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【with サクラフィフティーン/RWC2025 ②】2億パーセントの自信。アイルランド戦メンバー発表の日本代表も「自信あり」
アイルランド戦に出場するLO佐藤優奈(左)とSO大塚朱紗。(撮影/松本かおり)
2025.08.23
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【with サクラフィフティーン/RWC2025 ②】2億パーセントの自信。アイルランド戦メンバー発表の日本代表も「自信あり」

田村一博

 地下鉄のハイストリート・ケンジントン駅のすぐそばに『ジャパンハウス・ロンドン』はある。
『和』の文化を愛好する人たちが集うその場所は、ギャラリーや多目的スペース、ライブラリー、ショップ、カフェ、レストラン、観光案内コーナーなどがあり、日本の魅力を感じられる場所。ロンドン2日目の8月21日の夜は、同所で開催されたイベントに出た。

 この夜に催された『Women’s rugby in Japan』は、プレミアシップ ウィメンズラグビーのイーリング トレイルファインダーズに所属する玉井希絵さんと私で、女子ラグビーの魅力や日本の女子ラグビーの歴史や現状を伝えるもの。
 内容はそれだけにとどまらず、玉井さんが日本を飛び出して得たものや、人生哲学にまで及んだ。

ジャパン・ハウスでのイベントの模様。玉井希絵さんのチャレンジ精神に多くの人が惹きつけられた。(撮影/松本かおり)


 2022年開催のワールドカップにも出場し、日本代表キャップ16を持つ玉井さんは、松阪高校時代までパスケットボールに熱中し、ラグビーを始めたのは関西学院大学に入学してから。卒業後は英語科の教員とラグビーの両立をしていたが、やがてPEARLSでのプレーに集中する。
 そこからどっぷりとラグビーに浸り、異国の地でも楕円球を追う超ラグビー愛好家となった。

 2023-24シーズンから現クラブでプレーする玉井さんは、世界各国の代表選手たちと公私をともにし、刺激と笑顔をもらう毎日を暮らしている。進行役のサイモンさんに、「あなたの人生の選択は正しかったですか。他の人にもすすめますか」と問われ、「2億パーセント正解で、みんなも絶対にやった方がいい」と大きな声で答えていた。
「みんなも同じようにした方がいいよ」と言える人生を歩む人は輝いていたなあ。明るい性格もあり、会場にいた70名超、オンライン参加も含めると100名超の人々は、1時間のイベント中、ぐーっと玉井ワールドに引き込まれていた。
 いいパブに出会えた初日に続き、ロンドン2日目も、良き晩を過ごすことができた。

 そんな夜が明けてロンドン3日目は、朝から荷造りをしてアールズコートのホテルを出なければいけなかった。
 ロンドンのユーストン駅から、電車で北に約1時間移動する。女子日本代表(サクラフィフティーン)は8月24日、ノーサンプトンの地でラグビーワールドカップ2025の初戦(8月24日)、アイルランドとの一戦を迎える。
 決戦の2日前の同22日、チームは出場予定メンバーを発表した。

 午後1時から記者会見が開かれるため、早朝にチェックアウト。レスリー・マッケンジー ヘッドコーチ(以下、HC)と長田いろは主将、LO佐藤優奈、SO大塚朱紗が出席する場に向かった。
 会見がおこなわれたのは、ノーサンプトンから東へ約25キロ離れたダベントリーという街の郊外にある、ゴルフコース併設のホテル。サクラフィフティーンは8月9日に敵地でのイタリア戦を終えた後、同地に滞在して準備を重ねてきた。

【写真上左と上右】玉井さんとのイベント後に食べた焼きそばは、有名日本食チェーン店の「wagamama」にて。
【写真左下】ワールドカップ開幕日の朝の天気予報。盛り上がってきたぞ。
【写真右下】朝ご飯に駅で食べたミニ・ポーチドエッグ+コーヒー。これで約1900円


 ノーサンプトン駅まで電車に1時間揺られ、そこからはバス。この路線が周辺の集落を回りながらダベントリーへ近づいていくため、とても大回り。約50のバス停を経て1時間15分、やっと近くに着く。
 しかし、最終目的地は、さらにその先だ。ダベントリーの中心からはタクシーを使うしかないところにサクラフィフティーンは拠点を構えている。

 この日の夜、大会は、イングランド×アメリカのオープニングゲームで始まる。
 そのことを受けマッケンジーHCは自身の胸の内について「興奮、そして緊張が高まっている」と吐露し、「今晩の開幕戦、サンダーランドでのイングランド×アメリカの開幕戦によって、私たちもワールドカップが始まったという実感がどんどん湧いてくると思います」。
 準備を続けてきたサイクルから抜け出し、初戦のキックオフへ向けてチームとともに緊張感を高めていきたいとした。

 また選手たちに対し、「ディテールを詰めながら積み重ねてきた努力を誇りに思ってほしい」と呼びかけ、敗れたイタリア戦のあとの時間にも「すごくいい準備ができた」と自信を見せた。

 15-33と敗れたイタリア戦については、「いいパンチを食らった」と表現した。
「望んだ結果ではありませんでしたが、現実をしっかりと直視できました。自分たちのパフォーマンスをしっかり出すためには何をしなくてはいけないかを理解するための、振り返りの機会になったと思っています」

