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【オールブラックス】主将離脱でサヴェアがチームを率いる。対フランス第2戦、メンバー決まる。
フランスとの第1テストマッチで2トライを挙げたFBウィル・ジョーダン。(Getty Images)

【オールブラックス】主将離脱でサヴェアがチームを率いる。対フランス第2戦、メンバー決まる。

松尾智規

「彼ら(フランス代表)がどのようなチームを連れてきたかについての見方は少し変わったと思う」
 フランスとのテストシリーズの第2戦を前に、オールブラックスの指揮官スコット・ロバートソンがそう語った。
 2025年のオールブラックスのテストマッチ初戦(7月5日)は、主力を欠いたフランスのBチーム相手に31-27のスコアで冷や汗の勝利だった。
 試合直後ピッチ上でWTB/FBウィル・ジョーダンは、「アタック面では31得点で悪くないが、守備の面では27失点は私たちには多すぎる」とスコアボードを見ながら語った。
「いくつかのミスが私たちを苦しめた」
「彼らは(フランス)は、ブレイクダウンで私たちを少し困惑させた」
 この日2つのトライを挙げたジョーダンは、Sky Sportのインタビューで冷静に試合を分析した。
「本当に典型的なフランスとのテストマッチだったよ」と口にするほど、フランスの若手選手たちがオールブラックスのベストメンバーと互角に戦った。

 試合は終盤まで手に汗握る展開。SOボーデン・バレットが73分にペナルティゴール(PG)を決めるまで、スコアは28-27とわずか1点差。最終的に31-27と4点リードで勝利したものの、残り時間5分を切ってフランスがオールブラックス陣に攻め込み、トライを取れば試合がひっくり返るという場面もあった。途中出場のCTBクイン・トゥパエアのビッグタックルで相手のミスを誘い、辛くも勝利を収めることができた。 背番号10を任されたバレットは、司令塔としてのゲームメイクが光った。ゴールキックはすべて成功(1PG 、4コンバージョン)。チームを勝利に導いた。

 今回の試合は、元オールブラックスのレジェンドたちに批判され、フランス側に火がついたという側面もある。しかしそれ以上に、若手中心のフランスの選手たちのパフォーマンスが予想を上回るほど良かった。そう評価する声が多く聞かれた。

 ジョーダンのインタビューにもあったように、31点(4トライ、4ゴール、1PG)を挙げた攻撃は決して悪くなかった。試合前に掲げていたスローガン通り、スピードを上げて戦う意図が十分見られ、早いテンポからの良い攻撃は印象的だった。
 しかし守備面では、簡単にラインブレークされる場面が何度かあり、失トライに繋がった。

 スーパーラグビー・パシフィックが終わって日が浅く、チームとして本格的に揃てから10日ほど。そう考えると、コンビネーション面でスムーズにいかなかったことが想像できる。
 ニュージーランド(以下、NZ)国内では、「オールブラックスの初戦は、伝統的にいつもこんなものだ」という声が多く聞かれたが、負けていたら、こんな余裕の言葉は出ていなかったに違いない。
 冷や汗の勝利ながらも新人選手たちの活躍は光った。中でも、オランダ人として初のオールブラックスとなったLOファビアン・ホランドには、特にスポットライトが当たった。ラインアウト、タックル、そして高いワークレイトを披露し、メディア、ファン共に絶賛。堂々たるデビューだった。
 ロバートソンHCも、その活躍に思わず笑みが出たほどだ。

 試合後にスタンドで応援した両親のもとに駆け寄り、熱いハグでデビューを家族と喜んだFLデュプレッシー・キリフィもいつもと変わらずハッスル、そして雄たけびも何度かあげた。
 先発のNO8クリスチャン・リオウイリー、後半から登場したPRオリー・ノリスの両者も良いデビューを飾った。新人たちの活躍もあり、フランスのBチーム相手に苦戦をした開幕戦ではあったものの、メディア、ファンともに大きく騒ぐ事はなかった。

