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【Just TALK】NECがGR東葛を譲渡、リーグ退会も。「会社業績に関係なく、部を維持発展させていくものではないと判断された、と理解」。東海林一[リーグワン専務理事]
CREW(クルー)と呼ばれるグリーンロケッツファンの応援は、いつも熱心だった。(撮影/松本かおり)
2025.08.21
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【Just TALK】NECがGR東葛を譲渡、リーグ退会も。「会社業績に関係なく、部を維持発展させていくものではないと判断された、と理解」。東海林一[リーグワン専務理事]

向 風見也

 ジャパンラグビーリーグワンの東海林一(しょうじ・はじめ)専務理事が8月20日、オンラインで緊急会見。同リーグ、ディビジョン2のNECグリーンロケッツ東葛が、責任企業(日本電気)の判断に伴い第三者への譲渡に向けて検討し始めたと伝えた。
 
 1985年創部のチームは、今年12月からの2025-26シーズンへは予定通りに参加。しかしその年度限りで、日本選手権優勝3回、マイクロソフトカップ優勝1回の実績を誇った古豪が「NEC」の看板を降ろすことになる。

 今回の決定と既存のリーグ規約を照らし合わせれば、今年12月までに新たな受け入れ先が見つからなかった場合、クラブはリーグワンを退会する。

 東海林専務理事は「本発表決定につきましてはリーグとして大変残念に考えていますが、ファンの皆様のためにも譲渡成立に向けまして、NECグリーンロケッツと連携いたしまして、最大の努力をしたいと考えています」と切り出した。

「本決定につき、いくつか補足的な説明をさせていただきます。

 リーグでは、『チームの現状を維持しつつ、保有者が変わること』を譲渡(の定義)としています。リーグワンの規約14条では、譲渡には理事会での承認が成立要件だとしています。その際のポイントは、『既存戦力の7~8割の維持、継承が目途』と考えています。既存チームで新たな活動が始まることを想定し、戦力の引継ぎが必要になる(から)。

 いつまでに譲渡を合意しなくてはいけないのか。

 今回は、譲渡が成立をしない場合は(チームはリーグワンを)退会するものと理解しています。2025-26年シーズン後に退会するのであれば、翌シーズンの1年前、つまり、2025年12月に退会の申請をしてもらうことになります。ここに鑑みれば、譲渡も同じタイミングでの成立(が求められる)」

リーグワンの専務理事を務める東海林一氏。2025年6月撮影。(撮影/松本かおり)


——この話を東海林さんが認識されたタイミング、経緯について。

「約1年前、今回のような譲渡という形ではなく、様々なチームのあり方についての相談ということで、NEC本社からお話をいただきました。

 チームのコスト削減、譲渡、退会の3つについて検討していた。

 その結果を受けて、NEC側が『譲渡。それが成立しなかった場合は退会』という方針を発表するに至りました」

——現時点で新しい受け入れ先は見つかりそうか。

「これまでも様々に検討してきましたが、現時点で確定している先(企業)はないと認識しています」

——譲渡先探しについて。新たな受け入れ先に求められる条件は。

「譲渡交渉の直接的な実施は、NEC本社がなさいます。これからもそうです。詳細について私が存じ上げない部分もあり、コメントする立場にはございません。一方、譲渡先の要件には、(そもそもの)参入要件における『チームの財政を支える』をカバーしているかどうかが挙がります。

(受け入れ先の地域は問わず)日本で法人格を持っていることが必要となります。海外企業でも日本で法人格を持っているところがございます。

 当事者はNECですが、リーグも(サポートに)全力を尽くします。これまでも間接的ではございますが、様々な協力をさせていただいています」

——複数の企業が共同でチームを運営する選択肢はあるか。

「制度的にはある。(NECには)そういう点も含めご検討をいただいている」

東日本社会人リーグ、トップリーグ時代から我孫子に根を張り、地域に貢献してきた。(撮影/松本かおり)


——譲渡が成立する、しないにかかわらず、NECの社員選手の処遇は。

「個々の希望にもよりますが、すべての社員選手のプレー先を見つけることへは最大限の配慮をしていただきたいと、我々からNEC側にお願いしています」

——譲渡が成立した場合、何部からのリスタートになるのか。

「『(既存チームの)保有者が入れ替わる』という形で、NECグリーンロケッツ東葛の地位を継承いたします。(次のシーズンで昇降格がなければ)2部スタートとなります」

——本社のリリースでは、『近年ラグビーを取り巻く環境が大きく変化する中、NECにおけるチームの位置づけを慎重かつ多面的に検討した結果、NECが中長期にわたり持続可能な形でチームをさらに発展させていくことは困難と判断しました』とありますが。