 2022年の前回大会以降の3年間を振り返り、「自分たちがチームとして、人間として成熟した期間」と話した。
 ゲームのマネージメント能力や相手にプレッシャーをかけ続けられる力は、3年前と比べて高くなったと自負する。そして、チャンスをつかみ切って勝利につなげられるチームになったと、選手たちの成長を評価した。

 プールCで2位以内に入り、ノックアウトステージに進むためにも勝たなければいけないアイルランド戦について、「大会の中でもキーとなる試合。我々の大会中の流れ、雰囲気、そしてスタンダードと、すべてを決める試合という位置付けです。この試合に勝つために準備をしてきました。ジャパンたるチームがやってきたことを、しっかりと世界に示す試合だと思っています」と、必勝の覚悟を強く示した。

レスリー・マッケンジーHC(左)と長田いろは主将。(撮影/松本かおり)


「いい準備ができていて、チームはいま、自信がある状態です」と話した長田主将は、「いままで合宿や遠征でやってきたことを全部出して、アイルランドに勝ちたい」と決意表明した。

「練習の中でのコミュニケーションの質や量は、どんどん良くなっています。練習量が自信になっています。練習で得た自信を試合につなげたい。スコアするスキルもあり、いろんなオプションを持っています。キック、ラン、パス、セットピースも含め、すべての技術面、ディテールにこだわって戦いたいと思います」

 LOの佐藤は、「日本中にこの試合に出たかった人がたくさんいると思います。そういう人たちの気持ちを背負って戦う」と責任感を口にした。
「試合ではアタックでもディフェンスでも前に出ます。相手はセットプレーが得意だと思いますが、それに負けないようにラインアウトを(自分たちが)リードし、チームにいい流れを持っていけるように貢献したいと思います」
 フォワードのチームメートたちについても、「一人ひとりが自分のやるべきことを明確にできています」と頼もしく感じているようだった。
「練習でやってきたことを各テストマッチで使い、結果を残したことで、自分たちのチームの強みはこれだ、と思えるようになっています」

「チームをドライブし、モメンタムを生むアタックをしていきます。前回大会(2022年大会)ではスコアを取り切れない点が課題として残ったので、しっかり点をとっていきたい。ディフェンスは一歩でも前で止められるようにしたい」と言うSOの大塚は、「チーム全員で同じ方向を向けている」とした。
「細かいコミュニケーションと細かいスキルを高めてミスを減らしたことで、選手たちはみんな自信を得ています」と、こちらも周囲への信頼感を口にした。

 佐藤はチームの雰囲気について、以前はそわそわしているところもあったと語り、「いまはオンとオフを切り替えて、全体的にいい意味でゆったりしている空気がある」。
 ビッグマッチを迎えるチームの、状態の良さを感じているのだろう。表情を和らげていた。

8月24日にサクラフィフティーンがアイルランドと戦うノーサンプトンのスタジアム『Franklin’s Gardens』


【RWC2025 アイルランド戦 女子日本代表登録メンバー】
① 加藤幸子 (横河武蔵野アルテミ・スターズ/セコム/164、90/25/30)
② 公家明日香(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA/後藤衛生コンサルタント/164、78/30/22)★
③ 北野和子(PEARLS/住友電装/167、92/25/22)
④ 佐藤優奈(東京山九フェニックス/山九/170、76/26/24)
⑤ 吉村乙華(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA/埼玉縣信用金庫/174、83/24/29)
⑥川村雅未(横河武蔵野アルテミ・スターズ/東京リゾート&スポーツ専門学校/173、 75/26/22)
⑦長田いろは◎(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA/関東食糧/168、70/26/40)◎
⑧齊藤聖奈(PEARLS/エイワテック/164、72/33/50)
⑨津久井 萌(横河武蔵野アルテミ・スターズ/リベスト/153、53/25/42)
⑩大塚朱紗(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA/ワンロジスティクス/163、65/26/36)
⑪今釘小町(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA/オキナヤ/ 158、60/23/30)
⑫弘津 悠(ナナイロ プリズム福岡/九州風雲堂販売/169、71/24/17)★
⑬古田真菜(東京山九フェニックス/NTTファシリティーズ/167、70/27/36)
⑭松村美咲(東京山九フェニックス/早大3年/169、72/20/13)★
⑮西村蒼空(PEARLS/長工/167、68/24/21)★

⑯谷口琴美(横河武蔵野アルテミ・スターズ/エヌケイエス/163、75/30/26)
⑰峰 愛美(日体大4年/163、77/21/12)★
⑱永田虹歩(PEARLS/誠文社/162、80/24/29)
⑲櫻井綾乃(横河武蔵野アルテミ・スターズ/NTTファシリティーズ/167、73/29/23)
⑳細川恭子(PEARLS/住友電装/164、71/26/17)
㉑阿部 恵(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA/アールディーシー /147、55/27/32)
㉒山本 実(YOKOHAMA TKM/169 、70/28/38)
㉓畑田桜子(日体大4年/161、65/22/9)★

※カッコ内は所属チーム、在籍先、身長・体重、年齢、キャップ数の順。◎はキャプテン。★はワールドカップ初選出

【RWC2025 女子日本代表試合日程】
プールC/日本、ニュージーランド、アイルランド、スペイン
8月24日(日) vsアイルランド(ノーサンプトン/現地時間12:00キックオフ)
8月31日(日) vsニュージーランド(エクセター/現地時間14:00キックオフ)
9月7日 (日)  vsスペイン(ヨーク/現地時間12:00キックオフ)


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