Sky sport NZの公式『 X』 から。※ここから最終的に14番がエモニ・ナラワに変更

◆主将離脱。フランスとの第2戦は3人の変更。タヴァタヴァナワイがベンチ入り


 7月12日(土)、ウェリントンでフランスとのテストシリーズ第2戦(現地時間19:05キックオフ)がおこなわれる。これに先立ち、7月10日にオールブラックスの試合登録メンバーが発表された。

 今週はじめ、第1戦でふくらはぎを負傷した主将のスコット・バレットが残りのフランスとのテストシリーズを欠場すると発表され、メディアの注目を集めた。バレットに代わって経験豊富なパトリック・トゥイプロトゥが背番号4を付けて先発に入る。バレットの離脱に伴いキャプテンはアーディー・サヴェアが務めることになった。

 もう一人の変更は、第1戦の開始1分以内で脳震盪、そして退場したWTBセブ・リースに代わり、ケイレブ・クラークがメンバー入り。11番(左WTB)で先発する。これにより、先週11番を付けていたリーコ・イオアネは14番(右WTB)にシフトチェンジとなった。
 先発メンバーの変更はこの2名のみの予定だったが、7月11日になってクラークが怪我。結果、イオアネが11番に戻り、14番にはエモニ・ナラワが入った。

 本職は、LO(ロック)のトゥポウ・ヴァアイは、第1戦に続き第2戦でもFL(6番)で起用される。また、先週リースの負傷により急遽FBからWTBにシフトしたジョーダンは、第2戦でも引き続きFB(15番)で出場する。これらのセレクションにも注目が集まった。

 中盤のCTBコンビは、12番のジョーディー・バレットと13番のビリー・プロクターが第1戦に続いてコンビを組む。先週、スクラムからのフランスの攻撃により外側を突破されるなど課題を残したプロクターの継続起用について、ロバートソンHCは「彼らを信頼しています。ただ時間が必要です。連携を取るための時間です」と説明した。

 シーズン前に「スコッド全員を使う」と明言していたロバートソンHCによる第2戦のセレクションは、負傷者にともなう変更のみにとどまった。このセレクションに関して同HCは、「コンビネーション」および「継続性」を重視し、第1戦に出場した選手たちに再びチャンスを与えると説明している。

 そして今回、最も注目を集めたのは、新人のCTB/WTBティモジ・タヴァタヴァナワイがCTBクイン・トゥパエアに代わりベンチ入りをした事だ。出場すればデビューとなる。
 ロバートソンHCは「ボールの有無にかかわらずインパクトがあるのが魅力。彼自身を信頼する力を見たい」と興奮気味に語った。
 チームメイトも「(同じチームだと)彼にタックルに行かなくて良いからね」と語るなど、タヴァタヴァナワイの迫力あるボールキャリーを含むフィジカルの強さを絶賛している。

 前週の試合はダニーデンの屋根付きのスタジアムでおこなわれ、オールブラックスが目指す高速ラグビーには最適な環境だった。一方、今回の試合がおこなわれるウエリントンは、屋根がなく風が強いスタジアムだ。それに加えて冬の真ん中とあり天候は不安定。そのため、先週以上にキッキングゲームになる可能性が高い。 
 第1戦のキック処理の精度については、メディアや評論家からも指摘があった。第2戦ではその点を改善し、安定した試合運びができるか注目される。そして第1戦に続き、ボーデン・バレットのゴールキックの精度も再び試される。

 スクラム、ラインアウトのセットピースの出来は第1戦では非常に良かった。それだけに、苦戦したブレイクダウンでのバトルと空中戦が今回の試合の鍵となりそうだ。また2戦目だけに、コンビネーションの精度も上げていきたい。
 第1戦ではTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)によって何度もトライがキャンセルされたこともあり、第2戦ではクリーンなトライを重ねてNZのラグビーファンを安心させたい。いくらフランスの若手の、クオリティーの高い選手たちと言えどもBチームには変わりない。
 ラグビー王国NZの代表であるならば、今度こそ明確な勝利を見せなければいけない。




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