「NEC側のご説明では、『事業ポートフォリオ(企業が運営している事業を可視化、一覧化したもの)の見直しを進めるなか、継続の意味合いを十分に見出せなかった』と聞いています。それが譲渡を検討する理由になったと認識しております」

 リーグワンは様々な進化を遂げています。そのなかでチームを取り巻く環境は変化しています。その点もご考慮いただいたなかで(今回の決断に至った)」

——リーグワンがスタートしてから(宗像サニックスブルースに続く)通算2チーム目の譲渡もしくは退会。近年新設されたスポーツリーグにあっては異例だが、受け止めと改善策は。

「(現状には)大変残念で重く受け止めています。改善策については、ラグビーの価値、収益性を高めることがポイント。そのための活動を継続し、さらに強めることが必要です。ラグビーでは他スポーツと比べ、チーム運営に非常に大きなコストがかかる。今回の決定の理由は必ずしも収益面だけではないと思いますが、コスト面の負担の大きさも背景にあると考えています」

2025年1月11日の日野レッドドルフィンズ戦、柏の葉公園総合競技場には1万646人のファンが足を運んだ。(撮影/松本かおり)


——決して業績不振とは言い切れないNECがチーム譲渡を検討した現状について。

「ご指摘の通り、会社の業績と今回のご判断が結びついているわけではない。事業ポートフォリオを見た時に(ラグビー部が)維持発展させていくものではないという判断が、会社側でおありになったと理解しています。これはNECさん側のご判断。私が(詳細を)憶測で申し上げるべきではない」

——東海林専務理事はかねてチームの法人化には否定的だったが、法人化していないチームのひとつがこのような結果となった。

「現在のリーグワンは『法人化するチームはそうしていただき、そうでないチームは企業に属する形に。それを各チームで判断していただく』としています。今回のケースが、チームの保有形式と直接的に結びついているとは考えていません。しかし、(今後)どういう形がよいのかについて、常に考えを進化させる必要がある」

——NEC側は社員の士気高揚や福利厚生のためにラグビー部を持っていた半面、リーグは収益性を目指している。またリーグワンのチームのなかでも、ラグビー部を持つ大義について意見が割れている。これからは、チームの目指す方向性に応じてグループをわける必要性はないか。

「収益を目指す、母体企業の価値向上に資するといった点は、リーグ全体で共通で(認識)。そのうちのどこに重きを置くかについて(チームごとに)差異が生じているところがあろうかと存じます。ルールによる対応、議論の仕方による対応、組織面での対応と、具体的な方法については詰めていく必要がありますが、一定の対応は必要だと思います」

——もしグリーンロケッツが退会した場合は、2季後の昇降格にも影響が及ぶ見込みもある。

「いままでも特殊な要因があった場合はその時点での昇降格のルールを検討していました。それに倣って(措置を取る)」

チームの我孫子グラウンドは、様々なイベントが催され、ラグビースクールの活動拠点にもなってきた。写真右上は、我孫子事業場内にあるチームの試合結果、予定を社員に伝えるボード。(撮影/松本かおり)


——現在新規参入を申し込んでいる2つのチームが、グリーンロケッツの譲渡先となることはあるか。

「現時点ではない。今後そうしたお話がある可能性は否定できませんが、我々は2チームが独立した形で申請しているものとしています」

——確認だが、「退会」は廃部を意味するのか。

「NECさん側のご判断(次第)ですが、『リーグワンは退会するが、クラブチームとして存続する』というオプションは理論上、存在します」

 グリーンロケッツは、2021年夏まであったリーグワン再編時の審査でディビジョン1に振り分けられた。旧トップリーグ時代晩年に低迷も、事業性、地域性が高く評価された。その後は大量補強で話題を集めながら、リーグ2シーズン目の2022-23年度を最後に2部へ降格した。

 ディビジョン1スタート呼び水となったリーグワン発足時の主要幹部は、すでに退陣。昨季終了後は選手の大量退団がアナウンスされていた。


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