガ戦より。©︎JRFU


 オンライン取材で振り返る。

「前半はフィジカルでもテリトリーでもプレッシャーを受け、アタックではフェーズを重ねられていなかった。ディフェンスでも(必須の)ダブルタックルはできていながら食い込まれていた。リードはしていたけど、自分たちのラグビーができていなかった。

 後半は(ハーフタイムに)エディーさんからも『最初の10分でどれだけスコアし、テリトリーでもプレッシャーをかけられるかだ』と。相手はラインスピードを上げていた。その分、キックスペースにチャンスがありました。アタックしながらのキックでプレッシャーをかけられたし、フェーズを重ねてトライもできた。前半の部分(課題)を修正できたのはよかった」

——キックの使い方について。

「キックの使い方も、中盤——前半20分から後半20分まで——のコントロールも、常に意識してきた。バックスのところではどれだけスペースをスキャンして(見て)遂行できるか(を心がけている)。9、10番(司令塔団)のキック一辺倒ではなく、アウトサイドからも空いているスペースに関してのクリアなコミュニケーションもありました。アタックしながらキックできてきているのは成長。それは決勝でも大事になるので伸ばしていきたいです」

——ペナルティキックからショットを刻むか、トライを狙うかの判断については。

「ワーナー(・ディアンズゲーム主将)と——(1トライ1ゴールでは追い付かれない)8点差以上をつけるなど——どうスコアでプレッシャーをかけられるかを話していた。相手の足が止まってきたところで自分たちのラグビーができた。ダブルスコアになっても(動きを)止めずに精度高くプレーしていく点は、成長できている。

 ディテール、コミュニケーションが改善されれば、きょうはもう2~3トライは獲れた。修正して、来週の相手を分析して、自分たちのアタックをしたいです」

——チームのまとまりをどう見ますか。

「プランが明確になっている。自分たちの強み、ジャパンラグビーとは何なのかを理解した選手が増えている。ゲームのスタートでどれだけファストスタートを切って、中盤戦をコントロールして、ストロングフィニッシュできるかをウェールズ代表戦(7月の2試合)から意識した。プランとコントロールのところでセイムページ(同じビジョン)を見られています」

 身長176センチ、体重86キロの24歳。2022年にテストマッチ(代表戦)デビューを飾り、2023年にはワールドカップフランス大会に出場した。果敢なランや冷静さが評価されたのだろう。ジョーンズHCのもとでは概ね正スタンドオフを託される。

 芽生えているのはリーダーの自覚と、チームの命運を握る責任感か。大会前の8月下旬にあった宮崎合宿中には、こう応じていた。

仕掛けもできる司令塔。状況に応じて動く。©︎JRFU


——今度のPNCでは、ワールドカップでの代表主将を2度経験したリーチ マイケル選手が選外となっています。大黒柱がいないなかでのリーダーシップについて。

「去年のPNCの時も同じような環境でした。(今年の)6~7月はリーダーズグループで活動させてもらいましたし、今回はアタックリーダーです。若いメンバーが多いので、自分も24歳ですが中堅です。リーダーシップを持ってやっていかないといけない。コーチからもらったチームのプランを理解し、クリアにチームに落とし、皆が自信を持てるようにしていきたいです」

——リーチさんからの助言は。

「特にありませんが、ウェールズ代表戦が終わってから、『PNCは行かないから』みたいな話をいただいていた。(スクラムハーフの齋藤)直人さんとはオフ中にコミュニケーションを。何を改善すべきか、ノエビアのゲーム(黒星に終わった対ウェールズ代表シリーズ2戦目=兵庫・ノエビアスタジアム神戸)でなぜ負けたのかについてです。完全にオフになるのではなく、(ジャパンのことを)頭に入れながら活動してきた。

(取材時は)主将が誰になるかはわかりませんが、主将の負担を減らせるよう、役割分担してやっていきたいです」

——7月のウェールズ代表との戦いのさなか、「エディーさんのために勝ちたい」という趣旨で語っていました。

「エディーさんのチームになって1年以上が経ちました。選手だけではなくスタッフもハードワークしてくれている。何より、テストマッチに勝てていない、2019年(8強入りしたワールドカップ日本大会)以来、ティア1(ハイパフォーマンスユニオン)に勝てていないともがき苦しんでいた部分もあったなか、(7月は)いい相手と対戦できる。何よりもこのチームで勝ちたいという思いが、個人としてもより強くなってきている。…そういった思いの発言でした」

——1勝3敗に終わった昨秋のキャンペーンでは、当事者たちがチームに疑いを抱いているような状況にも映りました。

「(怪我で)参加できていなかったですが、正直、プランや自分たちのラグビーに疑問を持つところ(傾向)はありました。ただ、それもすべて(必要だった)。土台を作る1年間だった。それがこうウェールズ代表戦(1勝1敗)で形になりました。僕は、何ひとつ間違いがないと思っている。リーダーとして正しい方向に導けたら」

リーダーとしての自覚も増している。©︎JRFU


——周りに色々なことを言われる中、信じた道を突き進むにはどんな心がけが必要ですか。

「うーん。まず、自分自身の目標を持つことと、チームがどこに向かって何を達成したいかを理解することが大事です。チームが向かう目標と自分の目標が違ったところにあるのなら、この組織にいる必要はないと思います。(全員の)目標が同じであれば、いいチームになれると思います。どんな困難、苦しいことがあっても、一丸となっていれば…。エディーさんは具体的にゴールを示してくれる。信じて進むだけです」

 PNCの決勝は現地時間20日、ユタ州ソルトレークシティーのアメリカ・ファースト・フィールドである。対するフィジー代表は世界ランクで日本代表を4つ上回る9位。両軍は前年度の同大会ファイナルでも激突し、日本代表は17-41で敗れている(東大阪市花園ラグビー場)。

 リベンジなるか。カードが決まる前に、李はこうも口にしていた。

——遠征先でPNCのファイナリストとなりました。

「若いチームが(国内での初戦から)タフな3連戦を勝ち抜いてきた。またアメリカで3週間ほど過ごし、オン・フィールド、オフ・フィールドともにコネクションできている。去年と比べて断然、よい雰囲気、チームのモメンタムがある。わくわくしています。

 去年の決勝を経験したメンバーも半分くらいいます。決勝にどういうプレッシャーがかかるかも理解できて、いい準備ができた。去年より自信を持って試合ができます」



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