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サクラセブンズが2人に、ユース代表レベルのルーキーたちもいる。そんな相手にチャレンジした立正大のパフォーマンスが、ファイナルを熱くした。
6月7日から始まっていた『Women’s College Sevens 2025 /第12回大学女子7人制ラグビーフットボール大会』の決勝が同8日におこなわれた。
優勝したのは日体大女子。立正大女子に21-19で勝利し、4年連続の優勝となった。
前述のように、高橋夏未や谷山三菜子の女子7人制日本代表や有望なルーキーたちを含むメンバーで戦った日体大女子。しかし立正大女子は先制トライを挙げるなど、立ち上がりから好ファイトを見せた。

【写真右上】立正大、加藤璃子のトライシーン。
【写真左下】日体大の持田音帆莉主将(左)とMVPの谷山三菜子
【写真右下】日体大の1年生トリオ、齋藤紗葉、大内田葉月、杉本姫菜乃(左から)
最後まで勝敗の行方が分からなかった決勝では、立正大の集中力が高かった。前半2分、廣瀬翠が左サイドを走り切る。
3分に谷山、5分に齋藤紗葉と日体大にトライを許して逆転されるも、前半終了間際に山田晴楽が攻ステップで左サイドを走り切る。14-14としてハーフタイムを迎えた。
後半4分には相手の反則を誘ったところから速攻を仕掛けて加藤璃子が走り、5点を挙げる。19-14とリードした。
立正大はその後も結束し、よく守った。積極的に前に出て、ボールを奪い取るシーンも。そのまま勝利を手にするかと思われた。
しかし、6分前後に日体大に攻め込まれ、必死に守る途中、イエローカードの判定を受けて6人となった。
最終的に大内田葉月にトライラインを越えられて同点に追いつかれ、谷山のコンバージョンキックも成功する。
惜しくも敗れたが、果敢な攻守には大きな声援も飛んだ。

苦しみながらも勝ち切った日体大。今大会で主将を務めた持田音帆莉(ねおり)は、先行された試合展開について「太陽生命(ウィメンズセブンズシリーズ/6月21日〜)を見据えて0点で抑えて勝ちたかったです。しかし(先制されて)チーム(の士気)を下げないように声を出し続け、顔を上げるようにして、切り替えようと周囲に言いました」と話した。
この2日間、日体大らしさを追い求めた。自分たちらしいディフェンスをすること、自分たちらしく組織として戦うことに注力。また、高校時代から活躍する1年生たちを巻き込んだチーム作りをしてきた結果、「それぞれの強みを生かし切れるようになった」と手応えをつかんだようだ。
決勝でトライを挙げた齋藤、大内田、そして杉本姫菜乃らスーパールーキーたちの存在が頼もしかった。
大会MVPに選ばれた谷山三菜子は、「一つひとつの大会、4年生と一緒に戦うのは最後になります。4年生のためにも勝ちたい、という気持ちでプレーしています」と話した。
そして、「サクラセブンズで学んだことを生かしながら各試合を戦いました」と、代表選手としての矜持も示した。

【写真右上】2位の立正大ラグビー部女子
【写真右下】3位の追手門学院大女子ラグビー部VENUS
◆先輩たちの向上心、やる気はすごい。
好ゲームとなったファイナル以外にも、熱の入ったプレーが見られた。
昨年初出場で最下位(12位)だった早大ラグビー部女子部は、今大会では4位となった。
準決勝で立正大女子に5-45、3位決定戦で追手門学院大女子に5-26と敗れた大会を終えるも、プール戦で2勝を挙げた。
この1年で全員がレベルアップした同チーム。前に出るタックルや、地面に転がったボールへ飛び込むシーンも何度も見られ、意識と技術の高まりが感じられた。
そこに能力の高い1年生も加わり、外でオーバーラップを作ることに成功していた。
特にルーキーが活躍したのが、アザレア・セブン/春日井シティバルキリーズ/湘南ベルマーレBell7/富山サンダーバーズRFCとの試合。高橋あいり&みひろのツインズで全4トライを挙げた。
積極的に動いて特に目立っていたのが妹・みひろだった。「大学日本一になれる大会でした。絶対優勝するぞ、という気持ちでプレーしました」と話した。

関東学院六浦時代は全国U18女子セブンズ大会を連覇し、3年生だった昨年の大会ではMVPに輝いた逸材。今大会でも攻守で前に出てプレーし、強気なところを見せていた。
高校3年生の時に早大ラグビー部に女子部が創設された時から、早大進学が第一志望になった。姉・あいりと2人でAO入試を利用して受験し、入学の夢を叶える(スポーツ科学部・スポーツ科学科)。
「先輩たちは向上心や、やる気が凄い。刺激をもらっています」
「高校時代は全国優勝のタイトルを守るとか、そういう目標で頑張っていましたが、いまは、チームを作り上げていくのが無茶苦茶たのしい。成長していくしかないチームで、自分もできないことをできるようになって、一緒に成長していきたいです」
兄・幸輝さん(法大ラグビー部3年)が入った横須賀市ラグビースクールに3歳の時、姉と一緒に加わった。中3まで同スクールに所属して実力を蓄え、関東学院六浦を経て、いま赤黒ジャージーを着る。
「文武両道でいきたい」という妹は、サンゴリアスの松島幸太朗に憧れる。「私も、ああいう加速ができる選手になりたい」と話した。
◆助産師になる夢に向かって。
高橋姉妹が4トライを挙げた試合の相手チームでプレーしていた酒野日和(さかの・ひより)は、普段はアザレア・セブン(静岡)でプレーしている大学3年生。浜松医科大学に学んでいる。将来は助産師を目指している。
高校、大学とラグビー部だった父の影響を受けて、のみこまラグビースクール(石川県の能美市・小松市を拠点に活動)に入ったのが小3の時。金沢二水高校ラグビー部では男子部員とともに活動し、試合には石川撫子(クラブ)で出場していた。
助産師になりたいのは、昔から赤ちゃんが好きで、以前放送されていた産婦人科医療を取り上げたドラマ『コウノドリ』を見て感動。自分もその道で生きていきたいと思い、進路を決めた。
医学部看護学科に学んでいる。4年間で看護師資格を取得し、大学卒業後は大学院で助産師資格を2年学ばないといけない。

SHでプレーする酒野は、この大会での最終戦となった横河武蔵野アルテミ・スターズ戦のラストプレーで、自陣から長い距離を走り切り、トライも決めた。
「合同チームとは思えないまとまりがありました。私のトライも、仲間が仕掛け、パスを出してくれたものでした」
いろんな特性を持った人が輝けるラグビーが好きだ。
しかし、この夏で一旦、プレーを中断することになりそうだ。「3年生から実習が始まり、忙しくなるので、勉強に集中しようと思っています。夏までにあと2大会あるので頑張ります。いまの仲間と一緒にやれる時間が少なくなっていくので、一つひとつのプレーを大事にしたい」と話した。
「大学院が決まったら、また再開するかもしれません」
◆フェイスマスクで全力プレー。
酒野が今大会でプレーした合同チームと同じ7位に入った久留米大・九産大合同チームには、フェイスマスクを着用してプレーする選手がいた。
ナナイロプリズム福岡所属で、久留米大3年生の平田恋菜(ここな)は大会初日、プール戦の日本経済大戦で鼻を打撲。負傷したまま、それ以降はマスク着用でピッチに立った。
「怪我をした時、そして今日も鼻血が出ました。折れているかどうかは、まだ分かりません」と試合後に話した平田は、患部をかばうことなく、いつも通りにプレーしていた。
今大会での最終戦となった5位決定戦の日本経済大との2日連続の対戦ではトライを挙げ、ジャッカルにも成功。体を張ったプレーを続けた。
しかし、前日は25-14と勝った同じ福岡のライバルにこの日は14-19と敗れ、「勝ちたかったです」と、目に涙を浮かべた。

鹿児島県出身。小6のときにラグビースクール、鹿児島オールブラックスに入り、鹿児島女子ラグビーチームで試合経験を積んだ。
鹿児島玉龍高校でもラグビー部に入り、男子と活動。卒業後、憧れていたナナイロプリズム福岡へ「挑戦したい」と入団を志し、福岡・久留米へ向かった。現在は、久留米大の人間健康学部スポーツ医科学科(3年)に学ぶ。
ステップワーク、1対1のシチュエーションで抜くプレーを得意とする。
日本代表経験者が多くいるクラブでプレーし、たくさんの学びを得ている。
同い年の大橋聖香はサクラセブンズの経験もあるから、言葉も重い。
「いつも自信を持って、と言ってくれます。自分のプレー、強みを出して頑張れ、と」
将来もラグビーに関わっていきたい。
「教職もとっているし、アスレチックトレーナーの勉強もしています。長くラグビーに関わっていきたいので」
レフリーもいいな、と頭に浮かべている。
ラグビーを愛する大学生女子選手たちが熊谷を駆けた2日間。もっと多くの選手たちに会って、話せば、いくらでもハートウォーミングなストーリーと出会える気がした。

【最終順位】
1位/日本体育大学ラグビー部女子
2位/立正大学ラグビー部女子
3位/追手門学院大学女子ラグビー部VENUS
4位/早稲田大学ラグビー蹴球部女子部
5位タイ/横河武蔵野アルテミ・スターズ
5位タイ/日本経済大学女子ラグビー部AMATERUS
7位タイ/アザレア・セブン、春日井シティバルキリーズ、湘南ベルマーレBell7、富山サンダーバーズRFC、 名古屋レディースR.F.C、YOKOHAMA TKMの合同
7位タイ/久留米大・九産大合同
9位/RKUグレース
10位/四国大学女子ラグビー部
11位/NJI(北海道大学合同、八戸学院大学、国際武道大学の合同)